第 5章 流れない想念にはワケがある
1 悪を避け、善を追及するパターン
繰り返しますが、観察を進めるためには、善悪判断しないことです。「判断」自体が想念であり、その想念に気付くかどうかが第 3のステップです。
次々に流れてくる想念に対する判断を保留し、「ただ見守る」ことに徹すると、奥行きが深くなっていきます。
しかし実際には、どうしても流れない想念に行き当たります。無意識に判断の山を築いてしまい、その中に埋もれているのです。観察が進んでくると、 一つの壁として感じられるでしょう。
あなたは自分の想念を観察するうちに、自分のパターンがより鮮明に見えてきたことでしょう。
・どんなガラクタでも、取っておかないと気ががすまない
・人から意見されるとヒステリックになり、10倍くらいにして切り返す
・責任ある仕事を任されるとすぐ逃げる / 眠くなる
・人の視線を感じると、すぐ「自分を馬鹿にしているのではないか」と勘繰る
・友人や仲間に嫌われないように、適当に話を合わせ、その場を取り繕う
こうした行動パターンの背景には、「人間、こうあるべきだ」 とか「こういう場合はこうした方がいい」といった、さまざまな 「価値観」「価値基準」があります。
たいていの人は、自分がどんな価値観を持っているか、そのほとんどに気付いていません。
そうした価値観は、人生のさまざまな時期に少しずつ取り入れてきたものです。自分自身の体験(たいていはつらく苦い体験) から得た教訓、親や教師から吹き込まれた教えなどといった、信念 ・信条・ こだわりが元になっています。
過去の痛い思い(トラウマ)が元になっているなら、その傷を守るための防御兵器・よろいとも言えます。
これらの価値観(善悪判断の基準)がフィルターとなって、あなたの想念・行動の選択の幅を狭めています。特定の想念を選択するパターンが強固に出来上がってしまっています。
その結果、いつも同じ現実を引き付け、同じ苦しみを繰り返すことになります。
〔例1〕
《親の教え》 将来何かあった時のために、お金は貯めておきなさい(貯金 = 善)
海外旅行 / 髙級レストランでの食事会に誘われる → 「無駄使いだ」想念に同意→《 行動 》 キャンセル
家計簿をみて、先月より2千円支出が少なかったことを知る → 「今月はよく像約した」想念に同意 → 《行動》 通帳を見ながら一人ほくそ笑む
《 行動の結果 = 現実 》 自分を豊かにするためにお金を使うことがなく、ただ所有することで安心感を得る。
〔例2]
《 教訓 》男に誘惑され、その気になったら弄ばれ、捨てられた → 男 = 悪
会社の男たちから、気軽に飲み会に誘われる → 「私を誘惑しようとする口実だ」想念に同意 → 「絶対にOKするもんか」想念に同意 → 《 行動 》 ヒステリックに誘いを拒否
《行動の結果 = 現実 》 不快な男たちに悩まされることのない世界安住する一方、さまざまな出会いを通じた自分の新たな側面の発見 ・開発の可能性が少なくなる。
他にも、小さい頃家が貧しかったために、同級生からいじめられた経験がある場合、裕福であること = 善となり、金銭に異常なまで執着するでしょう。
フリーター時代に病気になり、たちまちクビにされた経験があれば、定職と保険に執着するかもしれません。
このように、あること(悪と判断される事態)を避けようとして、それと反対のもの(善)を追求するパターンが出来上がります。
皆さんはそれを当然のことのようにやっています。このふるい分け(防御) フィルターのおかげで、あなたは 一時的に安全を確保できます。
しかし、色々な制限を自らに加えるため、あなたは不自由な世界に閉じこめられるのです。