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2025/10/12

水を縫う

水を縫う

「男なのに」刺繍が好きな弟。
「女なのに」かわいいものが苦手な姉。
「愛情豊かな母親」になれなかった母。
「まっとうな父親」になれなかった父とその友人。
「いいお嫁さん」になるよう育てられた祖母。
"普通の人なんていない。普通の家族なんてない。" (帯)

"好きなものを好きじゃないふりをしたり、好きじゃないものを好きなふりをするのは違う。"と、結婚が決まったけれどウェディングドレスを着たくない姉に、ドレスを縫ってあげたいという弟。男の子なのに刺繍なんて、とそれを理解できない母親に、「好きなものがちゃんとある。それがあの子の芯になる。」と励ます祖母。
家族とはいえ、いつも思いが同じになるとは限らない。家族じゃないとはいえ、思いが違うとは限らない。いま思い出せる自身のいざこざをひとつ振り返って、もしかしてあの時自分以外の誰かってこんな思いだったのか?と気づけるかもしれない。理解するまでは、それぞれきっと難しいけれど、人との違いを知ることや相手のことを考えることは、やはり自分にとっても大切なんだと思う。自分以外。たとえそれが血を分けた人であっても自分以外なんだ。
読む前から題名の"水を縫う"とはどんな意味なのだろうと気になった。水なんて縫えないから、暗い結末も想像したが、ラストにあったのは、物語にあるように"ひと針で線になり、重ねると面になる"ような希望だった。
「流れる水は、けっして淀まない。常に動き続けている。だから清らかで澄んでいる。一度も汚れたことがないのは『清らか』とは違う。進み続けるものを、停滞しないものを、清らかと呼ぶんやと思う。これから生きていくあいだにたくさん泣いて傷つくんやろうし、くやしい思いをしたり恥をかくこともあるだろうけど、それでも動き続けてほしい。流れる水であってください。」
本の中にある、この言葉がすてきだ。
家族や友達という身近なところにもある多様性をみる。身近であってもこれほどの違い。
それでも、
願いは届く。思いは叶う。
そう思えた。そう思って生きる。