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2026 / 07 / 22  18:00

明日香村観光の未来を創る:一般社団法人 飛鳥観光協会 局長 吉本 幸史 氏 インタビュー(前編)

明日香村観光の未来を創る:一般社団法人 飛鳥観光協会 局長 吉本 幸史 氏 インタビュー

今回は一般社団法人 飛鳥観光協会 局長 吉本 幸史 氏に飛鳥観光協会についてのインタビューをさせていただきました。

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吉本 幸史(よしもと こうじ)氏

一般社団法人飛鳥観光協会事務局長。1979年明日香村生まれ。東京での出版社勤務を経て、2006年に奈良県へ戻り天理市役所入庁。「天理駅前広場コフフン」の立ち上げなどに携わる。2021年から故郷で働いている。

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記者:
まずは吉本局長の簡単なご経歴と、こちらを任されることになった経緯などのプロフィールを教えていただけますか?

吉本局長:
私は明日香村の出身で、高校生まで明日香で暮らしていました。明日香小学校出身で、中学・高校は奈良県内の学校に行きましたが、すごく思い出深い場所です。大学入学で東京へ出まして、社会人の最初の3年間は出版社で編集の仕事をしていました。それを3年で終えて、奈良に帰ろうということで20代後半に帰郷し、市役所に務めました。そこで15年間、行政・自治体の仕事を長くさせていただきました。国民健康保険や高齢者福祉など色々な仕事がありましたが、その中で一番楽しかったのが街づくりのお仕事でした。合わせて10年ほど担当しましたが、それがすごく自分には合っていました。そして42歳ぐらいの時に、明日香村の観光協会の方に転職をしまして、今に至ります。ちょうど5年目が終わったぐらいですね。

記者:
ありがとうございます。明日香村のご出身で色々な経験をされていますが、その経験をどのように明日香村の観光に活かされていますか?

吉本局長:
村で生まれ育った経験も含めて、全部役立っていると思っています。職業的なことで言うと、最初の出版社での雑誌編集者の経験ですね。アートやデザイン、ライフスタイル雑誌などをやっていて、全国の工芸や伝統工芸の担当もしていました。東北の漆器産地や岐阜の陶芸産地へ行って地域の魅力を1ページにまとめるという仕事をしていました。情報を集めて、どう皆様にお伝えするかという編集の経験は、今の観光の仕事にもむちゃむちゃ影響しているし、土台になったと思います。 また、市役所での15年間の経験は「後方支援」だと思っています。地域の皆様が幸せに暮らし、活躍できるようにどんなサポートができるかという仕事でした。観光協会も同じで、行政と民間のちょうど中間団体、半官半民のような組織ですが、地域の事業者さんが観光事業で輝くために後方からどんな支援ができるかという点で、スタンスが非常に似ています。一緒に議論しながら地域を作り上げていくというところは、市役所の仕事で学ばせてもらいました。

記者:
続いて、まずは紹介になると思いますが、飛鳥観光協会がどういったことをしているのか、その活動や、明日香村においてどういった役割や使命を持つ組織なのかを教えてください。

吉本局長:
よく言うのは「観光地域づくりの牽引役」です。地域の観光協会には約120社の会員事業者さんがいて、飲食、宿泊、交通、お土産、食品加工など、観光に関わる広い分野の事業者さんに支えられています。個々の事業者ではできない宣伝、来訪者の調査、あるいは公共的な施設やお土産物売り場の運営管理などを、皆様からの負担金やビジネスとしての利益を財源として、現在24名で運営しています。基本的には明日香村という観光地を地域全体で盛り上げていく役割ですね。 ここは観光案内所であり、地域の事業者さんが作ったお土産物の販売もしています。駅を降りてきた人への案内ももちろんします。他には石舞台古墳やその駐車場、亀形石造物といった公共的な施設の運営も担っています。ホームページでの発信や、どういうお客様が何に魅力を感じて来られ、どう満足しているのかといった調査も行います。それに基づいて、次の5年の観光をどうしていくかという計画を立てたり、旅行商品の販売もしたりと、業務は多岐にわたります。

(飛鳥総合案内所「飛鳥びとの館」館内)

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記者:
最近の観光トレンドやインバウンド、ガイドについてお伺いします。最近の観光客の傾向(年代、目的など)や、インバウンドの増加、旅行者が求めるものの変化について感じることはありますか?

