一言法話

2020-12-11 00:00:00

4.人間万事塞翁が馬

 

「人間万事塞翁が馬」という中国の故事成語をご存じでしょうか。この言葉、平成24年にIPS細胞の研究、開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授の座右の銘でもあるそうです。

 

昔、中国北方の塞(とりで)近くに住む老人(塞翁)の馬が胡の国へ逃げてしまいました。人々は気の毒がりましたが、老人はそのうちに福が来ないとも限らん」と言いました。やがて、その馬は胡の国から駿馬を連れて帰ってきました。人々が祝うと、今度はこれが不幸の元にならんとも限らん」と言いました。ある日、この駿馬に乗った老人の息子は、落馬して足の骨を折ってしまいました。人々が見舞い慰めると、老人はこれが幸福の基にならんとも限らん」と言いました。その後、胡軍が攻め込んできて戦争となり、若者たちのほとんどが戦死しました。しかし足を折った老人の息子は兵役を免れたため命を落とすことはありませんでした。


この話にあるように世の中、一見、禍(わざわい)と見える事柄が幸いの基であったり、幸いだと思えることが簡単に不幸に転じてしまったりするものです。まさしく仏教でいうところの諸行無常(物事は常に移り変わる)です。コロナ禍真っ最中の今だからこそ、この故事の意味するところを噛みしめ、世間一般で言う禍や災難というものをやみくもに恐れることなく、また逆に幸いというものの上に胡坐をかくことのないよう気を引き締めて生活していかなくては、と思うのです。