古民家再生
板垣組が初めて手掛けた古民家のリフォームについてご紹介します。
こちらは能代市鳥形地域のとある一軒家です。
リフォーム工事を終えたばかりの様子です。
まさに秋晴れの青空に包まれた穏やかな一日となりました。
さっそく完成状況を見て行きましょう。
このダイナミックな梁の架構をご覧下さい。(▼下の写真)
囲炉裏の煙にいぶされて真っ黒になっています。
いかにも古民家らしい骨組みがあらわになりました。
この吹き抜けの下に、新たにキッチンスペースを設けました。
キッチンはお施主様のご要望でカウンターテーブル付きとなりました。
料理や食事の時間には、対面で会話をしながら楽しくお過ごし頂けます。
頭上に吹き抜けの広がりを感じながら、ゆったりとした時間が流れます。
なぜここにキッチンを配置したのか?
それには理由があります。
隣接する和室を見渡せる位置となっています。
和室を「和リビング」と称して、ここに人が集まった時に開放的に一体的に使えるようにしたいと考えました。
キッチンと和室がつながることで、ご家族のにぎやかな団らんの場となります。
お施主様は言いました。
「毎日仏様を拝むことができていい。」と。
以前は仏壇から離れた所に生活の拠点があったので、今回の工事によって故人・先祖との距離がぐっと縮まりました。
こちらはリビング(居間)スペースとなります。(▼下の写真)
素敵なソファーセットが配置されました。
テレビを見ながらくつろいだり、
ご家族が一番安らぐ場所です。
また、掃き出し窓から外部(駐車スペース)へとつながったことで便利になりました。
お買い物の荷物などをパッと運び込めます。
LDKは、奥行が約10m(5間半)もあり、キッチンを中心に回遊性のある動線となっています。
敷居の段差も解消しました。
お施主様が「ほとんど利用していない。」と言っていた和室の続き間は、広々としたLDKに生まれ変わりました!
200年も経過した古民家が、現代の生活の器に変わり、そこで快適な生活が営める。
古民家を再生させることで新しい人生が始まります。
キッチンの様子です。
シンクと天板は人造大理石にしました。
調理器具はガス台を選択しました。
天板から腰壁を20cmほど立ち上げて、その裏にカウンターテーブルがあります。
吊り戸棚は無いのでオープンで開放的なキッチンとなりました。
キッチン上部の梁を利用して、ダクトレールを流し、ペンダントライトを3つ下げました。とても可愛らしいガラスの照明器具です。まるでワイングラスを逆さまに吊るしたようなデザインです。
キッチン脇のスペースです。
こちらは西日が射し込みます。
ちょっとした家事や作業スペースとなります。
テレビ配線は設けていませんが、その代わり読書をしながらソファーでゆっくりくつろぐのもいいでしょう。
キッチン背後の隣室は納戸(収納部屋)となっておりますが、実は階段室を兼ねています。
この家は平屋建てですが、先祖が小屋裏収納としてその昔使っていた空間があって、そこを部屋として使えるように改造することになりました。
『ロフト部屋』それは、お施主様が叶えたい夢のひとつでもありました。
階段を上がってきた所です。
茅葺き屋根の傾斜なりに壁が斜めになっています。
天井の高さは2.1mです。
ベッドを置いて寝室となりました。
とても素敵な空間です。
奥に見える太鼓梁の影は、洋服掛けなどの収納スペースとなりました。
収納スペースを照らす灯りは、お施主様の好みで雲の形の照明器具を選びました。
アクセントで一面を水色の壁紙にしたのでちょうど空に浮かぶ雲のようです。
ロフトの壁はオープンにして、吹き抜けとつながっています。
古民家の力強い骨組みを間近で見ることができます。
見下ろすとキッチンスペースがあります。
1階と2階がつながること…
それはプライバシーの確保よりも、ご家族がお互いに気配を感じることができる安心感を優先するということ。
そして冬場は暖房の暖気が上がって、ロフトを暖めてくれるというメリットがあります。
NHKのマスコットキャラクター『どーもくん』
どーもくんが乗っているのは日本の伝統的な在来軸組工法の『通しほぞ&くさび』の部分。
なんとも微笑ましい光景です。
ベッドのかたわらには子供の写真が飾られていました。
お客様の喜びは私たちにとっても喜びであり、感謝されると嬉しくなり、それが自信に変わり、仕事をする上でとてもとても励みになります。
1階に戻りまして、洗濯物干しスペースと、屋外ウッドデッキスペースです。
天気の良い日は外に干した方が乾きが早いでしょう。屋根の軒先が覆い被さるくらい伸びているので、急な雨でも心配はいりません。
和室側から見た玄関スペースです。
和室の出入口の建具は取っ払い、玄関からオープンな間取りとしました。
空間を広く見せることは、ゆとりのある暮らしにつながります。
玄関の床はコンクリート金ごて仕上げとしました。
間取りは玄関脇からシューズクロークへ続きます。
どちらも1坪ほどの広さがあります。
シューズクロークは来客時の目隠しのために建具を取り付けました。
