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野﨑康史司法書士事務所

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2026-10-12 16:00:00

除権決定による永小作権抹消―不動産登記法第70条第2項、公示催告の申立てから受理まで

1.はじめに―永小作権抹消に至った経緯

今回、除権決定を得て、登記記録に残っていた永小作権の抹消登記を完了しました。

発端は、相続登記を行った後、土地の分筆を前提として農地法第5条の許可申請(農地転用)を進めようとしたことでした。ところが、県から、永小作権を抹消しなければ申請を受け付けられないとの回答があり、永小作権の抹消に取り組むことになりました。

抹消登記自体は、除権決定を得た後、単独申請によって比較的スムーズに完了しました。しかし、そこに至るまでの道のりは簡単ではありませんでした。最大の難関は、抹消登記の申請ではなく、公示催告の申立てを簡易裁判所に受理してもらうまでの過程でした。

今回は、実際の案件を通じて経験した、公示催告の申立てから受理までの経緯を中心に紹介します。

2.登記記録に残っていた永小作権

対象となった永小作権は、明治44年7月15日に設定されたもので、登記された存続期間は20年でした。存続期間の満了については登記記録上明らかでした。

一方、権利者の登記上の住所は、すでに合併により消滅した村の古い番戸による表示でした。現在の管轄市役所に調査を依頼し、旧住所を現在の住所に置き換えられるか確認しましたが、所在を照合・特定することはできませんでした。

権利者の所在が分からないため、通常の共同申請による抹消登記を進めることは困難です。そこで、不動産登記法第70条第2項に基づく公示催告の手続を検討することになりました。

3.公示催告の申立てで問題となった「相当の調査」

公示催告の申立てに当たり、最初に問題となったのは、不動産登記法第70条第2項に規定する、法務省令で定める方法による「相当の調査」を行っても、共同して登記の抹消を申請すべき者の所在が判明しないという要件でした。

今回、存続期間の満了は登記記録上明らかでしたが、権利者の現住所を特定できないことについて、どこまでの調査が必要なのかが問題となりました。

そこで、こちらから提示したのが、『書式 意思表示の公示送達・公示催告・証拠保全の実務』です。同書の記載を踏まえ、今回の事案では、権利者の現住所を特定できず、現地調査を行おうとしても、所在を特定できない以上、権利者の所在を明らかにすることはできない旨を説明しました。

そのうえで、これまでの調査経過と、権利者の所在を特定できない理由を整理した報告書を作成して提出しました。単に「所在不明である」と述べるのではなく、どのような調査を行い、なぜ所在を特定できないのか、さらに調査を進めても特定が困難であることを具体的に説明する必要がありました。

専門書の記載も示しながら説明を重ね、最終的には、この点について理解を得ることができました。

4.土地の現況についても説明を求められる

権利者の所在に関する説明だけで、申立てが受理されたわけではありません。対象土地は登記上「田」でしたが、現況は未登記の建物が建ち、宅地化している土地でした。

裁判所からは、いつ頃から建物が建築され、宅地化しているのかについても説明を求められ、現況写真の提出も求められました。

そこで、未登記建物の固定資産評価証明書を取得したところ、建築年は昭和40年と記載されていました。この固定資産評価証明書の提出に加え、当事者の記憶も踏まえ、報告書には、少なくとも50年前にはすでに建物が存在し、土地も宅地化していた旨を記載しました。

このように、上申書や報告書の追加提出を何度か求められ、その都度、調査内容や土地の状況について説明を補いました。公示催告の申立てを受理してもらうまでには、相当な時間と労力を要しました。

5.ようやく公示催告の申立てが受理される

裁判所とのやり取りを重ね、上申書や報告書を追加しながら説明と資料の整備を進めた結果、ようやく公示催告の申立てが受理され、手続を進めることができました。

今回の案件では、存続期間の満了そのものよりも、権利者の所在が判明しないことをどのように説明し、調査の経過や対象土地の現況をどのような資料で裏付けるかという点が、大きな山場となりました。

6.除権決定を得て、永小作権抹消登記が完了

数か月間の官報公告による公示催告手続を経て、最終的に除権決定を得ることができました。その後、除権決定に基づいて永小作権の抹消登記を申請し、単独申請によって登記を完了しました。

申立てを受理してもらうまでの対応に多くの労力を要しただけに、抹消登記自体は比較的スムーズに完了したことが印象に残っています。

7.おわりに

古い登記記録に残された永小作権については、存続期間が満了していても、権利者の所在が分からなければ、通常の共同申請による抹消登記を進めることが難しい場合があります。そのような場合、不動産登記法第70条第2項に基づく公示催告の手続は、抹消登記を実現するための選択肢となります。

もっとも、実際に手続を進めるに当たっては、登記記録の確認だけでなく、権利者の所在に関する調査、調査結果の報告、対象土地の現況に関する資料の収集など、事前の準備に相当な労力を要することがあります。

今回の案件は、除権決定による永小作権抹消という結果だけでなく、公示催告の申立てを受理してもらうまでの説明や資料作成の難しさを実感する案件となりました。同様に、古い永小作権や地上権などの登記が残っていて、その抹消方法に悩まれている方にとって、今回の経験が少しでも参考になれば幸いです。

2026.10.18 Sunday
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