お知らせ

2026-05-04 14:18:00
第9章 町全体のReboot行程表

異世界Reboot 小説版

――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――

はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。

第9章では、町の現在地をもとに、ハルキが「王国Reboot行程表」を作り、止まっていた町を動かす順番を示していきます。

第9章 町全体のReboot行程表

翌朝、長老会の建物は静かだった。

いつもの怒鳴り声がない。机の上には、大量の紙が並んでいた。

人口、畑、空き家、橋、食料、種、街道、若者、魔導炉。この町にあるもの。足りないもの。使われていないもの。そして、見えなくなっていたもの。

ハルキはその中央に立ち、大きな紙を壁に貼った。

リオが首をかしげる。

「何だこれ?」

ガルドも目を細めた。

「地図か?」

ハルキは首を振った。

「違います。行程表です」

紙の上には、大きくこう書かれていた。

王国Reboot行程表。

その下には、目的が書かれている。

食べる。住む。動く。交換する。伝える。守る。

部屋が静かになった。

「この町は、力がなかったわけではありません」

ハルキは長老たちを見た。

畑もある。道もある。空き家もある。人もいる。技術もある。無限エネルギー炉もある。

「止まっているのは、能力ではなく、順番かもしれません」

部屋がさらに静かになった。

誰も笑わなかった。誰も怒鳴らなかった。

「王様、橋、畑、若者、食料、通信、市場。全部大事です。でも、全部を同時に解決しようとすると、何も動きません。だから順番を決めます」

ハルキは一番上に丸を書いた。

①掃除する。

全員が固まった。

「……は?」

リオが思わず声を漏らす。

「まず掃除です」

長老の一人が立ち上がった。王位継承はどうする。種はどうする。獣の被害は。橋は。

ハルキは落ち着いて答えた。

「全部、大事です。でも、まず掃除です」

ガルドが低い声で聞いた。

「なぜだ」

「見えないからです」

ハルキは行程表を指差した。

草で道が見えなかった。荷物で倉庫が見えなかった。記録が散らかっていた。空き家も、誰のものか分からなかった。食料が何日分あるのかも、種がどれだけ足りないのかも、分かっていなかった。

「何があるか分からない。何が使えるか分からない。何を捨てるべきか分からない。だから最初は掃除です」

リオが笑った。

「そんなので変わるのか?」

ハルキは即答した。

「変わります」

そして、行程表に次々と書き込んでいった。

道を確認する。草刈り、旧街道確認、崩れた橋の確認、地図作成。

倉庫整理。何があるか確認し、壊れている物、使える物、本当に必要な物を分ける。

空き家確認。住める家、修理が必要な家、開拓者住宅の候補を分ける。

食料と種。食料残量、種購入、畑確認、作れる人の確認。

人の役割。若者へ役割を渡し、老人は知恵袋になり、開拓者チームを作る。

無限エネルギーの利用。水路、保存庫、工房、通信。

そして最後に、ルール作り。王待ち、王様探しをいったん止める。合意で決定する。役割を明確にする。

書き終えた時、部屋は静まり返っていた。

しばらくして、リオが言った。

「……王様は?」

「後です」

「え?」

「王様を決めても、畑は増えません。橋も直りません。食べ物も増えません。若者が戻るわけでもありません。町が動くとは限りません」

ハルキは行程表を見た。

「王様より先に、Rebootです」

ガルドは紙を見ていた。何も言わない。ずっと見ていた。

やがて、小さくつぶやいた。

「……掃除か」

「はい」

「そんな所から始まるのか」

ハルキは少し笑った。

「大体そうです」

窓の外で風が吹いた。

草が揺れる。遠くで見えなかった石畳が、また少し見えた。

道は、消えたわけではなかった。

見えなくなっていただけだった。


次回予告

第10章「奪い合う国々を、分かち合う国々へ」へ続きます。

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