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木霊~北海道・栗山町の泣く木のはなし~(第7回絵本出版賞・大人向け絵本部門優秀賞受賞)

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木(こ)霊(だま)って知(し)ってっか?

「ヤッホー」って言(い)って返(かえ)ってくるヤツのことじゃない。

魂(たましい)があるのは人(にん)間(げん)だけじゃない。この世(よ)の中(なか)にあるモンには、みんな魂(たましい)があるんだ。動(どう)物(ぶつ)達(たち)や昆(こん)虫(ちゅう)や魚(さかな)、草(くさ)や木(き)や岩(いわ)や石(いし)ころにだって魂(たましい)はある。木(こ)霊(だま)っていうのはな、木(き)に宿(やど)っている魂(たましい)のことだ。それも、そこら辺(へん)にある普(ふ)通(つう)の木(き)に宿(やど)っている魂(たましい)のことじゃない。樹(じゅ)齢(れい)が百(ひゃく)年(ねん)も二(に)百(ひゃく)年(ねん)も超(こ)えて、長(なが)い年(ねん)月(げつ)を生(い)きている木(き)に宿(やど)っている魂(たましい)のことだ。

長(なが)く生(い)きている樹(じゅ)木(もく)は土(と)地(ち)を治(おさ)めている。木(き)の実(み)や樹(じゅ)液(えき)で生(い)き物(もの)を育(そだ)て、それを食(た)べた動(どう)物(ぶつ)や鳥(とり)や昆(こん)虫(ちゅう)達(たち)の糞(ふん)尿(にょう)と落(お)ち葉(ば)が土(と)地(ち)を育(そだ)てる。生(い)き物(もの)が吐(は)いた息(いき)を吸(す)ってきれいな空(くう)気(き)に変(か)える。晴(は)れた日(ひ)は木(こ)陰(かげ)をつくり、風(かぜ)や雨(あめ)や雪(ゆき)の日(ひ)は生(お)い茂(しげ)る葉(は)っぱでみんなを守(まも)り、枯(か)れ枝(えだ)や倒(とう)木(ぼく)は家(いえ)となり薪(まき)となって火(ひ)を点(とも)してくれる。そうやって土(と)地(ち)に住(す)む生(い)き物(もの)の生(せい)活(かつ)を見(み)守(まも)っているんだ。

いいや、

 

土(と)地(ち)のモンだけじゃない。森(もり)の栄(えい)養(よう)は川(かわ)を伝(つた)って海(うみ)に流(なが)れて、川(かわ)や海(うみ)の生(い)き物(もの)の命(いのち)も守(まも)っている。だから、樹(じゅ)木(もく)は神(かみ)様(さま)になる。大(だい)地(ち)にドッカと根(ね)を下(お)ろして天(てん)高(たか)く立(た)っている木(き)は、ご神(しん)木(ぼく)として祭(まつ)られていることが多(おお)いワケさ。

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もちろん話(はなし)だってできる。山(やま)ん中(なか)に入(はい)った時(とき)にカーン、カーンって音(おと)がすることがあるべ。風(かぜ)もないのにサワサワ葉(は)っぱが擦(こす)れる音(おと)が聞(き)こえたりする時(とき)があるべ。あれがそうだ。洞(うろ)なんかでも音(おと)の響(ひび)きが違(ちが)ってくるからな。人(にん)間(げん)にはわからんくらいに葉(は)っぱや枝(えだ)を動(うご)かしたり、擦(こす)る速(はや)さを変(か)えたりしてな。そうやって話(はなし)をして世(せ)界(かい)中(じゅう)の出(で)来(き)事(ごと)を伝(つた)え合(あ)っているんだ。

