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2026 / 07 / 23  18:00

明日香村観光の未来を創る:一般社団法人 飛鳥観光協会 局長 吉本 幸史 氏 インタビュー(後編)

明日香村観光の未来を創る:一般社団法人 飛鳥観光協会 局長 吉本 幸史 氏 インタビュー(後編)

今回は一般社団法人 飛鳥観光協会 局長 吉本 幸史 氏に飛鳥観光協会についてのインタビューをさせていただきました。

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吉本 幸史(よしもと こうじ)氏

一般社団法人飛鳥観光協会事務局長。1979年明日香村生まれ。東京での出版社勤務を経て、2006年に奈良県へ戻り天理市役所入庁。「天理駅前広場コフフン」の立ち上げなどに携わる。2021年から故郷で働いている。

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記者:
イベントについては、単独や共同でどのようなものをされていますか?

吉本局長:
弊社は基本的に「イベント」はしないんですよ。かつては「光の回廊」という夜の集客イベントをしていましたが、今は「地域の経済を年間通じて回すこと」を主軸に置いています。それが観光地域づくりの牽引役としての役割だと思うからです。商品やサービスを販売する最前線は事業者の皆様ですので、私たちはその後方支援に徹しています。 夏や冬は閑散期ですので、そこを平準化させるために力を入れています。夏は「あすかのサマバケ」として、事業者の体験プログラムの情報を集約し、プロモーションをするという広報の役割を担っています。1日で3000人を集める手法ではなく、一定期間、事業者の皆様が販売する小さな商品を積み上げて宣伝しています。冬はイチゴですね。「ストロベリーフェア」やイチゴ狩り、近鉄さんや奈良交通さんと連携した宣伝、都市部でのカフェ展開など、全体の情報を集約してプロモーションをしています。昔の観光協会は「イベント屋」でしたが、そこではないところで戦っています。

記者:
駅に降りられた外国人観光客への対応はどうされていますか?

吉本局長:
英語で対応しています。流暢なスタッフばかりではありませんが、バスの乗り場や荷物預けなど、玄関口としての役割を果たすために英語で頑張っています。「習うより慣れろ」で、みんな努力してくれています。もちろん、より詳しい対応が必要な時は英語ができるスタッフが代わります。 昔、僕が学生の頃に東南アジアの田舎へ行った時、現地で観光の商売をしている人は片言の英語をみんな喋れたんですよ。飯を食っていくのに喋らなしゃあない、という状況ですよね。そういうことが日本でも起きてきているのだと思います。たくましいです。

記者:
別の軸のお話ですが、「飛鳥ミライズ」とはどのような取り組みですか?

吉本局長:
明日香村でビジネスをする方、したい方、関心の高い住民が自由に集まり、議論して自分たちのビジネスに還元していく「繋がりを作る場」です。去年から始めました。 なぜ作ったかというと、明日香村の持続可能性を考えた時に、世界遺産で観光客が増えるのは良い側面ですが、お客様が求めている資源は「歴史遺産」と「里山の景観」の半分半分なんです。歴史遺産は国が守ってくれますが、里山の景観は10年後には赤信号だと思っています。農家が50年前の800人から10年後には100人ほどにまで減ると予測をしており、すでに棚田や畑は荒れ始めています。空き家も増えています。 こうした地域の課題は、観光事業者にとって無縁ではありません。飲食店も宿泊施設も、その風景の中にあるからこそ価値がある。忙しいビジネスの中で1人では考えられない課題を共有し、ボランティアではなく、自分たちのビジネスを微修正することでアプローチしたい。例えば、仕入れを地域産の農作物に変えたり、自分で畑を始めたりして、ビジネスの価値を上げながら課題を解決する。そんな学び合いの場にしたくて、カジュアルな雰囲気で毎月開催しています。 去年は7月から12月まで毎月行い、3月には一般向けのカンファレンスをしました。今年も今月から12月まで毎月開催します。今月は29日の夜7時から9時までです。よろしければぜひ取材にお越しください。

記者:
日々の仕事の中で、良かったなと思える心温まるエピソードはありますか?

吉本局長:
僕はスタッフや事業者の皆さんが楽しく仕事をしてくれたらそれが一番なのですが、強いて挙げるなら、去年、アメリカのご夫婦がビジネスとして正当なお金を払って明日香を訪れ、喜んで帰ってくださったことです。 それまでは補助金を使ったファムトリップ(視察)などが多く、こちらがお金を出して来てもらうことが中心でした。それが、信頼関係をゆっくり築いてきた旅行会社がお客様を送ってくれ、宿も、体験プログラムの人も、飲食店も、そして私たち観光協会も手数料という形できちんとお金をいただき、三方良しで経済的な価値を生み出せた。「お金を稼ぐ」ということを、地域の皆さんと一緒に実現できた。5年やってきて、長年の取り組みが結実した最初の瞬間として非常に印象的でした。

記者:
最後に、皆様へのメッセージや、目指すビジョンについて教えてください。

吉本局長:
2026年から2030年までの「明日香村来訪地醸成計画」を作りました。飛鳥ミライズで出た皆さんの言葉を紡ぎ、明日香村観光推進協議会で議論して作った60ページほどの計画です。そのビジョンが「千四百年の来訪地をともに守りはぐくむ」です。 1400年前の飛鳥時代からの歴史を背負っていますが、それは自分たちだけで作ったのではなく、訪れてくれた方々と一緒に作ってきたものです。人口が減る中で、明日香村を守るためには来訪者の力も欠かせません。 今ここで働き暮らしている人がビジネスを磨くことが、明日香が続いていくことに良い影響を与えるはずです。住民の方も、ちょっとした行動の変化が玄孫の世代に好きな風景を残すことにつながります。みんなで明日香を作っていきたい。 具体的なアクションプランは膨大にあります。地産地消、歴史や文化を感じる建物の活用など。迷ったらその計画を見てほしいし、ミライズに参加して繋がってほしい。 今は節目の時です。今年は世界遺産登録もあり、2030年は明日香法50周年。この法律を受け入れたことの本当の価値が50年経って一層現れてきています。一方で、里山や集落はレッドカードに近いイエローカードです。自分の行動をどう変えれば良い影響を与えられるか、皆で考えたいですね。 観光客の皆様には、この機会に一度明日香に目を向けて足を運んでいただき、見るだけで帰らず、「食べて、泊まって、体験して」五感で感じてほしいです。

記者:
明日香に来る方は、風景が好きな方と歴史ロマンを求める方、どちらが多いと感じますか?

吉本局長:
アンケートでは歴史遺産と景観遺産でちょうど1対1、50%ずつです。つまり、同じ人の中に両方ある、セットで見ているということです。これは非常に大事な強みです。 もし明日香法がなければ、石舞台の周りも住宅開発されていたかもしれません。普通の田舎町の中にポツンと遺跡がある環境だったら、旅行者は満足しないでしょう。古都保存法や明日香法を守り、それを受け入れた地域は本当にすごい。先人たちに感謝しながら、この風土を冷凍保存するのではなく、明日香村の風土を創造していく。それを楽しんでやっていくことが大事だと思っています。

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(飛鳥総合案内所「飛鳥びとの館」前にて撮影)

 

記者:
素敵なお話をありがとうございました。