♪ 近況&インフォメーション ♪
「つむじ風食堂の夜」
「海の水のように、感情が世界中のあらゆるひとをつないでいる」
そんな言葉をインフォメーションに記したからか、このところ、こころを動かされる出来事が続きます。
いいことも悪いことも、分け隔てはないようです。
こんなときにS市のY先生ならぜんぶフォーカスしないことだと助言をいただくんだろうと思いますが、なかなか人の気持ちは割り切りづらいものです。訓練が足りません。
「つむじ風食堂の夜」吉田篤弘・著 ちくま文庫・刊
世田谷線の赤堤あたりがモデルだったとどこかで聞いた記憶があります。
三軒茶屋から路面電車を乗り継いでいくその住宅地の風景は自分が行き来した覚えがある、あの頃と変わらないのだろうかと思います。
「食堂」「エスプレーソ」「月舟アパートメント」「星と唐辛子」「手品」「帽子と来客」「奇跡」「つむじ風」
先月遠くの書店で、書名に惹かれ目次をめくって我慢できなくなり、購入して一気に読んでしまいました。
個性的ででもやさしい登場人物たちのまるで童話のような物語です。
エスプレッソの話、コーヒーのお店も出てきて…
なつかしい気持ちになる、素敵な、いま、こんな街あったら…、を満喫しました。
映画にしたらいいのに、と思ったらもう映画になっていました。
なかなか単館のような作品の上映に気づかず、生きた情報に触れられず「不利だ」と感じることが多々あります。
文字通り、街を足で歩くと、その街の情報や人々が風のように体に触れていくのを感じることが出来ます。
いろいろな街を歩くのが楽しいのは、似てはいるけど少しづつ違う生き方と顔をしているたくさんのひとびとが生きている街の様子で、自分のなかの何かが触発される瞬間が生まれるからかもしれません。
それは決してインターネットや車で移動する速度では目に入らない「自分で体感する現実の情報」です。
考え事や決めかねたことが増えてくると、知らない遠くの街を歩く癖がありました。歩くことと走ることは大好きでした。
いい小説に出会うと、こんど時間があるときにゆっくり読み返してみようという気分になります。
そして、自分だったら昔は吉祥寺まで歩いていって、地下に下るお店でコーヒーを注文してその本に浸るという贅沢が楽しみでした。
そういう時間の過ごし方が贅沢ですきだったんです。
いま、お店をやっているのはその頃の時間の使い方と空気が、つながっているみなさんと共有する楽しみなことと、
時間を超えた昔の自分が客席にいて、自分のコーヒーを飲んでいる…、
などと馬鹿げたことを空想する瞬間があるからかもしれません。