異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
最終章では、Rebootされた王国のその後と、ハルキが戻ってきた現代の世界がつながります。
最終章 目が覚めたら、現代だった
町は変わっていた。
畑には緑が戻った。草に埋もれていた旧街道は、また人が歩くようになった。空き家には灯りがつき、市場には笑い声が増えた。
若者が戻り始めた。
老人たちは相変わらず文句を言っていたが、前より少しだけ楽しそうだった。
無限エネルギー炉は、応接間の飾りではなくなった。水路へ、保存庫へ、工房へ、通信塔へ。静かに力を送っている。
この王国に、王様はいない。
この王国に、王女様もいない。
でも町は回っていた。
みんなが決めたルールで。みんなが決めた役割で。みんなで決めた未来で。
夜、宿屋には人が集まっていた。
マーサ婆さんが料理を置く。
「今日は祝いだからねぇ。食べな」
リオは笑ってハルキに声をかけた。
「次の行程表どうする?」
ガルドは橋の向こう側の開拓地の話をし、セドリック爺は通信網を整理したいと言った。リシェルは永久魔導炉の研究を、クロードは市場拡張案を、ガイアスは防衛協定を、エルナは種子保存庫を進めようと言う。
みんなが一斉に話し始めた。
うるさかった。
昨日まで静かだった町が、嘘みたいだった。
ハルキは少し笑い、窓の外を見た。夜の町には、遠くまで灯りが見えていた。
もう大丈夫だな。
そう思った。
その夜、ハルキはベッドに入った。
不思議と眠かった。目を閉じると、外から笑い声が聞こえる。風が吹き、音が少しずつ遠くなっていく。
……。
ピッ。
ピッ。
ピッ。
ハルキはゆっくり目を開けた。
白い天井。消毒液の匂い。窓の外には、車、信号、人。
病院だった。
しばらく動けなかった。
身体を起こすと、そこは病室だった。机の上に花があり、時計があり、スマホがある。
交通事故。
全部思い出した。
「夢……か?」
静かな部屋で、ハルキは窓の外を見た。車が走り、人が歩く。いつもの世界だった。
その時、机の上に小さな紙があることに気づいた。
知らない紙だった。
ゆっくり手に取る。そこには見覚えのない文字が書かれていた。
いや。
見覚えがあった。
リオの字だった。
次の行程表、作った。
今度は橋の向こう側だ。
紙の下には、小さな袋が置いてあった。開くと、中には種が一粒入っていた。
ハルキはしばらくそれを見ていた。
窓の外を見る。人、車、建物、信号。
そして小さく笑った。
「……こっちも、結構止まってるな」
窓の外で風が吹いた。
ハルキはスマホを手に取り、メモを開いた。
新しいページを作る。
そして、タイトルを書いた。
異世界Reboot。
風が吹いた。
物語は終わった。
でも本当のRebootは、まだ続いていた。
異世界Reboot 小説版 完
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
完

