異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
第4章では、若者が町を出ていく理由と、「人が報われない仕組み」が見えてきます。
第4章 若者が報われない町
翌朝、ハルキは宿の窓から外を見ていた。
朝日が町を照らしている。遠くでは老人たちが畑へ向かい、井戸へ水を汲みに行く人、市場の準備をする人、掃除をする人がいる。
町は動いていた。
でも、やはり何かがおかしい。
若い人が少なすぎる。
昨日もそう思った。今日もそう思う。見間違いではなかった。
下からリオの声が聞こえた。
「朝飯食ったら来い。見せたいもんがある」
数分後、ハルキとリオは町の外れを歩いていた。古い家が並んでいる。閉じた店、使われなくなった畑、そして大量の空き家。
「……多いですね」
「昔は埋まってた。商人も、職人も、旅人も、開拓者もいた。子どもも多かった。今はガラガラだけどな」
空き家。空き家。また空き家。
ハルキは聞いた。
「若い人は、どこへ?」
リオは足元の石を軽く蹴った。
「王都、商業国家、技術国家、農業国家。色々だよ。残っても意味ないからな」
「意味?」
「仕事はある。むしろ多い。人が少ないからな。でも、頑張っても変わらない。責任は増える。失敗したら怒られる。成功しても、自分のものにならない。決めるのは長老会。若い奴は手伝いだけ」
リオは少し笑った。
「俺も出て行く予定だったし」
「何で残ったんですか?」
「空から変な人が落ちてきたから」
ハルキが黙ると、リオは「普通、気になるだろ」と笑った。けれど、その顔はすぐに真顔へ戻った。
「本当は嫌いじゃないんだよ。この町。山もある。畑もある。静かだし、生まれ育った場所だし。でも、ここで生きてる未来が見えない」
ハルキは空き家を見ていた。窓は割れていない。屋根も崩れていない。少し手を入れれば住めそうな家ばかりだった。
しばらくして、ハルキは言った。
「若者が逃げたんじゃないですね」
リオが顔を上げる。
「頑張っても、役割が増えるだけ。責任が増えるだけ。未来が増えない。だから出て行った」
リオは黙った。
「若者が悪いんじゃない。老人が悪いんでもない。仕組みですね」
風が吹いた。草が揺れる。
ハルキは町を見た。
「若者が報われない町は、未来も報われなくなります」
遠くで鐘が鳴った。
ゴォォォォォン……。
リオがため息をついた。
「……また長老会か」
その時、町の方から誰かが全力で走ってきた。
「リオ! 大変だ! 森の近くにまた魔物が出た!」
