農園の一年
標高が高い売木村では、植物や動物たちの目覚めものんびりしています。桜の開花は町よりも一足遅い4月。アグリかなだでの春の作業は、山仕事から始まります。冬に切り倒した原木を山から下ろして、切って、山と会社を何往復も運搬。そして、穴を開け、菌を打ち、菌が回るまで一夏から二夏寝かします。同時に、きのこ菌が活性化する気温となり、原木しいたけの収穫の盛りとなります。
春は山菜の季節。わらび、うど、たらの芽、コシアブラ、ふきなど、身の回りが山菜の宝庫です。うどは、もみ殻を使って日陰を作ると、きれいなピンク色になります。山の恵みを頂けることに日々感謝です。
5月半ばの田植えに向けては、草刈り、耕起、畦塗り、堆肥・肥料まき、代掻きなど、やることが沢山。田植えが終わると、ほっと一息。合間で、冬場から育苗してきた長ねぎの定植も。梅雨に入る前に、とうもろこしの畑の準備、種まき、定植を進めます。動植物の芽吹きと共に、農作業も一気にやることが始まり、心も体も目覚める季節です。
日中は暑くなりますが、湿度が低く朝晩は涼しい売木村。こうした昼夜の寒暖差により売木の夏野菜はぐんと甘くなります。アグリかなだでは、とうもろこしをメインに昔きゅうりなどの夏野菜を栽培しています。とうもろこしの収穫時期は7月下旬〜9月中旬。収穫は早朝5時頃から行います。日中は実のでんぷん・糖分の一部が実を成長させるために使われて減ってしまいますが、夜になると葉に蓄えられていたでんぷん・糖分は実のほうに送られます。そのため早朝に収穫するとうもろこしが一番甘いのです。朝採りのとうもろこしの美味しさを多くのお客さまにお届けしたいとの思いから、道の駅やネット販売はもちろん、中京圏・首都圏のイベントやマーケットへの出店なども積極的に行っています。
夏は草との戦いです。水田や畑を耕作すること、そして草刈りや除草は、中山間地域の景観維持にも大きな意味があります。除草剤に極力頼らず、農機具・農具、時に手を使ってこまめに草取りをしています。
売木村は、水資源が豊富で、どこにいても水の流れる音が聞こえます。それだけで納涼効果。水路や川で、手や顔の汗を流したり冷やしたりして、クールダウンするのがお昼休みの楽しみです。釣りに、ランナーの合宿地に、キャンプ場にと、避暑地として多くの観光客が訪れる季節です。
黄金色に輝く田園風景。9月下旬に稲刈りが始まります。田んぼのあぜ道などに見られる木組みの「はざ」は、この地方独特の光景で、刈り取った稲を天日干しする「はざかけ米」は売木の自慢です。アグリかなだでも昔ながらの方法を受け継ぎ守っています。コンバインの刈り取りはすぐにお米となりますが、はざかけにすることにより、稲刈り後も稲藁と繋がったままのもみがゆっくり熟成されてひと味違うお米となります。
11月の秋色感謝祭では、村総出で、新米をはじめとしたとれたて野菜、果物、手作り加工品など、売木村の特産品が並びます。
秋の味覚、きのこ。夏の暑さで活動がストップしていたきのこ菌が再び働きだし、原木しいたけの盛りとなります。きのこにはビタミンB群やビタミンD、カリウムなど栄養素が豊富。特にビタミンB群には、神経状態を正常に保ち健康維持を助ける働きがあり、疲労回復を促します。新米にきのこに、食欲の秋。厳しい冬に向けて、夏場の疲れを”食”で労わり整えていきます。
ときには零下15℃を下回る、山里の厳しい冬。アグリかなだでは、長ねぎや加工用の大根の栽培をしています。長ねぎは、11月中旬〜年明けまで続きます。長ねぎは高冷地に向きの農作物。多少の霜にも耐え、甘くて味の凝縮したねぎができます。同時にねぎの種まきや育苗も冬に始めます。ねぎは収穫まで1年がかりの農作物です。
雪のシーズンに入ると田畑での作業はようやくひと段落。農繁期としてのんびりと過ごしたいところですが、山仕事で忙しくなる季節でもあります。山に行って、薪と原木しいたけ用の木を伐採。売木村の農業は林業と密接です。夏のとうもろこしを乾燥させた加工品の内職も、冬ならではの大事な手仕事です。