八重巻酒店

　蔵元との付合いは酒屋にとっての生命線です。3代目までは何社か取引をさせていただいたのですが、現在は主として4蔵に取引を限定させていただきました。これは味はもちろんのこと、飲み手となるお客様や、酒造りに対する姿勢、将来への日本酒に対する想い考えとそれに取組む姿勢に感銘を受け、これからもずっと肩を組んで歩んでいける関係だと感じたからです。当店と取引きさせていただくのは黒龍酒造さん、加藤吉平商店さん、朝日酒造さん、諸橋酒造さんの4蔵になります。これらの蔵元たちと一緒に、これからの日本酒の文化を今以上に盛り上げていきたいと考えております。

　お酒とは「百薬の長」という言葉どおり、適度な量であれば健康にも良いものです。そしてその効果が極めて高いのが日本酒なのです。日本酒には体内で合成できず、外部から栄養分として摂取しなければならない必須アミノ酸が全て入っています。加えて日本酒は食欲増進作用や、体の発汗作用を高め、同時に免疫力も高めてくれるのです。ビールやワインなどのお酒は、同じ作用があると思われがちですが、実は体を冷やしてしまうのです。その他、糖尿気味だという方に嬉しい情報です。近年解明されたことですが、日本酒にはインシュリンと同様の働きをする物質が入っていることも判明しました。 　体に良いというのは、1日の摂取量の範囲内でのことです。飲みすぎは逆に体に悪いという認識を持ってお酒を楽しみましょう。

　日本酒を飲まれない方が日本酒と聞いてまず思いつくことは「味が苦手」「値段が高い」「アルコール度数が高い」などが挙げられるかと思います。酒屋からすると大変残念です。それが全てではないからです。 　日本酒は種類が豊富で一般的には「吟醸」という名の付くものが飲みやすいとされています。しかし蔵元によっては全く味が異なりますし、アルコール度数が同じとは限りません。使用する水の味、硬さ、杜氏(とうじ)の業など蔵元によって大きく変わるのです。その為、辛口なのに、水のように飲めるものやフルーティーな味わいが楽しめるものもあります。そして必ずしも高いからおいしい(飲みやすい)というわけではありません。低価格で提供している酒の中に飲みやすいおいしいお酒は山のようにあるのです。大切なことは自分に合った日本酒が必ずあるということ。そのお手伝いをさせていただくのが私、八重巻のお仕事なのです。

　先代から代々受継いできたものは「心」だけではありません。それは「包装紙」。親元を離れていく子に最後のひと仕事として「包装紙」でラッピングをします。商品の存在価値を高め、そして引立たせるのが「包装紙」だと考えており「包装紙」にはその力があります。 　4代目に襲名したときから考えていた包装紙のリニューアル。コンセプトは「シンプルでありながらの存在感」です。 　包装紙に描かれているのは「江戸小紋」の「つらの皮梅」というデザインです。これは古くから着物などで用いられている模様で、古くは江戸時代に全国の大名が着用した裃（かみしも）の模様づけが発祥と言われています。梅の花の中に笑顔が描かれています。不思議と見入ってしまうこのデザイン。八重巻のシンボルになり、これからの八重巻を支えていく柱になってくれればと願っています。