人(にん)間(げん)達(たち)のような頭(あたま)の形(かたち)ではないけどもさ、本(ほん)当(とう)に知(ち)恵(え)のあるヤツラだよ。なんせ何(なん)百(びゃく)年(ねん)も何(なん)千(ぜん)年(ねん)も生(い)きるヤツラだし、外(がい)国(こく)には四(よん)千(せん)年(ねん)以(い)上(じょう)も生(い)きている木(き)だってあるくらいだから、神(かみ)様(さま)って呼(よ)ばれたって何(なん)も不(ふ)思(し)議(ぎ)なことなんかじゃないって。ヤツラにしてみたら、オレ達(たち)人(にん)間(げん)の知(ち)恵(え)なんてモンは笑(わら)っちまうくらいな浅(あさ)知(ぢ)恵(え)でしかないんだべね。きっと。

 

とにかく、木(き)は生(い)き物(もの)の出(だ)すモノを何(なん)でもきれいに浄(じょう)化(か)してくれる。息(いき)や糞(ふん)尿(にょう)だけじゃない。悲(かな)しさや切(せつ)なさ、悔しさや恨(うら)みみたいな情(じょう)念(ねん)なんかも取(と)り込(こ)んで浄(じょう)化(か)してくれる。ムシャクシャした時(とき)に山(やま)や森(もり)に入(はい)ると気(き)分(ぶん)がスカッとなるべ。あれがそうだ。特(とく)に木(こ)霊(だま)がたくさんいる山(やま)や森(もり)では入(はい)った途(と)端(たん)に気(き)分(ぶん)が晴(は)れ晴(ば)れとするからな。

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だから、木(き)を無(む)闇(やみ)に伐(き)っちゃいけない。枝(えだ)を折(お)ってもいけない。お前(まえ)だって指(ゆび)や腕(うで)切(き)られたり折(お)られたりしたらかなわんべ。それと同(お)ンなじだ。

表(ひょう)面(めん)からは見(み)えないところにある洞(うろ)には木(こ)霊(だま)が取(と)り込(こ)んだ色(いろ)んな情(じょう)念(ねん)が封(ふう)印(いん)されている。木(こ)霊(だま)になった木(き)を伐(き)るとそこに封(ふう)印(いん)されていた浄(じょう)化(か)されていない負(ふ)の情(じょう)念(ねん)がバケモノになってこの世(よ)に放(はな)たれることになる。特(とく)に人(にん)間(げん)の念(ねん)は強(つよ)いから、浄(じょう)化(か)されるまでには何(なん)十(じゅう)年(ねん)も何(なん)百(びゃく)年(ねん)もかかる。封(ふう)印(いん)されていた念(ねん)が浄(じょう)化(か)された洞(うろ)は中(なか)が空(から)っぽになっているから風(かぜ)が吹(ふ)けばそこからポッキリと折(お)れる。そして土(つち)に返(かえ)るんだ。だから、木(こ)霊(だま)を無(む)闇(やみ)に伐(き)ったり折(お)ったりしてはいけない。全(すべ)ては自(し)然(ぜん)に任(まか)せておれば良(よ)い。

 

オレが先(せん)人(じん)やアイヌの人(ひと)達(たち)から学(まな)んだことだ。

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 これから話(はな)す話(はなし)は怖(こわ)い話(はなし)じゃない。切(せつ)ない話(はなし)だ。自(し)然(ぜん)をないがしろにした人(にん)間(げん)の身(み)勝(がっ)手(て)さの話(はなし)だ。

北(ほっ)海(かい)道(どう)の栗(くり)山(やま)という町(まち)に「泣(な)く木(き)」と呼(よ)ばれている木(き)があった。『あった』っちゅうのは、伐(き)られて朽(く)ちてしまったからだ。現(い)在(ま)はそこに二(に)代(だい)目(め)が育(そだ)っているけど、それは後(あと)の話(はなし)。今(いま)は泣(な)く木(き)という樹(じゅ)齢(れい)二(に)百(ひゃく)年(ねん)とも三(さん)百(びゃく)年(ねん)とも言(い)われていた大(おお)きなハルニレの木(き)の話(はなし)だ。

 

