住職のひとりごと

住職のひとりごと

その1

「天国」?

佛教では「天国」という場所はありません。テレビやラジオ雑誌等で、亡くなった人が「天国から見守っている」とか「亡くなって天国へいった」などと天国天国!と報道していますが、佛式でお葬儀をしておいて「天国」に往った。はありません。

「天国」とはキリスト教の用語です。同じようなことばでは佛教では「天上界」という世界がありますが、ここはまだ六道輪廻の世界の一つで苦しみの世界から脱した所ではありません。

佛教では六道を超えた世界に往って苦がなくなった世界即ち「浄土」に往くのが佛教徒なのです。寺の住職は亡くなられた信者のお方に「お浄土」にお送りするためにお葬儀をしています。

佛教徒なら[浄土から見守っている」、「亡くなって浄土へ往った」でしょう。決して「天国」に送るために儀式を行っているのではありません。

マスコミは宗教的な知識教養は本当に無知で、宗教的用語を勉強していないのでしょうか?、「天国」「天国」といってますが、もっと勉強して下さい。佛教でお葬儀をしておいて「天国」とはキリスト教も迷惑な話でしょう。マスコミの皆さん、軽々しく

「天国」とはいわないで下さい。

日本のマスコミは本当に宗教的知識教養に欠けていると痛感しています。

 

その2

「懺悔」

「懺悔」と書いて何と読むでしょう?たいていの人は「ざんげ」と読むでしょう。またパソコンの変換も「ざんげ」でしか「懺悔」と変換できません。佛教では「さんげ」でにごりません。佛教が日本に入ってきて千年以上経ち「さんげ」と言ってきたのに僅か百年で「ざんげ」と言われるようになりました。これはキリスト教が佛教との区別するために敢えて「ざんげ」と表記したのでしょう。それが全国的に普及して「ざんげ・ざんげ」という言い方が蔓延してきました。そしてキリスト教徒でもない人までが「ざんげ」と言っています。これもマスコミが「ざんげ」と言いふらしているからでしょう。佛教徒なら「さんげ」と言いましょう!まだ救いがあるのが山岳霊地への修行時に唱えているときの「ろっこんしょうじょうさんげさんげ」でしょうか。

再び、日本のマスコミよ!もっと勉強しなさい。

 

その3

「お客様は神様です」

 いつの間に聴衆である人間が神様になったのでしょうか?芸能の古く(古典芸能)は、例えば清水の舞台などで、芸能を見に集まって来られた神佛に芸を奉納し、それにあやかって人々が芸を観る。というのが元々の意味です。ですから「お客様は神様佛様です」と神佛に奉納することが芸能の第一義でした。言い換えれば「神様佛様がお客様です」、のほうが誤解を受けない言い方かも分かりません。今はもう芸能(古典芸能は名残はありますが)においては神佛はどこかに追いやり、ただただ人間の聴衆にのみ披露しているということになっているような。くれぐれも、人間の聴衆は決して神様ではないですよ。演者さんが神佛に奉納している芸を人間である聴衆がそれにあやかって観させていただいているのです、というのが本来の意味です。

 

その4

「お歳暮・お中元」

お歳暮・お中元といえば昔から贈ったり贈られたりという社交儀礼のひとつです。それによって日頃お世話になっていることの感謝の意をを表すものとして行われています。日本での「お中元・お歳暮」の起源はどういうところから始まったのでしょうか。これらが普及したのは江戸時代に入ってからといわれてます。武士階級や大きな商店(大店)から始まったようです。特に大店の主人が店同士の付き合いで半年間お世話になりました。この先半年間もよろしく。ということで贈り物をお届けする、というものです。それはどなたに何をというのが肝腎です。一見相手先の主人に贈り物をするようですが、実はその店のお佛壇への「御供」です。世話になった先代・先々代等に高級な「菓子類」(御佛壇ですから肉魚類はダメです)を御供えして下さい。という意味です。ですから持参した人はご本尊様・ご先祖さまに対しては「ほんの粗菓でございます」と挨拶したものです。あくまでも佛さまご先祖さまは人間よりも上のお方ですから贈るときはへりくだった言い方をします。いつの間にかお佛壇(本尊さまご先祖さま)への御供えではなしに対人間同士のやりとりになってしまい、高級菓子をはじめとして魚介類から精肉類・酒類等、種類にこだわらない品々を贈るようになりました。また人間同士のやりとりですから、いわゆるへりくだった「粗菓ですが、とか、つまらないものですが」等の言葉の言い方がおかしい、ということになってきました。百貨店などは「お中元・お歳暮商戦」などと宣伝をしてとにかく品物を売りたいばかりにコーナーを作って売り出していますが、人と人とのプレゼントだけでいいのでしょうか?亡くなられた先代・先々代の方々に「どうぞ御供えして下さい」という意味で「お歳暮・お中元」を贈っている人はどれくらいおられるでしょうか?