異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
第10章では、掃除と整理によって町が少しずつ動き出し、外の国々との関係も変わり始めます。
第10章 奪い合う国々を、分かち合う国々へ
掃除は、思ったより大騒ぎになった。
長老たちは文句を言った。何でこんな年になって草刈りなんだ。昔は若い者がやっていた。腰が痛い。暑い。
けれど三日後、町の声は変わっていた。
こっちにも道がある。空き家がまだ使える。倉庫の奥から農具が出てきた。これならまだ使える。橋の設計図みたいなものが見つかった。
町中が騒がしくなった。
ハルキは少し離れた場所で、それを見ていた。
その時、町の鐘が鳴った。
ゴォォォォォォン!!
門番が走ってくる。
「北の農業国家! グランベルの使者だ!」
町の門の前には、大きな荷車が並んでいた。その後ろには鎧を着た兵士。そして、一人の女性。
金色の髪。緑色のマント。腰には短剣。年は二十代くらいだろうか。静かにこちらを見ていた。
「私はエルナ・グランベル。グランベル王国第一王女です」
長老会がざわついた。王女様。王族。本物か。そんな声が飛び交う。
ガルドは姿勢を正した。
「ようこそ。本日は何用で」
エルナは静かに言った。
「確認です。種を買う意思はありますか?」
部屋の空気が止まった。
長老たちは顔をしかめた。百倍の値段を払えというのか。足元を見るにも程がある。ぼったくりだ。
エルナは怒らなかった。ただ、静かだった。
「そう思うなら、それでも構いません。ですが、私たちも、生きるために売っています」
彼女は続けた。
グランベルには食料と種がある。だが、お金がない。武器も足りない。最近は盗賊も増え、種と食料を狙われている。売らなければ守れない。けれど、売りすぎれば来年の畑がなくなる。
長老たちは黙った。
ハルキは窓の外を見て、少し笑った。
「何笑ってんだ?」
リオが聞く。
「やっぱり同じなんだなと思って。この国も、向こうの国も、困ってることは違うけど、足りないものがある」
その時、セドリック爺が別の紙を持って走ってきた。
「ハルキ! 大変だ! 今度は南の山岳国家から使者だ!」
門の外を見ると、今度は重武装の騎士団が来ていた。巨大な荷車には山の紋章がある。
ガルドがうめいた。
「何故だ……」
セドリック爺も首を振る。
「分からん!」
その中で、ハルキだけが静かだった。
「……始まったな」
リオが聞く。
「何が」
「王国再建じゃありません。国同士のRebootです」
風が吹いた。
遠くで、無限エネルギー炉が静かに光っていた。まるで何かが動き出したみたいに。