北(ほっ)海(かい)道(どう)が『蝦(え)夷(ぞ)』と呼(よ)ばれていた頃(ころ)は、栗(くり)山(やま)の辺(あた)りも大(おお)きな木(き)が生(お)い茂(しげ)っている豊(ゆた)かな森(もり)だった。その頃(ころ)の北(ほっ)海(かい)道(どう)は、アイヌの人(ひと)達(たち)が自(し)然(ぜん)と共(とも)に生(せい)活(かつ)していたんだ。けどな、明(めい)治(じ)になって国(こく)策(さく)で北(ほっ)海(かい)道(どう)の開(かい)拓(たく)が本(ほん)格(かく)的(てき)に始(はじ)まって、日(にほん)本の各(かく)地(ち)から渡(わた)って来(き)た多(おお)くの入(にゅう)植(しょく)者(しゃ)達(たち)が、いろんな思(おも)いや希(き)望(ぼう)を胸(むね)に抱(だ)いて、あちこちの土(と)地(ち)をどんどん切(き)り拓(ひら)いていった。

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その頃(ころ)の話(はなし)だか、その前(まえ)の頃(ころ)の話(はなし)だかは知(し)らんけど、ここら辺(へん)の土(と)地(ち)に暮(く)らしていたアイヌの娘(むすめ)と倭(わ)人(じん)の男(おとこ)が恋(こい)に落(お)ちたんだと。でもな、どっちの親(おや)も猛(もう)反(はん)対(たい)したらしい。それで二(ふた)人(り)は「この世(よ)で結(むす)ばれないんなら、あの世(よ)で幸(しあわ)せに暮(く)らそう」と、大(おお)きなハルニレの木(き)に想(おも)いを託(たく)した。死(し)んでからも愛(あい)着(ちゃく)のある土(と)地(ち)を見(み)渡(わた)せるようにってな。二(ふた)人(り)並(なら)んで手(て)をつないどったらしい。その頃(ころ)は人(じん)種(しゅ)とか家(いえ)とか宗(しゅう)教(きょう)とか色(いろ)々(いろ)なモノが自(じ)分(ぶん)達(たち)の気(き)持(も)ちよりも大(だい)事(じ)な時(じ)代(だい)だったから、想(おも)いを遂(と)げるにはそうするより仕(し)方(かた)なかったのさ。本(ほん)当(とう)のことかどうかはオレにはわかんね(わからない)。ずっと昔(むかし)から言(い)われていたから、きっとあったんだと思(おも)うよ。

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だけど、この木(き)にまつわる悲(かな)しい話(はなし)はそれだけじゃない。

内(ない)地(ち)から人(ひと)がいっぱい来(き)てからは、開(かい)拓(たく)した土(と)地(ち)と土(と)地(ち)をつなぐ道(どう)路(ろ)や鉄(てつ)道(どう)を作(つく)らなくてはなんね。特(とく)に栗(くり)山(やま)の辺(あた)りは近(ちか)くに夕(ゆう)張(ばり)炭(たん)田(でん)があったから、石(せき)炭(たん)を運(はこ)ぶための鉄(てつ)道(どう)を急(いそ)いで作(つく)る必(ひつ)要(よう)があった。そこで、三(み)笠(かさ)にあった市(いち)来(き)知(しり)集(しゅう)治(じ)監(かん)、今(いま)の刑(けい)務(む)所(しょ)だな。そこの囚(しゅう)人(じん)達(たち)を使(つか)って道(どう)路(ろ)や鉄(てつ)道(どう)を作(つく)った。ろくに寝(ね)かしてもらえんし、飯(めし)も食(く)わしてもらえんかったうえに、想(そう)像(ぞう)以(い)上(じょう)に辛(つら)い作(さ)業(ぎょう)だったから死(し)んでいく囚(しゅう)人(じん)達(たち)も多(おお)かったらしい。三(さん)十(じゅう)人(にん)以(い)上(じょう)はいたらしいよ。

 

