第 6章 観察の対象を広げよう
4 人間関係をチェックする
◇相手は鏡
「周りにいる人はあなたの鏡 」ということを知っていますか?
あなたの夫 ・妻や恋人はあなたを映し出す鏡です。あなたの子供もそうですし、あなたの親しい友人もそうです。
良くも悪くもあなたの性質を映し出してくれます。職場で気の会う人・会わない人・・・
とにかくあなたが気になる人は皆、あなたの鏡です。
自分にあるのと「同じ」性質がそのまま相手に見えます。
自分を愛し、受け入れている人はとても美しく見え、周囲の人を引き付けます。
たとえば、人が恋におちると、自分の素敵なところを鏡である恋人に見て、何もかも無条件に愛しますから、自分も美しく見えるのです。
相手の気になる部分は 自分にもそういう一面がある、ということ。
好き嫌いが激しく、文句が多い割に自分からは何もしない夫が気になるなら、自分もそう。なんでも仕事を背負込んでしまって気の毒そうな同僚がいるなら、自分もそう。
人をいつも見下したよう しゃべる上司が気になる‘なら、自分もそう。
細かいことにいちいちヒステリックに文句をつけてくる隣人が気になるなら、自分もそう。
あなたの目にそのように映っている、気になっている、というところが重要なのです。
他の人の目にはそう映らなかったり、気にならなかったりします。あなたの今の状態を相手が映し出しているだけです。相手にその自覚はありません。
たとえば友人がいつもお金のことで愚痴っており、いささかうんざりしているとします。
自分自身、お金に対する不足 ・不満感がないかどうか、良く点検して下さい。
あなたが心底そのことに気付くと、次のような結末が待っています
1 不思議に相手がそのようなことを言わなくなる(相手も変わる) 。
2 相手があなたのそばから離れていく。
3 相手は相変わらず愚痴っているが、あなたはぜんぜん気にならなくなる。
・・・要するに 「鏡関係が終了した」ということです。
波長の似た者同士は引き付け合い、多くの面で引き付け合い効果(鏡関係)がある人が親友 ・恋人 ・ 夫婦になります。
◇反面鏡
「そんなこと言うけど、あのサボり魔でいい加減な友人、ずぼらでがさつな同僚が自分の鏡とは到底思えない」という人もいると思います。
このような場合、反対のものを映し出していると言えます。でこぼこ同士がバランスしているのです。でも根っこは同じです。
これは一見妙な感じですが、元々同じ性質がプラスとマイナスに分かれただけです。
そういう意味ではやはり波長の似た者同士、ということになります。
仕事の相棒がずうずうしい人で、何かというと私をあてにしてくる上、自分では決して動かず、あなたはいつも尻拭いする羽目になる、という不満をもっているとします。
この人が一体どういう点で鏡なのでしようか?
この場合、相手は「甘えん坊さん」で、あなたは「世話焼き」あるいは「背負い屋」というバランス関係にあります。
相手は構ってくれる人・頼れる人がいないと不安になり、あなたは構いたい人がいないと不安になります。
自分で気付いていないかもしれませんが、あなたは子離れしない親のように、
人の尻拭いをしたり、世話を焼いたりすることが「善」だと思っているのです。
両者とも、相手が必要であり、自立していないという点では同じなのです。
嫌だったらやめればいいのですが、やめないのは、自立したくないからです。
あなたは、先のことを考えるのが嫌いで、適当に行きたい人なのに対し、
パートナーは、将来のことにいつもきちんと計画を立て、用意周到に行動する人。
あなたはその細かい性格にうんざりしているとします。
しかし、「気になる」ということは「鏡関係にある」 ということです。
共通点を観察してみますと、お互い未来に対する不安が強く、一方は「先を見ないでごまかそうとする」、他方は「あらかじめ枠を作って安心感を得る」という対処法を取っていることが判ります。
あなたの職場に、仕事はマイペースでのんびりテンポ、何を言って聞かせてもあまり反応がないのほほんとした部下がいて、気に障ってしょうがないとします。
この場合、仕事最優先で、思いやりに欠けるあなたの緊張感が職場に波及して、そのギスギスした雰囲気をこの部下がたった一人でバランスをとっていると考えられます。
部下を何とかしようとする前に、あなたがリラックスする雰囲気作りを考えるほうが、解決が早いのです。
つまり、この部下に悪役を背負わせているのはあなただ、と言うことです。
◇押さえつけている感情を相手に映し出す
自分の中である感情を押さえていると、それを外に投影して見せます。
例1
〔表面的な現象〕 あいつが俺を怒らせた、相手が私に怒りをぶつけてきた
[裏のからくり] 私が怒りを押さえているため(「凹の怒り」状態)、外からの怒り(凸) を引き付ける
例2
〔表面的な現象] 異性が性的関心を持って自分にまとわりつく
〔裏のからくり] 私が性欲を押さえているため(「凹の性欲」状態 ) 、外からの性欲(凸) を引き付ける
同様に、自由気ままに振る舞う人を見て、腹が立ったり憧れたりするのは、本当はそうしたい自分の欲求を押さえているからです。
普段はこのようなことを自覚していないので、たとえば他人から怒りをぶつけられた時、自分が呼び込んだとも知らず、沸騰する怒りを倍返ししたり、さらに抑えようとしたりして、悪循環に陥ります。
鏡のからくりを知っていれば、原因を相手に求めることはしなくなるので、次第に冷静に対処できるようになります。不必要なトラブルを避けることができます。
あなたの周囲の人はあなたの中の埋もれた感情・性質を映し出してくれる貴重な鏡です。
感謝して余りある存在です。
そしてあなた自身も相手の鏡になっていることをお忘れなく。
相手の鏡として、相手のぶつけてきた剌激に素直に反応する義務があります。
このように、お互いが、自分にとって必要な部分だけを相手に映しだし、その一部を取り込んであなた独自の世界を形成しているのです。
あなたが今、目にしている世界とは、あなたというフィルターを通した世界に過ぎず、人それぞれで異なっていることに気付いて下さい。
◇実践。鏡探し
職場でも家庭でも、人間関係のバランス
(鏡関係)を観察していると色々なことが判りますよ。
他の気になる人、仲のいい人とはどこが鏡になっているのか、観寒してみて下さい。
・あなたはどういう仲間(グループ)と常に接していますか?
その仲間に共通する特徴は何か、挙げてみて下さい。
・あなたの親友・パートナーの愛すべき点とはどんなところですか?
それを自分の中に見ることができますか?
・友人 ・家族・ 職場の人間に関して、腹の立つ部分、気になる性質を書き並べて下さい。
どうしてもここは変えて欲しい、と思う点は何ですか?
そのいつまでも変わらない頑固な部分は、あなたの何を映しているのでしょうか?
一見自分とは正反対と思っている相手と、どんなバランス関係にあるでしょうか?
これらを通じて、あなたはいずれ、出会うあらゆる人の中に「あなた自身」を見ることになり、何が自分で何が他人か、判らなくなってきます。
次第に「自分対他者」といった区別がどうでもよくなってきます。そんな区別は元々無かったのです。