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◆先生、ちょっとおたずねします。
(初代宗家 菊井松音 聞き書き)
◇先生の一番お好きな言葉を聞かせてください。
私の好きな言葉と云うより好きな日、好きな時間が有ります。
それはお祭の前日とか、お正月の前が好きです。
ばたばたと忙しくして、当日になり、うれしくても又済んだ後、
淋しい様な気持ちでいやですね。一日中で云えば午前中が好きです。
午後はだれる様でいやです。物事をするにも前の日迄が好きです。
でも演奏会は、一生懸命に演奏した後が良いです。
◇先生は毎日をどのように過ごされていますか。
朝四時に起きてお稽古場で六時まで練習です。そして一度部屋に帰り
八時から朝食です。九時頃からお稽古が始まり、夜九時、おそい時は
十一時になります。またお客様のお相手をしたり、色々打合せがあり
忙しいです。週2回は大阪の稽古場に行きます。
日曜日は演奏会に研究会、下合わせとつづいています。
◇先生の若い頃のお稽古に付いてお話して下さい。
とっても、こわかったし、厳しかったです。いつも叱られ通しでした。
爪をはめたままたたかれるし、二階でおさらいをしていて忘れると
下から又どなられました。でも小さい時に飴をもらったこともあります。
前の先生は、お客様、例えば呉服屋さん、お茶屋さん、魚屋さんが来ると
先生の横に座らせて、お茶を出してお話をしながらお稽古をされるのです。
弾けない時でも其の人の前でおこられました。学校帰りの袴はだめで、
長い袖で帯付でないとお稽古をしてもらえませんでした。
それからきげんが悪い時に集金の人が来ると「今来たら悪い」と云って
追い返されるのです。又、きげんが直ったら奥さんにお金を後でとどけに
ゆく様にと云って渡しておられました。
◇昔の演奏会の様子をお聞かせください。
尺八の演奏会の場合は尺八の人の名前と曲目が出ていて、絃方のはないのです。
会場に行ってから、何の曲を弾くか決まります。いつでも何でも弾ける様に
ふだんから、よくおさらいをしておくのです。
お箏の演奏会の時は先生がお弟子さん達に一生懸命おさらいをされます。
替手とか三絃は応援の先生方にたのまれます。下合せもなしで当日いきなり
演奏しますので、経験の浅い先生だと本手がまちがえてついてこられなかったりして
困ることもありました。
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