けどな、弔(とむら)ってなんてもらえね。死(し)んだらハルニレの傍(そば)に穴(あな)掘(ほ)って埋(う)めるか、そこに積(つ)み上(あ)げられて土(つち)被(かぶ)せられてたらしい。生(い)きている囚(しゅう)人(じん)達(たち)への見(み)せしめだったかもしれんね。でも、ここら辺(へん)はまだ良(い)い方(ほう)かもしれん。上(かみ)川(かわ)や網(あば)走(しり)の方(ほう)では「人(ひと)柱(ばしら)」って言(い)ってな、死(し)んだら地(じ)盤(ばん)の弱(よわ)い場(ば)所(しょ)やトンネルの壁(かべ)に立(た)った姿(すがた)で埋(う)められたんだ。それぁ地(じ)獄(ごく)だ。死(し)んだって眠(ねむ)ることは許(ゆる)されずに働(はたら)かされるんだもの。どっちが良(い)いかなんて比(くら)べるモンでもないけどさ、まだここら辺(へん)は眠(ねむ)らしてくれたから、ちっとはマシなのかもしれんね。したけどよ、ほとんどの人(ひと)が、生(く)国(に)には待(ま)っている兄(きょう)弟(だい)や家(か)族(ぞく)がいたんだろうと思(おも)うとな、本(ほん)当(とう)にかわいそうな話(はなし)だ。

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こんな話(はなし)もある。工(こう)事(じ)の者(もの)達(たち)が暮(く)らしていた土(ど)方(かた)部(べ)屋(や)の近(ちか)くを通(とお)った女(おんな)の人(ひと)に飯(めし)炊(た)きを頼(たの)んだんだが、土(ど)方(かた)どもがその女(おんな)の人(ひと)を何(なん)日(にち)も何(なん)日(にち)も次(つぎ)々(つぎ)となぶりものにした。逃(に)げては連(つ)れ戻(もど)されを何(なん)度(ど)も繰(く)り返(かえ)したある日(ひ)、女(おんな)の人(ひと)はハルニレの木(き)のところまでようやく逃(に)げてきたけど、もうこれ以(い)上(じょう)逃(に)げ切(き)れないことを悟(さと)ってこの木(き)に身(み)を委(ゆだ)ねた。その後(あと)も、しばらく木(き)の枝(えだ)に女(おんな)の人(ひと)が結(ゆ)わえた腰(こし)紐(ひも)が残(のこ)っていて、ゆらゆらと揺(ゆ)れながらこの世(よ)を儚(はかな)んでいたっちゅうことだ。

 

当(とう)時(じ)は、命(いのち)が尊(とうと)いものとされていたのはホンの一(いち)部(ぶ)の人(ひと)達(たち)で、国(こく)策(さく)の方(ほう)が人(にん)間(げん)の命(いのち)よりも何(なん)倍(ばい)も何(なん)十(じゅう)倍(ばい)も重(おも)い時(じ)代(だい)だった。ほとんどの者(もの)達(たち)の命(いのち)なんて虫(むし)けらも同(どう)然(ぜん)に扱(あつか)われた。まして囚(しゅう)人(じん)やタコみたいな底(てい)辺(へん)にいる人(にん)間(げん)ならなおさらだ。そういう人(ひと)達(たち)の浮(う)かばれない魂(たましい)から無(む)念(ねん)の想(おも)いを取(と)り込(こ)んで、木(き)は天(てん)に魂(たましい)を送(おく)ってあげるんだ。その想(おも)いを洞(うろ)の中(なか)に封(ふう)印(いん)し、浄(じょう)化(か)させながら木(き)は木(こ)霊(だま)へと成(せい)長(ちょう)していく。

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そういう人(ひと)達(たち)の汗(あせ)と涙(なみだ)で北(ほっ)海(かい)道(どう)の開(かい)拓(たく)は行(おこ)なわれた。だから道(どう)内(ない)のいたるところに、無(む)念(ねん)の想(おも)いを抱(かか)えて死(し)んでいった者(もの)達(たち)の情(じょう)念(ねん)を取(と)り込(こ)んだ樹(じゅ)木(もく)がある。山(やま)ん中(なか)に注(し)連(め)縄(なわ)が張(は)られた木(き)や、風(ふう)化(か)しかけた古(ふる)いお地(じ)蔵(ぞう)さんがポツンといたりすることもある。たった百(ひゃく)五(ご)十(じゅう)年(ねん)くらいの歴(れき)史(し)しかないのにな。

