異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
第11章では、王様を待つのではなく、国々が持っているものを出し合い、合意したルールで回る新しい世界の形が見えてきます。
第11章 王ではなく、合意したルールで回る世界
長老会の建物は、今まで見たことがないくらい騒がしかった。
北の農業国家。南の山岳国家。東の商業国家。西の技術国家。次々に使者が来ていた。
広場には荷車が並ぶ。見たことのない服。見たことのない武器。見たことのない魔導具。
町の老人たちは落ち着かなかった。
狙われている。無限エネルギー炉がバレた。王国が終わる。門を閉めろ。
ガルドも険しい顔だった。
「ハルキ。このままでは奪われるぞ。どうする」
ハルキは黙って窓の外を見ていた。
広場では各国の代表が言い争っていた。
エルナは農地支援が先だと言い、山岳国家の将軍ガイアスは防衛が先だと言う。技術国家のリシェルは永久魔導炉の研究が最優先だと叫び、商業国家のクロードはまず契約だと主張する。
完全にまとまっていなかった。
「終わってるな」
リオがつぶやく。
「いや、まだ始まってないだけです」
ハルキは立ち上がり、広場の中央へ歩いていった。全員が見る中、大きな紙を広げる。
中央に円。そこから線が伸びている。
リオが言った。
「また行程表か」
「違います。これは地図です」
中央にはこう書かれていた。
みんなが持っているもの。
北の農業国家は、食料と種。東の商業国家は、流通と商売。西の技術国家は、魔導技術。南の山岳国家は、鉱物と防衛。老いた王国は、無限エネルギー。
全員が黙った。
「皆さん、足りないものばかり見ています。でも、持っているものもあります」
ハルキは紙を指差した。
「全部を一つの国で持とうとするから、奪い合いになります。足りないものを埋めようとするから戦争になります。だったら、持っているものを分ければいい」
クロードが笑った。
「簡単に言うな。誰が信用する?」
ハルキは少し笑った。
「だからルールです」
紙の下に、いくつもの言葉が書かれていく。
奪わない。囲い込まない。独占しない。困った時は助ける。情報を隠さない。食料は止めない。エネルギーは共有する。話し合いで決める。
ガルドが見ていた。エルナも、リシェルも、ガイアスも、クロードも見ていた。
長い沈黙のあと、最初に口を開いたのはガルドだった。
「……王がいなくても、回るのか」
ハルキは笑った。
「王様がいることは悪くありません。でも、王様がいないと止まる方が危ないです」
風が吹いた。広場の旗が揺れる。
ガルドは静かに言った。
「そうか。待っていたんだな、わしらは。ずっと。誰かを」
ハルキは頷いた。
ガルドは、もう一度広場を見た。
「でも違った。待つものじゃなかったんだな。作るものだったんだな」
遠くで鐘が鳴った。
静かな音だった。
今までと少し違う音に聞こえた。

