市政活動報告・代表質問 他
自民党南区選出の島本京司でございます。
吉井あきら議員、西村義直議員、下村あきら議員に引き続き、代表質疑をさせていただきます。よろしくお願い致します。
①まずはじめに、新景観政策の今後の方向性と、市民の住みやすさについてお伺いします。
京都市の歴史的なまち並み保全と再生を目指したこの政策の実施から10年が経過し、市は昨年9月より 様々なシンポジウムや記念事業などを通して、政策の検証事業を実施してきました。その成果や今後の課題をまとめた詳しいリポートは来月発行される予定となっていますが、この10年間、多くの意見や賛否両論の中、実態的には施策効果によって町並み景観が改善され、京都のブランド力や製品・企業イメージの向上等にも寄与してきたものと考えられます。その一方で、立案当初には想定されていなかった事態が生じているのも現状です。具体的には、まず何よりも 市の観光集客力や民間資本の投資価値も高まり、ホテルをはじめとする施設が急増、この景観規制の影響とも相まって中心部のマンションや住居等の不動産価格も高騰し、市民にとっては家賃や固定資産税負担の増加、町家・景観保全努力等の必要性の他、観光地格差の拡大による交通や諸地域の混雑、民泊問題では近隣住民とのトラブル等々、私たち市民のまちなかでの住みやすさが失われ、特に若い新世代や子育て世代の市外への流出といった都市定住の空洞化も危惧されるものとなっています。
片や、同じ市内でも郊外部では人口減少と高齢化が進行し、今後のまちの持続性が懸念されるエリアも発生し始めているのも実情です。
このような問題について市としては、中心部・郊外部を問わず、またどのような施策の影響であっても、市民の定住促進を取り戻し、住みやすさを担保することに責任を持たねばなりません。この新景観政策についても、策定当初から都市の魅力や持続可能性といった観点が理念の中に組み込まれているものであり、時代と共に刷新を続ける政策であるべきとも考えます。来年度予算案にも政策枠として、当該施策の更なる進化に向けた調査・検討が計上されていますが、京都市として この10年間の景観政策をどのように総括し、今後いかに進化させてくのか、まずは現時点での具体的な考えをお示し下さい。
②次に人口減少・超高齢化社会対策についてお尋ねします。
近年全国的にも重大な問題となっているこの課題に対しては、本市でも子ども若者はぐくみ局の新設や京都創生、レジリエント戦略をはじめ少子化対策や子育て支援など直接的な人口増加策や関連施策が推進されているところでございます。私は、現実的な視点に立てば、これにより劇的な人口増加を見込むべきではなく、減少を少しでも食い止めようとする取組みとしてしっかりとそれらを展開するとともに、一方では、どんな手を打っても全国的には確実にやってくるであろう超高齢化・人口減少社会に備えて、自律的で持続可能な社会をいかに構築してゆくのかを今から考え、備えてゆかねばならないと様々な場面で発言いたしております。
ここで、問題は将来的に「人口の少ない状態」そのものよりも、戦後我が国が急激な経済成長と人口増加率をたどったゆえにおとずれる必然的なプロセスとしての、今後の「急激な」減少曲線、その「急激さ」ゆえにもたらされる社会的ダメージによって諸処の公的制度、都市基盤の維持・経済循環等が機能不全に陥ることであります。
行政としてはそこで起こりうる現象をシビアに想定し、対処できる社会の仕組みに今からでも少しずつ変革させながら軟着陸、ソフトランディングさせる施策と取組みをしてゆくことが不可欠と考えます。ご存知の通り団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年ももう目前で、全国的に3人に1人が65歳以上の高齢者となり、その高齢者が世帯主であるのも2015年の36%から40年には44.2%に上昇、全世帯における一人暮らし率が約4割に達すると予測されています。人類史上経験したことがない
このような社会構造の中で、医療・介護の需要は急激に増大、社会保障費の膨張、そこに少子化があいまって介護離職・老々介護・晩婚・晩産化による育児と介護のダブルケアが大きくのしかかり、在宅介護を進めようにも担い手はいません。経済を見ても生産年齢人口の減少でさらなる働き手不足、…これは生産性の向上によってある程度カバーできるとしても、消費者は格段に減少、85%が内需である日本経済は確実に縮小します。
今、そのような社会状況に対して備えるべき体制へと、徐々に舵を切って行かないと間に合いません。都市と共にあるべき農村の再編成へと、大都市一律の政策からきめ細かなサテライトとしてのコンパクトシティ構想へと、そして少人口に見合った様々な社会的ダウンサイジングや、人々のシェア経済と暮らし方改革、相互扶助のコミュニティー形成や終活ケア等々。まさに右肩上がり拡大主義からのパラダイムシフトと政策の再構築が必要です。いかがでしょうか、市として今後、超高齢・人口減少社会をどのように捉え、自律的で持続可能な社会の絵姿をどう描いてゆくのか、そこへとソフトランディングさせてゆく施策の在り方や意識改革についての考え方をお聞かせ下さい。