吉本局長:
明日香村はここ最近、年間約80万人で推移しています。コロナで下がりましたが、去年やっとそのラインに戻ってきました。傾向としては、7割が関西圏(大阪、奈良中心)の日帰りのお客様です。2割が首都圏、残り1割が各地方からという構成は、ずっと続いています。 直近の動きで言うと、インバウンドに関しては、コロナ前は東アジアが半数を超えていましたが、コロナ後は欧米豪(ヨーロッパ、北米、オーストラリア)が過半数を占めるようになり、比率が逆転しました。これは注目すべきトレンドです。ただ、全体の80万人のうちインバウンドは2%ほどで、人数としてはまだわずかです。 しかし消費傾向で見ると、近畿圏のお客様は基本日帰りですが、首都圏や2%の外国人のお客様は、人数は少なくても消費額が圧倒的に多く、宿泊やお土産の購入も多いです。自分たちに置き換えても、大阪へ行く時はお土産をあまり買いませんが、ヨーロッパへ行くとなれば予算規模が違いますよね。それと同じです。 今は世界遺産の影響も出始めています。日本のお客様がすごく来られると思われます。世界的な認知(「飛鳥・藤原の宮都」)は、報道が出ているのも今は国内が中心なので、海外の方が今年の世界遺産登録の情報を知るようになるには、もう少し時間がかかるでしょう。まずは国内からだと思います。

記者:
世界遺産登録後のインバウンド増加に向けた、現在取り組んでいるプランなどはありますか?

吉本局長:
インバウンドの取り組みは今に始まったことではなく、長い時間をかけて村全体で取り組んでいます。各観光施設での多言語表記はずっと前からしていますし、通訳ガイドの育成もコロナ前から飛鳥・藤原地域で取り組んでいます。キャッシュレス決済やWi-Fiの設置など、いわゆる「受け入れ環境整備」は、外国人の方が来られた際も快適に安全に過ごしていただくために進んでいます。まだ本格的には増えていないので見えていない課題もあるかもしれませんが、増えてきた時にまた見えてくるものがあると思います。

記者:
協会として、観光客と村をつなぐ通訳ガイドの活躍や育成、また国内向けのボランティアガイドについても教えていただけますか?

吉本局長:
ガイドは明日香村にとって非常に重要です。京都や奈良、大阪に比べて地下の埋蔵文化財が多いので、パッと見では魅力が伝わりにくい。そのため、解説(インタープリテーション)の役割としてのガイドは大事です。 現在、ガイドの種類は大きく3つあります。「通訳ガイド」「日本語ボランティアガイド」「日本語プロガイド」です。通訳ガイドに関しては、広域で育成が行われ、現在は「飛鳥観光通訳ガイド協会」という独立した団体があり、育成や手配をされています。ご依頼があればそちらにお繋ぎしています。ただ、彼らが明日香村内だけで食べていけるかというとまだ難しく、基本的には京都、奈良、大阪などでガイドをして生計を立てています。早く村内だけで食べていけるようにしてほしいといつも怒られます。 フェーズとしては、まだ外国人のお客様を誘致しなければならない段階です。私たちの協会でも、毎年少しずつ欧米豪の富裕層のお客様に対してアプローチを続けています。最近では「京都の次に明日香に2泊したい」といったご依頼も出てきています。その際は通訳ガイドに終日ついてもらい、歴史案内だけでなく、宿泊や地域での体験(伝統工芸、野菜の収穫、料理作りなど)、地域の暮らしにグッと入ったような滞在をしていただいています。

記者:
国内のガイドさんも同じようなことをされているのですか?

吉本局長:
 国内向けには「ボランティアガイド」と「プロガイド」の2つがあります。ボランティアガイドは長年、地域の住民の皆さんが中心となって、地域貢献の一環でおもてなしの心でガイドをしてくださっており、現在は約60人が所属しています。主に土日祝日の石舞台や亀形石造物などでの定点解説、あるいは修学旅行や団体客のガイドを担当し、定期的な研修も行っています。ガイドを飛鳥・藤原地域発のしっかりとした職業とすべく明日香村、高取町、橿原市、桜井市と各市町村の観光協会が一緒になってこの4年ほど取り組んできました。厳しい関門を乗り越えた方々が現在、プロガイドとして活動しています。彼らは歴史知識はもちろん、ツアーの行程をアレンジする旅程管理能力、安全確保、そしてお客様の興味関心に合わせて内容を変える高い適応力とホスピタリティを持っています。今年から本格的に稼働し、個人のお客様やハイブランドな旅行を扱う旅行会社から引き合いが徐々に出てきています。地域貢献を目的としたボランティアと観光経済の最前線で稼ぐ職人と性格は異なりますが、様々なお客様のニーズの中で、両輪で頑張っていただいています。

(後編に続く)