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2023 / 02 / 23  12:11

[コラム]地方の“日常”が面白い!秋田県八峰町で体験する「半農半X」で3週間のおためし移住

地方の“日常”が面白い!秋田県八峰町で体験する「半農半X」で3週間のおためし移住


 手つかずの自然が残る世界自然遺産「白神山地」と、美しい磯が続く日本海に囲まれた秋田県八峰町(はっぽうちょう)。自然豊かなこの地域で農林漁業に取り組める「半農半X」体験は、「自分の仕事を続けながら」おためし移住ができるのがポイント!八峰町観光協会が実施するこのプログラムに参加した、東京在住の会社員、森川太一(もりかわたいち)さんにリアルな体験談を伺いました。



都内の会社員が、なぜ八峰町に?

-まず始めに、森川さんが地方移住に興味を持ったきっかけを教えてください。

森川  コロナ禍になり、改めて時間の使い方について考えるようになったのが大きいです。私は神奈川出身・東京在住ですが、両親がアウトドア好きで、小さな家庭菜園もやっていたので、昔から自然には触れていました。ボーイスカウトもやってましたし、父親の趣味の山登りにもよくついて行ってました。そんな経験がずっと心の中にあったのか、コロナ禍になってから山登りした時に、「やっぱり自然はいいな」と再認識したんです。日本の原風景にもっと触れたいと思い、地方移住を考え始めました。

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-八峰町の「半農半X」に申し込まれた経緯は?

森川  最初は、古民家バンクで物件情報を収集していました。でも、そもそもその土地について何も知らないし、旅行じゃなく住むってなると、そこの自然環境や地域コミュニティに自分が合うか分わからず不安で、どうしても一歩踏み出せずにいました。そんな時に、Instagramのストーリーでたまたま八峰町の「半農半X」の募集告知が流れてきたんです。ちょうど締切日だったので、その場ですぐ申し込みました。

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-会社には相談されたんですか?

森川  今の仕事はリモートがメインで、パソコン1つで仕事できます。出社しているほうが珍しいくらいなので、住む場所については何も言われないし、農業収入を得るにあたっての副業申請だけすれば大丈夫でした。逆に、取り組みを会社内でシェアして欲しい!と言われたほどです。地方にサトライトオフィスをつくってオープンな働き方にチャレンジしている会社なので、理解がありました。この会社だから「半農半X」ができたと思われるかもしれませんが、今はどの業界でも働き方改革が進められているので、こういう企業は全国的に増えていくと思っています。

-移住体験への不安はありませんでしたか?

森川  基本どうにかなるでしょ!のスタンスで生きているので、秋田なら言葉も通じるし、何か足りなければ現地で買えばいいしというくらいに考えていました。唯一不安だったのは、現地の通信環境です。事前にWi-Fi環境はないと分かっていたので、置き型&ポケットWi-Fiを持参し、仕事上は全く問題ありませんでした。通信環境の事前確認は必須ですね。

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まず目に飛び込んだのは、空の広さ、海に沈む夕日、真っ暗な夜

-八峰町に初めて来た時のことは、覚えていますか?

森川  八峰町に向かうレンタカーの中から、田園風景と海に沈む夕焼けを見た時、 「これだ、これだ」ってぞくぞくしたのを今でも覚えてます。求めていた地方の景色と空の広さにすごく興奮しました。 夜にお借りするバンガローに着いたら、八峰町観光協会の板谷さんから鍵と一緒に懐中電灯を渡されたのも驚きましたね。「バンガローまでの道が真っ暗で、何も見えないから」と。その夜の暗さが逆に新鮮で楽しかったです。

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-地域の人の印象は?

森川 地域の人に気を遣わせてしまわないか心配だったんですが、板谷さんや農家の山谷さんが気楽な感じで迎え入れてくれて安心しました。それに、みなさんほんとに優しくて、あたたかいつながりがあって。都会の一人暮らしだと、「隣に住んでいる人がどんな人なのか知らない」のが当たり前です。私は人と話すのが好きで、色々知りたいという気持ちが強いので、八峰町のコミュニティの密接さがとても心地よかったですね。

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「いただきます」の本質に触れられた農作業と暮らしの体験

-どんなふうに毎日を過ごしましたか?