 

四(し)六(ろく)時(じ)中(ちゅう)忘(わす)れるなって言(い)うことではないけどもさ、そういう人(ひと)達(たち)の働(はたら)きがあって、現(い)在(ま)の暮(く)らしがあるっちゅうことをオレ達(たち)は解(わか)って生(い)きていかなくてはならんのさ。北(ほっ)海(かい)道(どう)に生(う)まれて暮(く)らしていくっちゅうのは、そういうことを背せ負おって生いきていかなくてはなんねっちゅうことだ。

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このハルニレの木(き)が「泣(な)く木(き)」と呼(よ)ばれるようになったのは昭(しょう)和(わ)になってからだ。

栗(くり)山(やま)トンネル沿(ぞ)いの道(どう)路(ろ)を拡(ひろ)げる工(こう)事(じ)をする時(とき)にな、この大きなハルニレの木(き)が邪(じゃ)魔(ま)だったらしい。伐(き)ろうとして鋸(のこ)を入(い)れると泣(な)き声(ごえ)がして、刃(は)を入(い)れた者(もの)に災(わざわ)いが振(ふ)りかかるようになった。熱(ねつ)が出(で)てうなされたり、鋸(のこ)の刃(は)が折(お)れて身(から)体(だ)に刺(さ)さって重(じゅう)傷(しょう)を負(お)ったり死(し)んだりしてな。馬(うま)を曳(ひ)いて倒(たお)そうとした時(とき)なんかはロープが切(き)れて曳(ひ)いていた馬(うま)が死(し)んだっちゅう話(はなし)だ。

 

そういうことが続(つづ)いて、このハルニレの木(き)を伐(き)ると災(わざわ)いが起(お)こるとか言(い)われるようになった。そして「泣(な)く木(き)」っちゅう名(な)前(まえ)がついて恐(おそ)れられるようになった。

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ハルニレっちゅう木(き)は堅(かた)い木(き)だから、伐(き)る時(とき)の音(おと)が女(おんな)の人(ひと)の泣(な)き声(ごえ)に聞(き)こえたんでないかと言(い)う人(ひと)もいるが、オレはこの木(き)は本(ほん)当(とう)に泣(な)いたんだと思(おも)う。

それというのもな、木(き)の傍(そば)の掘(ほ)っ立(た)て小(ご)屋(や)を寝(ね)ぐらにしていたルンペンや近(ちか)くに住(す)んでいた大(おと)人(な)も子(こ)供(ども)も泣(な)き声(ごえ)を聞(き)いている。木(き)を伐(き)ったから泣(な)くんではない。何(なん)か良(よ)くない事(こと)が起(お)こるのを知(し)らせるために泣(な)いてたんだ。その証(しょう)拠(こ)に「木(き)が泣(な)いたから気(き)をつけろ」とみんなで言(い)うとったらしい。するとその後(あと)でな、大(おお)水(みず)やら事(じ)故(こ)やら、必(かなら)ず何(なに)か良(よ)くない事(こと)があったんだと。事(こと)が起(お)こってから言(い)っていたんじゃないから、これは本(ほん)当(とう)にそうだったんだと思(おも)う。

問(もん)題(だい)は人(にん)間(げん)の方(ほう)に聴(き)く耳(みみ)を持(も)っているかいないかなんじゃないかな。

 

まぁ、信(しん)じる、信(しん)じないは人(ひと)の勝(かっ)手(て)だから、オレはどっちでも良(い)いけどよ。世(よ)の中(なか)には目(め)に見(み)えないモノはたくさんあるし、道(どう)理(り)の通(とお)らない不(ふ)思(し)議(ぎ)な出(で)来(き)事(ごと)だって結(けっ)構(こう)あるっていうことも覚(おぼ)えておいた方(ほう)が良(い)いよ。

