異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
第2章では、ハルキがたどり着いた王国の姿が少しずつ見えてきます。
第2章 王様も王女様もいない王国
若者に案内されて、ハルキは小高い丘を登った。
草の向こうから町が見え始める。石造りの家。古い城壁。煙突から上がる煙。遠くに見える城。
町としての形は、ちゃんとあった。人もいた。
けれど、最初に思ったのは、静かすぎる、ということだった。
歩いている人が少ない。そして、若い人がほとんどいない。畑で作業しているのも、市場で店を開いているのも、道端で話しているのも、宿の前で座っているのも、ほとんどが老人だった。
「若い人は?」
ハルキが尋ねると、若者は苦笑した。
「いない。正確には、少しはいる。でも、大体は出て行った。王都とか、商業国家とか、技術国家とか。ここにいても仕方ないからな」
「住む理由が無い?」
若者は少し驚いた顔をした。
「……そう。なんで分かった?」
ハルキは町を見ていた。家はある。店もある。道もある。けれど閉まっている。使われていない。人がいない。
何かが無い。
いや、何かが多すぎるのかもしれない。
宿屋の前を通った時、ひとりの老婆が顔を出した。
「リオ! 帰ったのかい!」
若者――リオが笑った。
「マーサ婆さん。客連れてきた」
マーサ婆さんはハルキを見て、何でもないことのように言った。
「旅人かい? 今日は無料でいいよ。どうせ空いてるからねぇ」
宿の中は広かった。広すぎるほどだった。テーブルも椅子も大量にある。二階もある。けれど、客は誰もいない。
「昔は満室だったんだよ。商人が来てねぇ、旅人が来てねぇ、冒険者が来てねぇ。王様もいた。賑やかだったよ」
マーサ婆さんは笑ったが、その笑いの奥には、長い時間をかけて静かになってしまった町の寂しさがあった。
その時、町の中心から鐘が鳴った。
ゴォォォォォン……。
リオが嫌そうな顔をした。
「……長老会だ。勇者様が来たって、多分騒いでる。行くぞ。面倒なことになる前に」
「だから、勇者じゃないんだけど」
「じゃあ何なんだ?」
ハルキは少し考えた。
「ハルキReboot事務所です」
リオは、さらに分からないという顔をした。
「……何?」
「いや、俺もよく分かってない」
町の中心へ向かう途中、ハルキはふと立ち止まった。広場の中央に、大きな王様の像があった。台座にはこう刻まれていた。
『未来は、王が導く』
ハルキはしばらくその文字を見ていた。
そして小さく言った。
「……違う気がするな」
