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武周木工
【つくり手ヒストリー】
小田原駅から東に1キロちょっと。
鮮やかな黄緑の地にモノトーンで抜かれた社名が浮かぶ、武周木工の社屋があります。
当代社長の府川寛さん(43)が5年ほど前に父からバトンを受け取るよりもはるかに前、太平洋戦争へ出兵した祖父が興した府川玩具製作所を含めると、長い歴史を持つ木工の会社です。
屋号の由来が素敵でした。
祖父の名前は「武雄」さん。腕を振るってくれる職人さんや取引先など、周囲の人に支えられて生業を続けていけると常々口にしていた武雄さんは、自身の名からとった一字に感謝の念を添えて「武周木工」の屋号を掲げました。
2代目の父の背中を見て育った寛さん。「父からは継げ、とも言われなかったし、継ぐ気もなかった」そうで、生まれついてのいきもの好きから大学は水産学部に進学。岩手で学生時代を過ごしました。
就職先の鮮魚小売専門店でのサラリーマン生活に馴染んだ3年目、父を支えてくれていた従業員の退職が決まり、寛さんは家業に入ることを決めました。「自分がこの道を選んだことで、祖父に世話になった人たちが喜んでくれたことがうれしかった」。見渡せば、業界内では後継者不足や需要の減少で、廃業する店が続々と出てきた頃。昨今では一つの商品を完成させるのに必要な部品が手に入りにくくなったり、時代の変化を肌で感じているそうです。
10年ほど前に建て替えた工場は、一見木工品の製造会社とは思えないようなシックな外観
【こだわり】
「最後のひと手間は人に任せず、自分でやります」ー。寛さんが大切にしているのは「磨き」の作業。機械と自らの手を使い、商品を美しく仕上げます。取材中、目の前にあった木曽ヒノキ製の鏡餅は、永遠に撫でていられるほど滑らかな手触り。木の良さを存分に引き出すのも、職人の腕の見せ所です。
ものづくりの面で気になる存在は、自身の趣味でもある釣りに欠かせないルアーのメーカー。90年近い歴史を持つフィンランドのラパラ社が作るバルサ(木製ルアー)に注目しているそうです。理由は、商品の価格と生産システム。浮力や加工のしやすさに優れる一方、生きた素材という特質を考えると、木は本来なら量産には向かない素材のはず。安定した品質、しかも低価格で生産を続けるシステムに「いつかは自分も取り組んでみたい」と意欲を燃やします。
高校生と中学生、二人の息子を持つ寛さん。「いつか子どもがやりたい!と思った時に、やめた方がいいよと止めるような状況でないように」。顧客から求められる仕事に応えながら、日々機械の前に立っています。

口調は淡々としつつも、話題は豊富。ペットの名前やら趣味の釣りやら、気づけば2時間近くも居座ってしまった
【手にとってもらいたいもの】
柔らかな手触りのヒノキのお餅にケヤキのみかんがちょこんと乗った木製の鏡餅は、寛さんが生み出したヒット商品です。
今回のフェスには、味わいのある木目のため正規価格より求めやすいB品の鏡餅のほか、DIY愛好者に人気のヒノキの丸板などが並びます。
少し脱線するようですが、B品ってなに? という疑問が頭に浮かびました。流れるような木目の途中に、節がポツポツと散ったら。白太の木肌に、わずかに濃い目の年輪が入ったら。
整ったものが正規品で、すこしの乱れでも規格外品になってしまうのは、作り手として思うところがあるのでは、というのは考えすぎでしょうか。
写真左のヒノキの丸板は、詰め放題で提供すると毎回人気の品。アイディア次第でいろいろなものが生まれそうです。
看板商品の鏡餅(右上)はもちろん、ヤマメマグネットも密かな人気を呼んでいます
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