③続きまして、文化庁の移転を契機とした京都経済と産業の振興についてお尋ねします。
昨年、国は文化芸術振興基本法を改正し、全国の文化芸術の価値を従来の捉え方のみならず、観光やまちづくり、国際交流や産業、教育や福祉などと有機的に結び付けた総合的な展開を目指すものとし、地方公共団体には、その地方に応じた文化芸術推進計画の策定を求めることとしました。また、文部科学省設置法改正案では、2021年までの文化庁京都移転を見据えて、経産省の所管であったアニメやゲームの輸出拡大や観光庁所管のインバウンド誘致・観光振興、農水省の和食振興等についても、文化庁をそれら幅広い政策の取りまとめ役・推進体制の中核として位置づけ 調整機能を強めるとともに、文化産業のGDPを2025年までに倍増させる経済成長目標も「文化経済戦略」の中に盛り込まれています。
このような中、京都移転決定後の本市を含む関係各所の論調では、「京都が日本の文化を牽引してゆく」という大きな責任と使命感に溢れるものが強く感じられ、私も、もちろん第一義的にはその通り、国・府・市ともに強く連携してしっかりとその役割を果たしてゆかねばならないものと思います。ただ、その上においては、先の全国的な文化産業振興の機運や移転の好機を逃すことなく、豊富な文化基盤を持つ本市としてもそれらを経済・産業振興に役立て、波及効果を追求、活性化による収入増につなげてゆくのも市民と地域社会にとっては大切な意義であろうと考えます。
ただこれまでの京都における文化とは、一般市民には少々敷居も高く、歴史と伝統に培われた重厚なものに関する継承や保存といった観点が優先されていたかもしれません。
一方で、現代の様々な文化は、そもそもが市民の暮らしの中にあり続け、長い年月の中で培われながら常に変化・進化してきた庶民の思想や精神性と、そこから生まれる生活様式や産物としての広い意味における まさに暮らしの中にある「カルチャー」と言った方がよりイメージしやすいかもしれません。人々が気軽に楽しみ、体験し、創造しながら生き甲斐や新しい価値を見出し、誰もが人間的な暮らしや人生を「文化的生活」として追い求めてきたものです。
私は現在の議員職とならせていただく前の期間、自身で創設・経営しておりましたいわゆる文化・芸術・健康・教養の体験・習学センター運営の中で、まさに今後の長寿高齢化社会においては これこそ人々が求め、かつ大きな経済効果や成長産業とも成り得るものだと強く実感しておりました。大衆文化やサブカル、ポップカルチャー、クラフト・アート、クールジャパン等々…市民の健康寿命や観光経済にも多大に力を発揮するであろうカルチャーは、身近であっても計り知れないパワーを秘めています。
ユネスコ無形文化遺産に登録された和食は我が国の食文化であり、ここから器・しつらえ・おもてなし・和風建築・京町家などから生活様式へ…といった無限の広がりや、文化資源を観光資源として活用する他、技術・意匠(デザイン)等の知的資産を活用した新たな価値の創造、文化的創作物を製造する起業支援や事業者支援といったものの可能性、様々な分野において無限の広がりを見せる身近なカルチャーを産業に結び付け融合させる「文化の産業化」も必要と考えます。
今般の予算案に関しましても、世界文化自由都市宣言40周年の啓発や、文化を基軸とした人づくり・観光・福祉・街づくりの理念・継承・普及・社会的課題…といった観点に比重がおかれている一方で、文化力…と言ってもやはり伝統的なものが多いようですが…それら京都の強みを活かした成長戦略も掲げられています。折角の機会ですから、たとえば産業観光局の中に身近な文化産業の振興・活性化を推進する部門の設置なども一例として、総体的に文化を経済・産業の活性化に結びつける視点も京都市として明確に打ち出し、今後の文化行政に取り組んでゆくべきと考えますがいかがでしょう。
まずはここまでにつきましての、市の見解をお聞かせください。
④さて続きまして、本市発注の公共事業における安全性と公正性についておたずねします。
去る12月8日、東京地検特捜部がJR東海 発注のリニア新幹線工事をめぐって大手建設会社・大林組に偽計業務妨害容疑で捜索を行ったことを皮切りに、現在様々な報道によってもご承知のとおり、我が国を代表するスーパーゼネコンと呼ばれる4大企業の清水・鹿島・大林・大成による談合事件の疑惑捜査が進められ、その不正事実もほぼ認定されはじめている状況です。
