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糧 大江健太
「らしさ」を追い求めて
旧畑迫病院で飲食店をはじめて、走り出すのにあたって一番大事に考えていたのは「らしさ」だ。
ぼくはこの場所をはじめる前の環境は、デザイン会社のスタッフでした。
その会社では言語化されていない「らしさ」をもっていて、ぼくはその「らしさ」を追い求めていた。その会社は、山陰界隈では群を抜く空間デザイン力を持っていて、今も第一線で活躍をしている。
代表は、会社が表現する「らしさ」について言葉少なくヒントを与えてくれるが、答えは与えない方針。今までつくられ空間化された「らしさ」から、自分ならではの創り方を模索する作業が求められていた。
空間化はされているが、言語化がされていない状態がスタッフであるメンバーの思考を止めない仕組みを作っていたのだと思うし、その環境であることがスタッフの力を磨き上げ、自分ごととして、会社というプロジェクトに関わることになっていったのだと思う。
話はもどるが、旧畑迫病院の飲食店のプロジェクトでは「らしさ」をどうつくりあげるかがポイントだと思っていた。
運営する立ち上げメンバーのエッセンスや方向性、社会の動向やマーケットの求めるものも、もちろん汲みとって積み上げて形にしていくことも大事ではあるのだけど、一番大事なことは、この「空間」が求めている「在りたい姿」なのだと思う。僕ら運営側は、その在りたい姿に呼ばれて、この場所を運営させてもらっていると思い続けることが大事なのだ。
この場所は男性なのか、女性なのか?性格は?喋り方は?趣味嗜好は?
ぼくら運営者がこの場所を我が物と所有の感覚で運営をすると、いつしか間違えてしまうだろう。場所というものには人格があり、その場所の人格は人と同じく尊重されるべきものなのだ。
運営メンバーにこのことを直接的な言葉で伝えないけど、問いかけているのは、この場所の等身大の姿であって、この場所の人格が満足するための工夫を求めている。
2016年の晩夏、ぼくらはこの場所の名前を「糧」と名付けた。
初心であり、在り方と工夫の為のヒントである言葉だ。
運営をしはじめてそろそろ10年。ぼくらの付き合い方は、やっとこの場所にフィットしてきたのかもしれないなと思い始めているが、まだまだこれからも工夫をし続けていき、この場所の、等身大で気持ちいい場作りのために貢献をしていきたいと思う。