森川 基本的に9〜18時は本業を、7〜9時はネギ農家さんを手伝っていました。朝から体を動かし、頭がスッキリした状態で仕事に向かえることや、土やネギに触れたり、農家さんと話したりするのが楽しかったです。夜は真っ暗すぎてすることがないので、すごく規則正しい生活にもなりました。21時には寝て、4時には目が覚める感じでしたよ。休みの日には、白神山地、増田の蔵、乳頭温泉など、秋田県内を観光してまわりました。

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-白神山地の麓にある手這坂(てはいざか)集落にも行かれたとか。

森川 集落の唯一の住人で、農園を営む木村さんから、「自然農」を学ぶ機会をいただきました。大根、ズッキーニ、カボチャなどの種をとって、翌年はその種から育てるといった、野菜のライフサイクルを自給自足で回していく農業に感動しました。その土地に根差した、環境に合う農業があるんだ!と、ある意味、昔の人からすると当たり前のことが自分には新鮮で。「いただきます」の本質に触れられた気がしました。

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-白神山地の湿原保護ボランティアにも参加されたんですよね。

森川 元々山登りが好きなので、白神山地にある田苗代湿原(たなしろしつげん) のボランティアに参加しました。「湿原の陸地化」の原因となるツゲを刈る活動です。白神山地が世界自然遺産だということは知識として知っていましたし、観光地としての湿原のイメージや、水や空気が綺麗だというぼんやりした感覚はあったんです。でも実際訪れてみると、ツゲがあると湿原がなくなってしまうこと、そのツゲは将棋の駒に使われること、熊が麓の畑を荒らすこと、サルナシなどの植物の名前、食べられる・食べられない山菜など、すごく細かい粒度で山を知ることができました。登山が好きなのでよくネットで情報を調べるんですが、その場で詳しい人に熱く語ってもらえるほうが頭に残りました。

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地方の日常には、新鮮な”当たり前”がいっぱい!

-移住体験を終えての、率直な感想を教えてください。

森川  とても些細な、地方の”日常”がとにかく面白かったです。スーパーで売ってるものや、水道水がおいしいことなど、地元の人には当たり前のことがすべて新鮮に映りました。水筒に水道水を入れて持ち歩いていたら驚かれたり、地元の人は白神山地に行ったことないと聞いたりして、住んでいる人とのギャップも実感しました。

-体験を通して、見えてきたことはありますか?

森川 地方移住や地域貢献については、Youtubeや書籍などあらゆるメディアを通じて情報収集ができます。それらは有益な情報源ではありますが、現地に行くこと以上にはっきりと自分の答えを見つけられるものはないと感じました。 例えば、地域コミュニティとどう接するのが自分に合っているのか。地域貢献にはどのような切り口があって、どんな活動があるのか。なければ、どうしたらつくれるか。地方は車社会というけれど、実際何に車が必要なのか。ネットには載ってない、現地でしか感じられないことがたくさんありました。

森川 地方移住の一歩が踏み出せない人は、「半農半X」の仕組みに乗っかってみるのがおすすめです。「半農半X」は目的じゃなく、きっかけ。きっかけをつくるかどうかで、迷う必要はないんです。友人とはネットでつながれるので意外と寂しくないですし、リモートワークなら働き方も変わりません。でも、ひとたびパソコンを閉じればすべてが新鮮な世界。そんな毎日から、本当に自分がやりたいことが見つかるかもしれません。

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 今の地方には、「若者がいない」「人手がない」という大きな課題があります。田畑の維持が難しくなり、「昔ながらの農業の在り方」「細かいノウハウ」も失われようとしています。森川さんは、「情報化・効率化が優先される今の社会の中で、私たちは何かを見落としてしまっているのでは?」と話します。今の仕事も大事にしながら、地方での”生きた”暮らしを体験したい方は、八峰町の「半農半X」をチェックしてみてください!

2022年12月9日インタビュー
【「半農半X」体験】 秋田県が2021年から取り組む事業。都市部に暮らす人を対象に、秋田県内に3週間ほど滞在してもらい、自分の仕事(半X)をリモートワークで続けながら、人手不足の農林漁業のお手伝い(半農)にも挑戦。体験を通じて両立可能なライフスタイルを模索する。

【森川太一さんプロフィール】 28歳。神奈川県横浜市出身、東京都世田谷区在住。 外資系IT企業の会社員として働きながら、Instagram「Pickles__bob」(漬物×居酒屋アカウント)の開設や、友人と渋谷特化型グルメメディア「シブログ」の立ち上げ(副編集長)に取り組む。2022年10月に秋田県八峰町の「半農半X」体験事業に参加。山登りが趣味。

【ライター:平元美沙緒】 徳島生まれ、秋田市在住。一児の母。秋田で働く女性のためのポータルサイト「a.woman」ライター、秋田県里地里山50情報発信員。まちづくりに関する話し合いの場の進行・企画を行うまちづくりファシリテーターでもあります。

 

 


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