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そういうことがあって、「泣(な)く木(き)」はだんだん有(ゆう)名(めい)になっていった。町(まち)の人(ひと)達(たち)もその木(き)を恐(おそ)れながらも生(せい)活(かつ)の一(いち)部(ぶ)っちゅうか、見(み)慣(な)れた風(ふう)景(けい)の中(なか)にあって当(とう)然(ぜん)の存(そん)在(ざい)になっていたんだな。

 

したから、昭(しょう)和(わ)二(に)十(じゅう)九(きゅう)年(ねん)の洞(どう)爺(や)丸(まる)台(たい)風(ふう)で真(ま)ん中(なか)辺(あた)りから木(き)がポッキリと折(お)れてしまった時(とき)は、みんな残(ざん)念(ねん)がったらしい。幹(みき)には大(おお)きな空(くう)洞(どう)が空(あ)いていたっていうから、たくさんの情(じょう)念(ねん)を取(と)り込(こ)んでいたんだね、きっと。そして、たくさんの想(おも)いを浄(じょう)化(か)してきたんだよ。

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それから十(じゅう)年(ねん)以(い)上(じょう)過(す)ぎた頃(ころ)、夕(ゆう)張(ばり)川(がわ)の護(ご)岸(がん)工(こう)事(じ)と国(こく)道(どう)の舗(ほ)装(そう)工(こう)事(じ)が行(おこ)なわれることになった。工(こう)事(じ)を請(う)けていた会(かい)社(しゃ)の人(にん)夫(ぷ)達(たち)が夜(よる)に酒(さけ)を飲(の)んでいた時(とき)に「泣(な)く木(き)」の話(はなし)になった。そこで一(ひと)人(り)の酔(よ)った若(わか)い人(にん)夫(ぷ)が「そんなの迷(めい)信(しん)に決(き)まってる!」って酒(さけ)の勢(いきお)いもあったんだと思(おも)う。人(にん)夫(ぷ)同(どう)士(し)で金(かね)賭(か)けてな、チェーンソーで一(いっ)気(き)に伐(き)ってしまったんだ。「泣(な)く木(き)」は一(いち)メートルちょっとの高(たか)さの切(き)り株(かぶ)だけになっちまった。木(き)を伐(き)った人(にん)夫(ぷ)はその後(ご)何(なん)十(じゅう)年(ねん)も生(い)きているらしいから、祟(たた)りや何(なん)だっていうのは迷(めい)信(しん)だったって言(い)う人(ひと)もいるけど、オレは違(ちが)うと思(おも)う。

 

鋸(のこ)で伐(き)ったんならともかく、チェーンソーだもの。モノの数(すう)分(ふん)で伐(き)れちまうから泣(な)く暇(ひま)なんてないべさ。人(にん)間(げん)だって鉄(てっ)砲(ぽう)でバーンってやられたらひとたまりもないべ。それと同(お)ンなじだ。仮(かり)に泣(な)いてたとしたって、チェーンソーの音(おと)うるさくて聞(き)こえなかっただろうしな。

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途(と)中(ちゅう)から折(お)れちまっていても「泣(な)く木(き)」はその時(とき)までは生(い)きていたんだ。チェーンソーで伐(き)られた時(とき)に死(し)んでしまった。伐(き)られたところの洞(うろ)の大(おお)きさ見(み)たらわかるけど、まだまだ浄(じょう)化(か)されていない無(む)念(ねん)の想(おも)いがたくさん封(ふう)印(いん)されていたと思(おも)うよ。それが伐(き)られたお陰(かげ)で封(ふう)印(いん)が解(と)けちまって、そこいらに放(はな)たれてしまったってワケさ。伐(き)られた後(あと)、白(しろ)蛇(へび)が二(に)匹(ひき)切(き)り株(かぶ)にいたって言(い)われてたけど、放(はな)たれた情(じょう)念(ねん)を戻(もど)しきることはできなかったべね。それ以(い)上(じょう)放(はな)たれないようにするので精(せい)一(いっ)杯(ぱい)だったんじゃないかな。白(しろ)蛇(へび)は眷(けん)族(ぞく)様(さま)だから神(かみ)様(さま)のお遣(つか)いだ。「泣(な)く木(き)」が死(し)んだ後(あと)を受(う)けて、この土(と)地(ち)を守(まも)っていたんじゃないかな。

