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当地域ネットワークの支援により、初めての承継・マッチングが成立しました! 【第三者承継】明星飯店さん・Ninoの森さん

当地域ネットワークの支援による初めての承継・マッチングが成立しました! 【「明星飯店」・「Ninoの森」】

【第三者承継・マッチングの概要】

 〇事業譲渡者:明星飯店 横倉さん

 〇事業譲受者:Ninoの森 西野さん

 〇事業承継成立日:令和5年11月9日

 〇営業開始日:「Ninoの森」令和6年3月9日

 

【事業承継ストーリー】

第三者承継 明星飯店さま×Ninoの森さま

単なる不動産売買では引き継げない、店づくりの根幹である「想い」

人の生き方が千差万別であるように、事業承継にもさまざまなストーリーがあります。今回は、約40年続いた町の中華料理店のマスターとグルメサイトでも人気のイタリアンのシェフが手を取り合い、オーナーと店名が変わっても常連客が変わらず通う新しい店をつくりました。地域とのつながりや人の温かみといった、形にならないものを受け継ぐ事業承継の一例をご紹介します。

 2.西野さんと横倉さん.jpg

【事業承継のバックグラウンド】

   譲渡者の横倉さん(明星飯店 店主)は、料理人歴約60年。美味しいと評判の町中華料理店を、大和郡山市で約40年ほど経営してきました。コロナ禍は乗り切ったものの、年齢や体調を鑑みて、後継者を探していたのです。しかしすぐには見つからず、2022年8月、地域に惜しまれながら閉店を選択しました。

 

   譲受者の西野さん(Ninoの森 店主)は、橿原市、奈良市でカジュアルイタリアンレストランを約23年間経営してきました。特に奈良市の店舗はインバウンド需要を捉え、某グルメサイトの「外国人が選ぶレストラン」で全国2位を獲得。しかしコロナ禍を経て店づくりの方向性と立地を再考するに至り、新天地にて創作料理店を開店しようと決意しました。

 

   大和郡山市商工会は、1992年から2022年まで明星飯店の記帳や確定申告を支援してきました。Ninoの森の西野さんは、2023年3月に相談に来られました。金融機関に資金調達の相談をされるようアドバイスしたのが支援開始のきっかけです。最終的に、大和郡山市事業承継地域ネットワークの支援もあり、2023年119日に店舗を引き継ぎ、事業承継が成立しました。

 

横倉さんの気配を大事にする。 心は、見えないけれど込められる

Ninoの森はイタリアンをベースにしていますが、明星飯店でも出されていた麻婆豆腐やエビチリもメニューにあります。作り方のコツや仕上げのひと手間は、横倉さんが教えてくださったといいます。しかし、「横倉さんから味を引き継いだのですか」という問いには、「横倉さんは感性で料理を作る人なので、僕が作り方を教わっても全く同じ味にはなりません」と西野さん。明星飯店の常連さんは、「味は違う。でもこれも旨い」と喜んでくださっているのだそう。

 3.多国籍なメニュー.jpg

西野さんが横倉さんから引き継いだもの。それは「大和郡山の地で約40年続けてこれた」というお客様への感謝の気持ちだといいます。毎日休まず厨房に立ち、お客様のお腹と心を満たし続けた、その想い。飲食店を長く経営するのは並大抵のことではありません。「いいお客さんばっかりだから」と微笑む横倉さんの姿から、地元の人々に愛されてきたそのお人柄が伺えます。西野さんはその姿勢を引き継ぎ、大事にしていくと決めたのです。「横倉さんと僕には、料理人として通じるものがあるんです。最近は顔まで似てきたって言われます」と西野さんは笑います。

 

さまざまな想いを継ぐNinoの森

4.外観およびインテリア.jpg 

Ninoの森の店名は、地域で大切な役割を果たす、お寺や神社の鎮守の森をイメージしています。「僕の実家の近くには神社があって、いつもそこで遊んでいました。誰もいないときも、森の木々が見守ってくれているようで寂しくなかった」と西野さん。Ninoの森は、そんな風に「いつでもそこに在って、行けば誰かがいて楽しい場所」を目指しています。多様な人々が混在しながらも、ぶつからずにみんなが楽しく良い雰囲気を醸し出し、ワーッと笑顔になれる場所。「両手を広げて迎える気持ちで開けています」と西野さんは微笑みます。

西野さんの「受け継ぐ」姿勢は、以前の店舗「スローフード ニーノ」の店名にも表れていました。スローフードは、1986年にイタリアで始まった、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す考え方や運動です。「スローフードは、家族や目上の人などから教えてもらったことを継承して、自分たちの料理を維持していこう、守っていこうという考えです」(西野さん)。「スローフード ニーノ」はイタリアンのお店でしたが、来店される外国人のお客さんに各国の郷土料理を教わり、スペシャルメニューとして出すこともありました。今回の店舗でも、イタリアンに加えて中華も出しています。自分の専門であるイタリアンにこだわらず、相手の大事なものを自分も大事にする西野さんだからこそ、横倉さんはすぐに気に入って全幅の信頼を寄せるようになったといいます。

