異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
第5章では、町に「本当はあるのに使われていない力」が見えてきます。
第5章 長老会の応接間に、最強装備が飾られていた
「討伐できる人がいない?」
ハルキが聞き返すと、息を切らした男は何度もうなずいた。
森の開拓地に魔物が出た。畑の近くで、放っておくと作物もやられるという。
リオは斧を持ち上げた。
「くそっ……行くしかないな」
だが、男は困った顔をした。ギルドの武器庫には、もうまともな物が残っていない。革鎧はぼろぼろで、弓も壊れている。
リオは顔をしかめた。
「またかよ……」
「武器がないんですか?」
ハルキが尋ねると、リオは言いにくそうに答えた。
「少ない。いや、あるにはある。でも……来い」
二人は長老会の建物へ戻った。
重い扉を開け、中に入った瞬間、ハルキは足を止めた。
広い応接間だった。赤い絨毯。巨大な机。壁には古い絵画。そして、壁一面に武器が飾られていた。
大剣。槍。弓。鎧。盾。見たこともない魔導具。
中央には、青白く光る巨大な結晶があった。静かに、ゆっくりと光っている。
「……何これ」
「長老会の応接間。王国の宝らしい。昔の英雄が使った装備。大事な物だからって」
「使ってないんですか?」
「使わない。失ったら困るから。壊れたら困るから。そう言ってる」
ハルキは壁を見上げた。どの武器も綺麗だった。綺麗すぎた。傷がない。汚れがない。現場で使われた形跡がない。
後ろから声がした。
「触るな」
ガルドだった。杖をつきながら、ゆっくり歩いてくる。
「王国の宝だ。代々守られてきたものだ。簡単に持ち出していい物ではない」
「でも現場は?」
ハルキが聞いた。
「森には魔物が出てるんですよね。若い人も少ない。装備も足りない」
ガルドは壁を見た。
「だから守っている。失えば終わりだ。これだけは残さなければならん。王国の誇りだからな」
数秒、沈黙が落ちた。
ハルキは中央の巨大な結晶を見た。青白く、静かに光っている。
「この町は、力が無いんじゃない」
全員がハルキを見る。
「力の置き場所を間違えてます」
空気が止まった。
ハルキは壁の武器を見た。
「飾るための剣なら、町は守れません。使われない道具は、ただの飾りです」
そして中央の結晶を指差した。
「それで、あれは何ですか?」
長老の一人が答えた。
「灯りだ。昔からある魔導灯だ。応接間が暗くならんようにするものだ。便利だぞ」
ハルキは、しばらく黙っていた。
結晶は部屋全体を照らしていた。暖かい空気。動いている魔導時計。隅で動く古い魔導具。すべてが、この結晶につながっている。
「……これだけ?」
誰も答えなかった。
その時、部屋の隅で書類を読んでいたセドリック爺が急に顔を上げた。眼鏡がずれ落ちるほど慌てている。
「待て……待て待て待て待て……」
セドリック爺の手は震えていた。
「そんな……そんなはずは……」
「どうしたんですか?」
ハルキが尋ねると、セドリック爺は青ざめた顔で結晶を指した。
「それ……ただの灯りじゃないぞ……」