 

「泣(な)く木(き)」の傍(そば)では、交(こう)通(つう)事(じ)故(こ)や幽(ゆう)霊(れい)を見(み)たっていう話(はなし)が多(おお)い。浄(じょう)化(か)されていない念(ねん)が放(はな)たれたんだもの、それは当(あ)たり前(まえ)のことだ。伐(き)られる前(まえ)から幽(ゆう)霊(れい)話(ばなし)はあったけど、交(こう)通(つう)事(じ)故(こ)なんかは伐(き)られてからの方(ほう)が多(おお)いんじゃないかな。まぁ、ちゃんと調(しら)べてないからわからんけどな。

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幽(ゆう)霊(れい)の話(はなし)は「黒(くろ)い大(おお)男(おとこ)」だったり「車(くるま)に乗(の)る女(おんな)の人(ひと)」だったりすることが多(おお)い。そりゃぁ、乗(の)っけた女(おんな)が泣(な)く木(き)のところで突(とつ)然(ぜん)消(き)えたりすれば驚(おどろ)くし、怖(こわ)いけどな。モノは考(かんが)えようだ。その女(おんな)乗(の)っけるために車(くるま)止(と)めたり、泣(な)く木(き)の近(ちか)くまで戻(もど)ったり、そこで止(と)まったりしたことで怖(こわ)い思(おも)いはしたかも知(し)れんけど、大(おお)きな事(じ)故(こ)から命(いのち)守(まも)られたかも知(し)れんと思(おも)ったらありがたい話(はなし)になるしな。

 

 事(じ)故(こ)の多(おお)いところだから、守(まも)ってもらったと考(かんが)えた方(ほう)が良(よ)くないべか。したら怖(こわ)い話(はなし)じゃなくなっちまうけどな。

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こうして「泣(な)く木(き)」は月(つき)日(ひ)と共(とも)にだんだん朽(く)ちていった。でも、不(ふ)思(し)議(ぎ)なもんでね、話(はなし)はなくなってしまうどころか、こうして現(い)在(ま)まで語(かた)り継(つ)がれている。「泣(な)く木(き)」が土(と)地(ち)や北(ほっ)海(かい)道(どう)の歴(れき)史(し)にドッカと根(ね)を張(は)っていたっちゅう証(しょう)拠(こ)だ。みんなに愛(あい)され、恐(おそ)れられ、受(う)け入(い)れられていた証(しょう)拠(こ)だ。伝(でん)説(せつ)になった「泣(な)く木(き)」はこれからも栗(くり)山(やま)やその周(しゅう)辺(へん)の人(ひと)達(たち)に大(たい)切(せつ)に語(かた)り継(つ)がれていくだろうし、記(き)憶(おく)の中(なか)に生(い)き続(つづ)けていくだろうから、これからも忘(わす)れられることはないだろうな、絶(ぜっ)対(たい)に。

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昭(しょう)和(わ)の終(お)わり頃(ころ)に、泣(な)く木(き)があった場(ば)所(しょ)の近(ちか)くで育(そだ)っていたハルニレの木(き)を持(も)ってきて、「泣(な)く木(き)二(に)世(せい)」として栗(くり)山(やま)町(ちょう)の人(ひと)達(たち)が大(たい)切(せつ)に守(まも)っている。「泣(な)く木(き)」から種(たね)が落(お)ちて育(そだ)ったらしい。まぁ、どっちが守(まも)っているかは知(し)んないけど、初(しょ)代(だい)の「泣(な)く木(き)」は人(にん)間(げん)達(たち)の悲(かな)しみや恨(うら)み、諦(あきら)めといった負(ふ)の情(じょう)念(ねん)を取(と)り込(こ)んできたから、二(に)代(だい)目(め)の「泣(な)く木(き)」は人(にん)間(げん)達(たち)の楽(たの)しい、嬉(うれ)しい情(じょう)念(ねん)や想(おも)いをいっぱい取(と)り込(こ)んで、「嬉(うれ)し泣(な)きの木(き)」にすることが栗(くり)山(やま)の人(ひと)達(たち)だけでなくて北(ほっ)海(かい)道(どう)民(みん)、いやいや、この世(よ)に生(い)きるすべての者(もの)達(たち)の使(し)命(めい)なんでないべか。

1998年・第1回新風舎えほんコンテスト優秀賞「おつきさまにまけない!」

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初めて作って応募した作品がいきなり優秀賞を受賞!