そして今後は、イタリアンや中華といった枠組みを取り払い、地元や季節に寄り添った食材や調味料を使ってお客さまに喜んでいただけるものを出す、「創作料理」のお店としていきたい考えです。

 

【第三者承継のポイント QA

Q. 譲渡決定までに、今回のお相手以外の候補も検討されましたか。

A. 西野:はい。購入を前提に、他の物件も内見したり検討したりしました。でも物件が大きすぎて予算を越えてしまったり賃貸契約しかできなかったりと、なかなか条件に合いませんでした。今回譲り受けたお店は、まず自然豊かな中にある立地が気に入りました。通り抜ける風がとても心地いいんです。それに横倉さんにお会いして、「マスターの思いごと、全部僕が引き受けたい」と思うようになりました。

横倉:最初は家族承継を考えましたが、諸々の事情があり無理だなと思うようになりました。「もう物件だけ売れればいいかな」と思っていたところで西野さんに出会い、常連さんもみんな引き継いでくれて、ほっとしました。

 5.Ninoの森から見える風景.jpg

Ninoの森から見える風景

Q. 事業承継をして良かったことを教えてください。

A. 横倉:普通の不動産売買だったら、売れてしまった日から他人のものなので、もう二度と、立ち入ることはできません。でも今回、譲り受けてくれたのが西野さんだったから、譲渡後もうちの常連さんに紹介したりちょくちょく様子を覗いたりと、見守り続けることができました。西野さんとは気が合って、まるで新しい息子ができたようです。譲渡後も、長年愛着を持って育ててきた店の周囲の草花の世話をするなど、名残を惜しませてくれているので、手放すさみしさも軽くなって嬉しく思っています。

西野:横倉さんから引き継いだことを、周囲の方々に認知してもらえているからこそ、 みんな仲良くしてくださって「頑張りや」って言ってくれはります。よそ者が突然来てポツンとしていたら、そんなお付き合いはなかったと思います。人から人へ「あの人がこの人へ引き継ぎはったんやな」とわかることで、ご近所関係も変わりますね。

 

Q. 大和郡山市事業承継地域ネットワーク(大和郡山市商工会)に相談して良かったことや助かったことはどんなことですか。

A. 西野:飲食店は数店経営してきましたが、事業承継の形で受け継ぐのは初めてです。前のオーナーと関わりながら物件を譲り受けて、同じ飲食店として進めていく方法は多岐にわたります。ですから、さまざまな方法を提示してくださったり、わからないことをわかりやすく説明してくださったりしたのがありがたかったです。助言の際も、さりげなくポイントとなるキーワードを投げかけて、自分で考えて答えを出せるように導いていただきました。自分でも調べたり他の人にも聞いたりすることで、さらに知識も増えていきました。今まで考えていなかったところまで考え方の幅を広げて、選択肢を増やしてもらえる感じが良かったです。

オープン後も、大和郡山市商工会が引き続き支援をしてくださっています。補助金申請や経理の相談、ホームページ作成など、さまざまな面で助けていただいて、おかげさまで、広報や看板なども含め、いろいろと整ってきています。余裕が出てきたらテラス席も作りたいので、まだまだご相談し続けると思います。

 

【最後に】手から手へ~握手で感じ取った信頼~

Ninoの森がオープンした後も、ふたりの交流は続いています。ある日、西野さんが横倉さん宅を訪れた帰り際、ふたりはどちらからともなく差し出した手を握り、ぎゅーっと深い握手を交わしました。それは単なる挨拶ではなく、想いを伝え、受けとめる握手だったといいます。「じんわりと相手の力と気持ちが入ってくるような握手で、言葉にせずとも『頼むぞ』と言われたのがわかり、僕も『わかりました』という気持ちで握り返しました」(西野さん)。それは、継承がきっちりなされたことをお互いが悟れる、すべてが伝わるような握手でした。

西野さんはインバウンド客を相手にする際も最初に握手をします。それは外界から「Ninoの森」の世界へ引き込む場づくりの一環のようなもの。でも、横倉さんとの握手で思い出したのは、イタリアを去る際に常連さんと交わしたイタリア流の握手だったといいます。いろいろな方にお世話になりながら過ごしたイタリアでの1年半。最後に「日本に帰る」というと、いつも来てくれていた人が「イタリア人は握手を大切にする。お互いに気持ちを込めるような握手をするのがイタリア流なんだよ」と教えてくれました。日本にはない、イタリアでの、言葉を介さない気持ちの渡し方と受け取り方。それが握手にありました。その経験がフラッシュバックのように蘇る、横倉さんとの握手だったのです。他の人には入り込めない領域。親子でもない。もともとの従業員でもない。けれど、こんな継承もあるのです。

 

事業はひとつの生命体のようなもの。終わらせるも受け継ぐも、そこに集う人々のエネルギーで決まります。一旦は枯れたように見えても、出会いによってまた芽吹き返し、木々の茂る大きな森になることも。大和郡山市事業承継地域ネットワークは引き続き、良き出会いと承継のサポートを続けていきます。

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