異世界Reboot 小説版
――勇者ではなく、行程表で老いた王国を再起動する――
はるきReboot事務所の考え方を、異世界の王国を舞台にした読み物として再構成した物語です。
勇者でも、魔法でもなく、「現在地」と「道順」を整えることで、止まった王国をもう一度動かしていきます。
第1章 目が覚めたら、草に埋もれた道の上だった
ブレーキ音が聞こえた。
キィィィィィ――――ッ!!
白いライトが視界いっぱいに広がる。ハンドルを切る。けれど、もう間に合わない。
次の瞬間、身体がふわりと浮いた。
そこで、ハルキの記憶は切れた。
……。
風の音がした。
草が揺れる音がした。遠くで鳥が鳴いていた。
ハルキは、ゆっくりと目を開けた。視界に入ってきたのは、病院の白い天井ではなく、どこまでも青い空だった。雲がゆっくり流れている。
「……病院じゃないな」
起き上がろうとすると、背中に硬いものが当たった。石だろうか。手で草をどけると、そこには古い石畳があった。割れて、土に埋もれ、ところどころ苔も生えている。
けれど、不思議なことに、それは完全に壊れているわけではなかった。
草で見えなくなっているだけだった。
ハルキは少し先まで草を押し分けた。石畳は続いていた。もっと向こうへ、ずっと先へ。
「……なるほど」
誰もいないのに、口から言葉が出た。
「道が無いんじゃない。見えなくなってるだけか」
その時だった。
草むらが大きく揺れた。数人の足音が近づいてくる。
「いたぞ!」
「こっちだ!」
「人だ!」
革鎧を着た若者が飛び出してきた。年は二十歳くらい。肩には斧を担いでいるが、斧は錆び、靴もぼろぼろだった。
若者はハルキを見るなり、目を見開いた。
「ほ、本当にいた……」
後ろにいた男も息をのんだ。
「長老会の言ってた通りだ。空から勇者様が来るって……!」
「……は?」
ハルキが返すより先に、若者はハルキの両肩をつかんだ。
「助かった! もう王国が終わるところだったんだ!」
若者は、息つく暇もなくまくし立てた。
王様はいない。王女様もいない。王位継承者もいない。橋は壊れている。若者は減っている。畑も減っている。種もない。魔物も出る。長老会も揉めている。あと数年で終わると言われている。
ハルキは黙って聞いていた。
数秒後、静かに言った。
「……一個ずつお願いします」
若者は、きょとんとした顔をした。
ハルキは草に埋もれた石畳を見た。さっき見つけた道は、まだ足元から遠くへ続いている。
「順番を間違えると、多分止まります」
風が吹いた。
草が揺れ、埋もれていた石畳が少しだけ見えた。まるで誰かが、ここから始めろ、と言っているみたいだった。