応募した本人もビックリ\(◎o◎)/!

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おばあちゃんのひとりごと

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当麻町母子通園センター(現・上川中部子ども発達支援センター)と当麻町子育て支援センターで勤務していた時、利用されるお母さんや家族の方が元気にこどもと向き合えるようにとの想いを込めて制作し、冊子にして配布していた。現在も当麻町子育て支援センターでは配布しているらしい。

たぶんコロナ禍でも今年中には出版になると思うけど、この絵と現職の頃に当麻町広報誌に掲載していた「子育てコラム」に加筆したモノと合わせた育児エッセー「おばあちゃんのひとりごと~子育てと日々格闘しているお母さんお父さんたちへのエール‼~(仮)」を日本橋出版から全国販売する予定なので、お楽しみに!!

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きぼうのうた

きぼうのうた

平成元年春から平成5年春まで旭川にある知的障がい児入所施設で広報を担当していた時に、地域の方たちに少しでも関心を持って手に取って読んでいただきたいとの想いから機関誌の表紙に独断で自作の詩を掲載していた。今思うと、よくお咎めがなかったなぁと不思議!あの頃は運動会や学園展のポスターを作ってみたり、道北愛護展で売り物の大根で招き猫を作って飾ったりと結構好き勝手にやらせてもらっていました(笑)

アルファポリスにも掲載しているので、そちらも覗いてみてください!

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施設職員を退職後、詩に絵を付けて「きぼうのうた」と題してまとめました!

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 きぼうのうた(写真撮影なので光や撮影者の影が写っているところがあります)

 

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きらきら きらきら きぼうの ひかり

       みんなの えがおと おなじだね

ぽかぽか ぽかぽか きぼうの はるは

       みんなの こころと おんなじだ

 

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 まわりの おやまが ころもがえ

   ゆうやけ こやけに こがねいろ

あきって とっても おしゃれだね

   あかや きいろに かがやいて

 

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 ゆきって とっても きれいだね

   まわりが みんな しろくなる

ふゆって とっても きれいだね

   ぼくらの いきも しろくなる

 

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ぽかぽか ぽかぽか おひさまさんが

    ほくらの げんきを みつめてる

ぽたぽた ぽたぽた したたるしずく

    はるが ちかいと はなしてる

 

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みんなの えがおが あつまって

   はるが にっこり ほほえんだ

みんなの げんきが あつまって

   きぼうの ひかりが かがやいた

 

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あお き みどり なつ の いろ

     たいよう にっこり わらってた

わたし こんがり こむぎいろ

     みんな にっこり わらってた

 

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はるは すこぉし てれやさん

      わたしの ちかくで かくれんぼ

はるを みんなで さがそうよ

      げんきな こえで 「みーつけた!」

 

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どこまでも どこまでも あおいそら

    たかぁい たかぁい あおいそら

ぼくらの げんき いいえがお

    たかぁい たかぁい てんまでとどけ!

 

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 しんしん しんしん おりる ゆき

       おそらの ほしと おなじだね

ぼくの あたまに つもる ゆき

       とうさん あたまと おなじだね

 

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 みんな えがお

みんな えがお

みんな えがお

みんな えがお

みんな ともだち

みんな えがお

 

いつも えがお

いつも えがお

いつも えがお

いつも えがお

みんなの ゆめ

いつも えがお

2004年・第8回越後湯沢全国童画展・入選作品「繁みの向こう」

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画面の中に50匹ぐらい(本人も何匹だったか忘れたけどだいたいそれぐらい)の昆虫が隠れています。

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