研究テーマ

黒部峡谷の自然誌

黒部峡谷の自然誌を様々な視点から探求する

 富山県東部の黒部峡谷には,両岸に急崖の連なるV字峡谷が連続し,富山県側から入るのは宇奈月から欅平を結ぶ黒部峡谷鉄道が,唯一の交通路となっています.この峡谷地形の形成に,世界一若い花崗岩体の貫入と世界第一級の隆起速度が関係していることは,既に広く知られています.当研究室では,黒部峡谷のうち宇奈月-欅平間を対象にして,自然誌にかかる研究テーマで他機関との共同研究を進めています.

 ・地形地質を基にした斜面地質学的研究.

 ・洞窟研究(鐘釣地域),とくにニホンザル化石と鍾乳石を用いた古気候学的研究.

 ・現生哺乳類相と陸産貝類相の研究.

 ・ニホンザルの洞窟利用に関する研究.

 ・ニホンカモシカやツキノワグマなどの洞窟利用に関する研究.

 ・1900年代初頭に開削された旧林道に関する研究.

 

 以上の研究成果を広く世間に普及するために,深田地質研究所ジオ鉄普及委員会の研究者とともに,『黒部峡谷鉄道ジオ鉄の旅』に取り組んでいます.

 ・『黒部峡谷鉄道ジオ鉄の旅』の普及活動.

放散虫化石研究

中生代浅海域の生物多様性を解明する

 放散虫は海洋に生息する微小なプランクトン生物で,放散虫類のうちケイ酸質の殻を持つPolycystinaと呼ばれるグループは,その化石記録から5億年を超える生命史を有しています.その大きさは,多くが数百ミクロン程度の微小サイズである一方,その形態は多種多様で僅かな試料から多量に産することから,殻形態に基づく進化系統に関する知識が蓄積され,地層や岩石の堆積した時代を記す示準化石として広く活用されています.さらに,海水温に対してしばしば鋭敏に反応することから,緯度の高低に基づく古環境解析として示相化石としても利用されています.これまで,中生代の遠洋域から浅海域の放散虫化石群集の研究を進めてきています.最近は,浅海域の微化石群集に特に焦点を当てています.放散虫の他に,様々な分類群(有孔虫,貝形虫,二枚貝や巻貝の原殻,海綿骨針など)の微化石が共産するため,浅海域の海洋生物の多様性に関する興味は尽きません.

 ・中生代の遠洋域放散虫化石群集の研究.

 ・中生代の浅海域放散虫化石群集の研究.

 ・中生代の浅海域の生物多様性に関する研究.

洞窟学研究

洞窟から生命史と環境史のデータを引き出す

 洞窟は,『天然の冷蔵庫』と呼ぶにふさわしい安定した環境を持ちます.アルカリ性の土壌は,脊椎動物の骨体を数千年から数万年以上の長期にわたり保存し,鍾乳石の石筍には高精度の古環境データ(過去の気温と降水量)が同位体として蓄積されています.石灰岩洞窟はカルスト地域の石灰岩中に胚胎し,そこには陸産貝類(陸生巻貝類の総称)が多数生息し,しばしば陸産貝類化石の産出も知られます.また,洞窟の暗黒湿潤の空間に適応した真洞窟性陸貝の生息も知られ,地下空間である洞窟には特異な生態系が形成されています.これまで,日本国内の関西,中部,北陸,および関東地域で洞窟調査を実施しています.最近では,北陸地域(富山県と石川県)の鍾乳洞に力を入れて,新洞探索も含めて調査研究を進めています.

 ・脊椎動物化石(とくにニホンザル化石)を用いた古生物学的研究.

 ・石筍を用いた古環境学的研究.

 ・陸産貝類化石と関連する現生陸産貝類の研究.

 ・ホラアナゴマオカチグサ(真洞窟性陸貝)の形態学的研究

 ・現生哺乳類(ニホンザルほか)による洞窟利用に関する研究.

 ・洞窟周辺の現生哺乳類相に関する研究.

 ・洞窟内外の気象観測.

 

 上記の研究は,主に富山県の黒部峡谷で実施しています.石川県白山地域では現在,2019年に測量した洞窟の追加調査に加え,未測量の新洞調査を予定しています.

古生物学的研究

化石から生命史を紐解く

  化石として記録されている生命は,様々な分類群にまたがります.興味は人それぞれ,これまで求められるがままに,様々な分類群の化石を扱ってきています.

 ・放散虫化石と様々な微化石.

 ・哺乳類化石.

 ・板鰓類(サメ類)化石.

 ・軟体動物(二枚貝類,巻貝類,アンモナイト)化石.

 ・シアノバクテリア化石(鍾乳石に関連).

 ・植物化石(主として珪化木).

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