ブログ
公立学校共済組合の抵当権抹消
最近ご依頼いただいた相続登記案件で登記記録を見たところ、昭和40年代に設定された、債権者が公立学校共済組合の抵当権があったので、抹消の提案をしたところご依頼頂きました。レア案件のため記事にすることにしました。
公立学校共済組合について調べたところ、組織としては、公立学校の職員、都道府県教育委員会の職員や都道府県教育委員会の所管に属する教育機関の職員で組織されています。登記情報で検索してもヒットしなかったので、法人として登記はされていないようです。また、定款変更した場合には官報で公告されているとのことでした。また、都道府県ごとに支部が設けられています。
抵当権抹消書類についてですが、今回は依頼者の方に取り寄せて頂きましたが、司法書士が取り寄せる場合には、物件所在地の支部に請求することになります。抹消書類が届いたので内容を精査したところ下記の書面がありました。
- 理事長から支部長への委任状
- 支部長から登記を申請する方への委任状
- 文部科学大臣発行の印鑑証明書
- 定款の抜粋と官報公告の写し(原本証明文言付き)
- 解除証書
1の理事長から支部長への委任状については原本還付をして返却してほしいとのことで、丁寧に返送用レターパックまで付いていました。通常の抹消書類とは違い5の解除証書以外訳が分からないため、とりあえず支部に電話をして担当者に聞いてみることにしました。まず、権利証がないことについては、現在では貸し付けをしても抵当権を設定することはなく抵当権を設定していたのは昔のことだそうです。当時から、先生方等の信用で貸し付けを行っていたため、権利証はそもそも不交付にしたとのこと。他の書面に関しては、これで抹消できているとのことで、登記に関してはわからないためそちらで対応してほしいとのことでした。また「権利証がない場合は、法務局から事前通知がなされますがご対応頂けますか?」の問いについては、迅速に対応しますとの回答でした。
登記申請の添付書面ですが、1の理事長から支部長への委任状については「当該登記申請のみに使うものではない書面」に該当するため原本還付します。3については事前通知となるため必要となります。4については、共済組合所在地や理事長が変更になっていることから、これがいわゆる変更証明書になるようです。共済組合側は返却不要と言っていましたが一応原本還付しました。3の委任状及び5の解除証書には物件の表示がいずれも記載されていなかったため、解除証書の下部に物件の表示を入れました。
実際に登記申請をしたところ10日程度で完了したため、事前通知に対しては迅速に対応して頂けたようです。
相続人の地位が重複した場合の相続分(いわゆる二重資格者について)
先日ご依頼を頂いた相続登記と法定相続情報一覧図作成業務におきまして相続人を調査したところ、相続人の中に二重資格者がいることが判明してビックリしました。このようなことは受験知識の範囲だと思っておりましたので、慌てて先例や学説を調べて、何とか法定相続情報一覧図が完成したところです。
概要は以下の通りです。
二重資格者相関図.pdf (0.27MB)
- 経緯は不明だが、花子が婚姻をせずにA子を出産した。
- 子を出産したので、父母の戸籍から除籍となり、筆頭者が花子の戸籍ができた。
- 花子の父母が、A子を養子にした。
- 令和5年に一郎が死亡した。子供はいないうえ、両親も既に亡くなっているため相続人は配偶者と兄弟姉妹となった。
- 一郎に先立って、令和2年に花子が死亡していたため、代襲相続となり、A子が花子の代わりに相続人になった。
以上の経緯から、A子は被相続人の姉としての地位と、妹としての地位で相続人となります。
(同一順位間で相続資格が重複する場合には二重の資格を得ます。)
具体的な相続分は、妻B子は12分の9、二郎は12分の1、A子は12分の2となります。
このケースの場合「孫かつ養子」(昭和26年9月18日民事甲第1881号民事局長回答)と酷似していることから、具体的な先例は存在していないとはいえ、学説上、民法自体が重複する場合を認めていることを前提に、特に重複を認めない理由がないということで、両者の相続分を合計して取得するという考え方が有力と考えます。実際、法務局側としてもこれで良いとのことでした。
とはいえ法務局に申請した際にはかなりビクビクで、ダメ出しが来ないかと心配でした。法務局でも協議したようでした。