時宗について

 
『時宗』という宗派について、お話をさせて頂きたいと思います。


『時宗』とは、七百年ほどの昔に、一遍上人がお開きになった念仏宗であります。

中国の唐の時代、善導大師(ぜんどうだいし)という方が念仏の教えを盛んにされました。
当時はたいへん敷居の高い学問だった仏教を、簡素に民衆に伝えたのです。

唐から運ばれた難しい経典を読み解けなくても、もっと言えばなんの学問を積んでいなくても『南無阿弥陀仏』を唱えれば苦しみから解放され極楽浄土へ導かれますよ、と言うことを人々に口伝えていきました。

鎌倉時代になって法然上人がこの善導大師の教えを深く信じられて浄土宗を開かれたのです。

一遍上人はこの浄土宗の一派、西山派(せいざんは)の開祖証空上人(かいそ-しょうくうしょうにん)の孫弟子に当たります。


一遍上人のはじめられた宗派を、なぜ今日『時宗』と呼ぶかというと、善導大師が自分の弟子たちを『時』と呼びました。
善導大師の教えを深く信じて浄土宗を開いた法然上人も、その一派である証空上人も、そして証空上人の孫弟子である一遍上人もみな、善導大師にしたがいました。

弟子たちは一日を六時(四時間ずつ)に分けて、仏前でお念仏と六時礼賛(ろくじらいさん)というお勤めを時間ごとに交代して行いました。

また別時念仏(べつじねんぶつ)といって、日を限って念仏三昧を行いました。これもまた時間ごとに交代で行いました。
 
ですので、この人々を時の衆『時衆』と呼んだのです。この言葉は他の宗教では次第に使われなくなりましたが、一遍上人の流れをくむ教団では今日まで使われていて、『時衆』がこの教団の呼び名になりました。
のち、徳川時代『時宗』と改められて宗派の名になりました。