旧来よりたびたび起こるこのような談合事件は、私たち市民・国民の税金等をもって行う公共事業や建設工事などが無駄なく適正かつ公正に行われるように採られている入札制度の競争原理をないがしろにするものであり、断じて許されるものではありません。が、そもそも企業間格差がここまで拡大し、大きな公共事業においては常にその名が登場するそれら大企業に多くを頼らざるを得なくなってしまった歴史的経緯や構造的な問題も、本市としても見逃すべきではないと考えます。
またこのような状況の中、近年全国的な大手メーカーや企業、設計会社などによる検査データ偽装や製品不正、安全性や信頼性に関わる重大な問題も次々と明るみに出ています。かつて日本中を激震させた姉歯建築設計等の耐震偽装や、横浜の大型マンションが傾いた三井住友建設・日立ハイテクノロジーズ・旭化成建材の基盤杭、東洋ゴムの建築物免震ゴム、最近では神戸製鋼や東レ・三菱マテリアルなどのデータ改ざんや日立の不適合エレベーター問題等々…。本市においても、過去長年の公共事業や工事等では、やはり先の巨大建設企業4社にも非常に多くの発注・参画がなされており、これにより支払われた総事業費も莫大なものとなっています。が、近年では、それら一社受注体制ではなく、地元京都の地域に根付いた市内企業との合同や協力形態としての、公正かつ信頼性の高い発注率となっているものであるかとも思われます上に、かつての耐震偽装問題の折にも市は的確な対応や、直近では橋梁脱落防止装置の溶接不良問題の際にも迅速最善な対策を取られたという事実もあります。さらにまた本市では、京都市公契約基本条例を制定し、市と受注者の責務、市内中小企業の受注機会の拡大や従事環境、契約の適正履行、水準の確保他を定めて、公正性や競争性、透明性を高め、談合や不正行為等事業者を排除することもはっきりと明記されています。
しかし、このような中にあっても、先のような問題・不正等が次々と明らかになっている昨今の状況においては、より確実に公正性と安全性が担保されることを強く求めるものであります。
そこで、これまでと今後の事業において、本市契約や整備等については本当に大丈夫であるのかどうか、今後発生し得る事案に対し、市としてどのような方法で適切・的確に対処をしてゆくのか。市民の生命と財産、公的な安全性を守り抜いてゆくためには、先の西村議員の議論にもありましたように、かねてから申し上げております本市技術職員の増強や技術力向上の必要性が益々高まるものと考えますが、いかがでしょう。この問題についての市の具体的な取組方針をお答えください。
⑤次に、市内中小物流網を取り巻く社会的状況と、環境や担い手等の問題にかかわる「歩くまち京都」政策についてお尋ねします。現在IoTやビッグデータ、AIなどの技術革新に基づく第4次産業革命の到来において「物流」は、我が国の産業競争力の強化と、豊かな国民生活の実現ならびに地方創生を支える重要な社会インフラであり、これからはその生産性向上によって日本の経済成長を支える強い物流社会を構築する必要があるものと考えます。その中において近年、インターネット販売・配送の急激な増加や、高齢化社会における生活物品の宅配需要、都市部と地方の公共交通輸送格差の拡大、観光振興のための手ぶら推進や混雑緩和…等々の全国的な輸配送に対する要求・需要も大きく高まる中、その業務を担う物流網事業とすべての従業員を取り巻く社会的環境は、決して良い方向に向かっているとは言い難い状況にあります。
特に昨今の働き方改革や人手不足問題が深刻化している業界として介護・建設・運輸が挙げられる中でも、運転免許の要件で外国人労働者にも頼ることができない物流乗務員の長時間労働と人手不足問題、複数回にわたる非効率的な再配達や交通混雑にもよる排出ガス増加や道路渋滞、交通事故・安全対策等々、多くの社会問題として取り上げられながらも、その実態としては、公共バスや郵便配達に対するような公的特例がない、いわゆる一般車輌と同等扱いの路上駐停車違反の厳格な取締りや、かつて東京都知事により、排ガスの見た目の黒さだけで偏見的に課せられた厳しい車輛規制。原油価格値上がりによる燃料費高騰の折には漁業事業者には補助されたような国からの手厚い施策も何もなく、2003年からはすべての大型トラックだけはどんな状況においても時速90km以下でしか走行できないスピードリミッターの取り付けが義務化され、高速道路において現実的に自然な流れで走れる一般車両とはまったく違う制約の中で長距離長時間の運行業務をしているのも現状です。
こういった中、近年の企業規模格差の拡大も著しく、本市のほとんどを占める大多数の中小零細または個人物流事業者においては、顧客と対等に運賃交渉ができる大手有名運輸企業の下請け、二次受け三次受け等々にて、適正価格とは言えない厳しい運賃収入と労務環境に置かれている状況も踏まえ、今後市が実施する入札の輸送案件に対しては、料金以外の要素、例えばトラック協会が実施しているGマーク認定などの考慮や 価格の最低限度設定なども制度的に必要かと強く考えます。