風除室内部の様子です。
お花を飾って華やかになりました。
お施主様が購入した郵便ポストはこの古民家のイメージにぴったり合います。
実はこの玄関ドアは、既存の梁の関係から小さいサイズでしか収まらずアパート用ドアを選択しました。
レバーハンドルが標準仕様ですが、プッシュプルハンドルに変更しました。
玄関のお外の様子です。
風除室の外壁は板張りとしました。
風除室から奥のポーチへと続いていきます。
雨に濡れずに移動できるように配慮しました。
元々は馬屋であった空間です。
時代とともに馬屋から車庫へ、車庫から居住空間へ、
そして再び駐車スペースへと用途を変えました。
南側正面の外観です。
こちらには土間の作業スペースがあります。
その入口に日除けのオーニングを取り付けました。
手動で簡単に傘を開くことが出来ます。
特に夏場の強い日差しを遮り、室内の温度上昇を防ぎます。
それよりも、店舗的なイメージの方が強いかも知れません。
将来的には、お施主様が育てた花や野菜などを販売できるスペースとして活躍しそうです。
18帖ほどある土間コンクリート床の広い作業スペースです。
元々は7.5帖の和室に縁側が付き、隣に7.5帖の寝室(畳敷き)がありました。
お施主様が打ち合わせ当初から作業場所が欲しいとおっしゃっていましたので、
今回思い切って全部取り壊し、このような提案をさせていただきました。
元々あった寝室の押入は、作業スペース用の収納として新しくなりました。
お施主様の作業場所として、新たな時を刻みます。
可愛いぬいぐるみたちも一緒です。
サボテンを見ると、時が止まったかのように感じるの私だけでしょうか?
ゆっくりと流れていく時の中で、代々受け継がれてきた古民家は、
またこうして親から子へと徐々に少しずつ受け継がれてゆく。
形を変えながら…。
こちらは東側、駐車スペースになります。
茅葺き屋根の軒先が跳ね出しています。
馬屋が駐車スペースへと置き変わった部分です。
新たにテラスドアを取り付けて、雨に濡れずに荷物を運び出すことができます。
そのテラスドアへと続く廊下部分です。
内装は白色をベースに改装しまして、明るい空間となりました。
数年前に改装したトイレ空間は残し、ドアと便器を新しく交換しました。
勝手口からリビングへ続く廊下部分です。
断熱区分として間仕切るためにドアを取り付けました。
ドアは素通しのガラス付きです。
そして、洗面脱衣室、浴室へと続きます。
お施主様がリフォーム工事をして嬉しかったこと。
・浴室入口前に洗濯機を置けるようになったこと。
・浴室に外部と接する窓を設置できたこと。
・脱衣室が広くなったこと。
構造上、抜けない柱も邪魔にはなりません。
一般的な住宅の間取りでは当たり前のことも、お施主様の暮らしにとっては大きな変化でした。
土間の作業スペースにあった寝室から、こちらの部屋へ引っ越ししました。
以前は子供部屋でしたが、お子さんが成人して家を出た後は物置部屋となっていました。
寝室の収納としてのクローゼットや、勝手口からの明かり取り窓(樹脂サッシ)を追加しました。
玄関を入って真正面に見える和室です。
12.5帖ほどあります。
建具の上部の鴨居は、いわゆる差し鴨居と言って丈夫な梁せいのある構造材が使われています。
差し鴨居から上の部分、壁と天井の板張りは既存の状態のままです。
昔の畳は処分しまして、この度新しく琉球畳の仕様にしました。90cm角の寸法で畳の縁はありません。畳表は和紙を使い、色は2色ですが、敷き方を変えると4色に見えるから不思議です。
遊び心がありながらも、先祖を敬うとても神聖な空間となりました。
和室の照明器具と、神棚を新しくしました。
仏間の右側の壁にはガラス窓を設置して明かり取りとしました。
お施主様から、先祖の命日を記した過去帳を拝見させていただきました。
文化4年(1807年)までさかのぼることが出来ます。
撮影の合間に休憩タイムです。
ホットコーヒーで一息つきました。
実はこのカウンターテーブルがお気に入りでして、弊社がおすすめするメラミン化粧板張りの仕上げとなっております。
熱にも水にも強い素材です。
リビングから廊下へ抜ける部分です。
アウトセット引戸を配置しました。
太鼓梁の下端は床上1,850mmしか取れませんでした。
ちょうどアーチになっていた事とお施主様の身長を考慮して、そのまま使わせていただきました。
何と言ってもこの眺めが格別です。訪れたお客様もこの席が落ち着き、居心地がいいと言ってくれるそうです。
古民家再生のエッセンスが、この空間に凝縮されていると言っても過言ではありません。
この度、ご縁があり、一生に一度あるかないかの古民家再生のお仕事に携わることが出来ました。
長い歴史の中で、重要な出来事であったと思います。
日本の家屋がスクラップ&ビルドを繰り返している。短命な住宅が多い。
時代の真逆を行く作業でした。
先人の教えを学び、物を大切に使う日本人の心を取り戻したような気分です。
改めて貴重なお仕事をいただいたお施主様に感謝すると共に、お施主様ご家族の末長いご繁栄を御祈念申し上げます。