ナットのメカニズムについてかなり簡単ですが、解説することにします。
私の場合は、角材から削り出したワンオフのナットを作成することが多いので、『ナットを作るのはそんなに簡単ではないんだなぁ。』と思っていただけると幸いです。
ナットを作成・調整する上で重要なのは、取付溝との合わせ、ヘッド側スラント、弦の露出、弦溝角、リリース角で、どれも音に関わります。
これらは、そのギターの特徴に合わせつつ、弾き手の奏法に合わせますが、一般的、標準的な規則はありません。
ギターの特徴に合わせるという意味は、例えば『000のラウド感はDのようにはならない!』ということですが、材と構造次第で似ているように聴こえることもありますので、ギターって面白いです。
最大のポイントは弦溝の作り方です。
私が考える要素としては、音の芯、輪郭、反応、ラウド感、サスティンがあってそれらを整えるのですが、『基本の(弦がペグポストに向かう)溝角度』と『リリース角(共振)』で鳴りと音色のバランスを整えます。
具体的には、各開放弦の音のpp(ピアニシモ)からff(フォルテシモ)までを弾いて音を聴き取り全弦のバランスを整えますが、ここにも一般的な規則はありません。
と言うか、溝の加減は数値で表せないことなので、ちっとも具体的ではありませんね、すみません!
要は音です、音!
ここの作りは、弦を押さえた音にも影響します。
ナットは解放音にしか影響しないというのは気持ち的には理解できますが、誤解であって、全ポジションの音が整うはずですので、部分的に『?』があれば、フレットの調整が必要です。
芯が抜けていれば浮きがあるかもしれませんし、ノイジーなら減りを修正する必要があるのです。
また、『デッドポイント』は完全に解消することはありませんが、軽減されます。
自作をお考えの方は、良いナットの条件を探すより、考えうる全てを試していただくことをお勧めいたします。
おそらく、かなりの数のナットを作ることになると思いますが作った数が増えれば、要素は全て引き出すのではなく、不要な要素は出さないようにする必要もあることに気づくと思います。
サイズが合っていさえすればナットは接着しなくても大丈夫ですから、頻繁に交換するなら取付溝を守るためにナットは接着せずに。
実は、私のHeadway HO-424もナットは接着してありません。
とここで、そのナットの画像をご覧ください。
これは、あくまでもギターの特徴と私の弾き方に合わせたものにすぎませんので、ご理解を。
弦の乗り面とリリース部が分かりますでしょうか。
しかし、パッと見で艶があっても接写すると結構ざらつき感が写りますね。
紺屋の白袴です、ご容赦!
リリース部の角度の違いがお分かりかと思いますが、音を確認してのバラつきであって、適当につけたものではありませんよ。
特に、2弦と1弦の違いが分かりますよね?
音が聴こえさえすれば、こうしたくなるのが分かると思いますが、ここが不要な要素は出さないという実例ですね。
そのうちに解説をしますが、サドルのイントネーションとの関係性でもあります。(って、これでご理解された方はすごい!)
リペアマンが10人いたら10通りの考え方があります。
これはあくまでも私のやり方に過ぎませんし、全ての詳細には至っていませんというか、弦ピッチは?横テンションのかけ方は?とかで下書きの段階でとんでもない長文になったのをまとめた次第です。
なお、Les Paulのようなヘッド角のあるエレキギターは同様に作りますが、ヘッド角の無いフェンダー系はまたいずれアップしますね。