また京都市では「人と公共交通優先の歩くまち京都」政策が推進されており、その理念としての「公共交通」とは、バスや地下鉄はもちろんのこと、これからの高齢化福祉社会においてはタクシーや物流車輛も市民の「足」のみならず、生活と経済を力強く担う「手」ともなって社会を支える基幹業とお考えいただき、市の大きなフラッグシップ事業となった四条通の一車線化においても、その重要性に鑑みて荷捌きスペース等も確保されました。しかし、先にも述べました厳格な駐車禁止取締りにより、乗務員がその場で荷わけ作業をして、沿道または京都ならではの入り組んだ店舗やビル等の6階7階まで安全に商品を搬入し、全力で戻って来るまですべてを5分以内に、というのはどう考えても現実的に不可能であり、これについては国や都道府県警の賢明なる現状理解と規制緩和措置を待つしかありません。その折にはぜひ、京都市側からも強く助言をすべきと考えます。
以上のような状況の中、これからの社会の中で物流業が担う役割は、市民生活と福祉・環境面、各種産業や地域経済の循環・活性化にはなくてはならないものとして、今後市または民間が整備する大型施設や商業ビルなどにおける搬入車両の駐車スペース確保の義務化や、各所、マンション・個別住宅等での宅配ボックスの設置推進のインセンティブ・助成策などによる環境・渋滞・人手不足・労務問題等の解決を目指す公共物流ロジスティックスの観点も非常に大切なものとなります。いかがでしょう、本市域には非常に厳しい状況にある大多数の中小零細事業者を含む、現代物流の重要性に対しての市の見解、ならびに今後本市のまちづくりにおいては、物流をどのように考え 向き合ってゆくべきものであるのか、その方針・姿勢についてお答え下さい。
⑥最後に「持続可能なコンパクトシティ構想」モデル的地域としての南区・まちづくり計画についてお尋ねします。
私たちの地元南区は、京都駅や国道幹線をはじめ多くの大交通量網の結節点という地理的要因にもより、これまで工業・商業・農業など、京都の各種産業と経済基盤を力強く支えてきた重要な区域の一つであります。人口は職住共存の地域として11万人もあった時代の後、中小零細企業の不振によりバランスが崩れ減少傾向をたどってきましたが、近年、民間土地利用の促進により大型商業施設やホテル、マンション等の建設ラッシュとなり、行政的にも京都駅東南部エリアの開発や高等学校の再編などの将来ビジョンも具体化していく中で、合計特殊出生率はこの15年間 市内で連続トップを維持している状態です。
このような状況・条件は、本格的な人口減少社会を迎える中で国交省が推進する「持続可能なコンパクトシティ構想」の理念に合致するモデル地区ともなるべき可能性を有しているのではないでしょうか。その意味において南区の今後のまちづくりは、京都市全体にとっても極めて重要なものになると考えます。
ただ、この、行政区のまちづくり方針については、2001年から10年までの第1期基本計画の後、現在は2011年に策定された第2期基本計画を基に進められていますが、その終了年度は平成32年となっており、立案時点での社会情勢や、区内における民間を含む開発計画のスピード化による課題認識については、地域の現状から見て今では少々弱いものとなっている感が拭えません。
現在、南区では先の東南部エリア開発をはじめ、上下水道局本局の移転とらくなん進都構想、吉祥院水環境保全センターと北側1万坪の民有空き地問題、塔南高校移転の課題解決や西大路駅地域のバリアフリー化、そして老朽化している南区総合庁舎の整備方針等々、新しい時代に向けた数々のまちづくりの課題に迅速に対応する必要があります。
このように、私ども南区の現状はもとより、市内それぞれの区域を取り巻く社会動向もしっかりと踏まえた第3期の区基本計画については、地域力・区民力を結集させた上で早期着手をはかり、市民共有の確かな未来ビジョンをもって新たなまちづくりを推進してゆくべきと考えますがいかがでしょう。この区域を取り巻く社会的動向の現状認識と、市における南区の位置づけ、ならびに区の次期基本計画の着手に当たってのお考えについてお答えください。
以上、今年度は自民党京都市会議員団・政策委員長を拝命し、昨年取りまとめ提出させていただきました我が会派の200項目以上に及ぶ予算・市政方針要望をも基にされた今回の30年度予算案につきまして、議員団一同さらに徹底した審議を尽くして行くとともに、来たる知事選挙と京都府政に関しましても、府民の半数以上・147万市民を有する私たち京都市の考え・要望がしっかりと反映されるよう、一同全力で活力ある京都をつくりあげるために努力邁進して行きますことを固くお約束申し上げ、私の代表質疑を終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。