一言法話
124.自利利他
このところ日本各地でクマの出没情報が報告されています。当日光院もすぐ裏に山がありますので、連日のテレビでのそんな報道も決して他人ごとだとは思えません。気候変動がその原因だともいわれていますが、このような状況はこの後も毎年続いていくのでしょうか。
先日、寺茶房で北海道紙芝居研究会「かぜるん」代表の井林芳枝さんに紙芝居3話の実演をいただきました。その中の1つはクマが出てくるお話でした。といいましてもここに登場するクマはこころやさしいクマ、タイトルは「はしのうえのおおかみ」というお話です。
ある日、一本橋の丸太を渡っていたオオカミは橋の真ん中でウサギと出会いました。オオカミは「先にわしが渡る。さあ戻れ戻れ」とウサギを怒鳴りつけました。ウサギは悲しい顔で橋を戻って行きました。オオカミは自分の言う通りになった満足感ですっかり気持ちよくなりました。味を占めたオオカミは橋を渡ってくるタヌキやサルを見つけては意地悪く、橋の途中で追い返します。しかし、次に橋を渡ったオオカミの前からは大きなクマがやってきました。驚いたオオカミは後ずさりしようとするのですが、力持ちのクマはオオカミを抱き上げ、振り向いて後ろにそっと降ろしてあげました。「こうすれば君も僕もわざわざ戻ることはないってわけさ」こう言いながらクマは橋を渡って行きました。クマのやさしさにすっかり感心したオオカミは次の日、橋を渡ってきたウサギを抱き上げ、後ろにそっと降ろしてあげました。笑顔になったウサギに「オオカミさんありがとう」と言われ、オオカミは前よりもずっといい気持ちになりました。
「はしのうえのおおかみ」は現在の小学1年生の道徳の教科書にも掲載されているようで、子供にもわかりやすいお話ですが、仏教の自利利他(じりりた)の精神を平易に表しています。自利利他とは自分を幸せにすることと他人を幸せにすることを同時に行っていく生き方をいいます。自分だけを大事に思い、自分の利益だけを求めることを仏教では自利利他の反対、我利我利(がりがり)といいますが、そんな生き方では本当の幸せは決して訪れません。自分勝手な欲にまみれた我利我利亡者(がりがりもうじゃ)の生き方ではなく、他人の喜びを我が喜びとすることができる生き方を目指していきましょう。