『適正弦高』とは一概に数値で言えるものではなく、人それぞれの『楽しく弾くことのできる高さ』と私は考えています。
12F弦高は1F弦高と同様に『工場出荷値』にセットされていますが、その値がどなたにも合うとは限らないのも1F弦高と同様ですので、もし『自分の適正弦高じゃないかも』と思えるような状態でしたら、調整が必要なのかもしれませんね。
しかし『自分の適正弦高』を探すのはいささか難しいです。
そこでまずは、リペアした過去例からのセッティング値を紹介させていただきますが、ご参考になれば幸いです。
全員男性で、使用弦は全員ライトゲージ、数値は12Fでの1弦と6弦の高さ(mm)です。
◾️Aさん
ギター:ドレッドノート
弦長:ミディアム
演奏:デルタ・ブルース(時にスライド)
1弦:1.8
6弦:2.8
◾️Bさん
ギター:ドレッドノート
弦長:ロング
演奏:弾き語り全般
1弦:1.5
6弦:2.5
◾️Cさん
ギター:オーディトリアム(000)
弦長:ミディアム
演奏:弾き語り全般とインスト
1弦:1.4
6弦:2.4
◾️Dさん
ギター:OM
弦長:ロング
演奏:主に指弾きの弾き語り
1弦:1.2
6弦:1.7
1)これらの値を求める手順として、私はまず主な奏法をうかがい、押弦感や演奏性などの詳細を教えていただきますが、専門的な解説めいたものでは逆に分かりにくいので直感的なご印象をうかがっておきます。
2)調整前の弦高で弾いて、それらの詳細の確認(再現)をすれば普段の弾く強さがおおむね分かりますが、これがとても重要と私は思っています。
同時に全てのポジションでバズの始まりがどの程度の力からかの確認をしますが、ここではわざとバズらせるように弾いて、普段の強さとの差を確認しておきます。
3)バズの始まりが全ポジションで同じとなることはほとんどなくバラつきがありますが、このバラつきは弦高を下げるほど顕著となり得ますので、特に標準値以下にする場合は、フレットのすり合わせをして早すぎる部分のバズを排除しておきます。
4)調整前の弦高よりも演奏性の向上を感じていただけると思う数値に調整し、確認してあった普段の弾く強さで弾いて演奏性の向上を確認します。
同時に全てのポジションのバズの始まりを再確認して、演奏の妨げになっていないことを確認し完了です。
他の方のセッティングを意識することは自分の適正弦高を見つけるのに大いに役立つとは思いますが、その数値にあまりとらわれすぎない程度に意識をするのが良いかと思います。
弦高の変更は音の変更にもなり得ます、『演奏性』と『音』の優先度は自由で構わないと思いますが、その加減こそが『自分の適正』と思いますよ。
主にロー・ポジションでの演奏であれば、12Fの高さにあまりこだわらずに、むしろ1Fの高さにこだわる方が適切かもしれませんね。
もし、今は主にロー・コードで演奏をしていても将来的にハイ・ポジションを多用するおつもりでしたら、12F弦高をご自分の適正値にしておくことをお勧めいたします。
もちろん、ご希望でしたら弦高値のご指定も承ります。
なお、『適正弦高』は上達に従って変わる可能性があります。
事実、Aさんは今はもう少し低めの弦高に変わっていますし、私自身も今の弦高になるまでに幾度かの変更をしていますので、まずは『今のあなたの適正弦高』を探してみませんか?