Tel / 03-3469-0511

ザ・スズナリ

1984年1月~6月 上演の軌跡

     

1984昭和59年)1~6     7~12月コチラ

1

 

 

 

 

 

1/15~1/22

演劇舎螳螂

改訂版

『聖ミカエラ学園漂流記』

 

img499.jpg

 

 

1/28~1/29

まるまる行進曲

『命、枯れても』 

 

img504.jpg

 

概説

(以下敬称略)

 
 

1月15日~22日、演劇舎螳螂「改訂版『聖ミカエラ学園漂流記』

1976年、明大在学中の小松杏里が結成した演劇舎螳螂。1982年、代表作『聖ミカエラ学園漂流記』(作:高取英)を上演(明石スタジオ)。本作はその改訂版である。

 

1月28日~29日、まるまる行進曲『命枯れても』

 

1984年1月リーフレット

img498.jpg img497.jpg

  

2月3日~5日、演劇集団アジア劇場『風の匂い・4 ~地上のジャンヌダルク~』

早稲田大学在学中の林英樹が創立。1981年より本格的に活動開始したアジア劇場は、独自の肉体訓練や方法意識を持ち、80年代前半の小劇場界の注目を集めた。演劇小冊子、現<場>を発行。

 

2月8日~3月11日、ザ・スズナリ企画 五劇団連続競演『新世界聖愚伝』。

 

気鋭の若手劇団(ネヴァーランド・ミュージカル・コミュニティ、十月劇場、第三舞台、ブリキの自発団、第三エロチカ)に「近未来」というテーマを与えて競演された。二十代半ばの勢いのある劇団を中心に集めたこの企画はザ・スズナリ初代支配人 酒井裕子氏によるものだが、これまでの小劇場界の流れを画するイベントとして、マスメディアや演劇界の注目度が高かった。

 

 

ザ・スズナリ開場3周年記念

「五劇団連続競演 新世界聖愚伝」

 

■ネヴァー・ランド・ミュージカル・コミュニティ『ハッケヨイ’84』 

1978年、東大在学中の堤泰之が旗揚げしたネヴァー・ランド・ミュージカル・コミュニティ。劇団運営の傍ら銀座で女子大生パブ「赤門倶楽部」の店長を務めていた堤は全作品オリジナルのミュージカルをめざしていた。"21世紀にヒーローと呼ばれる生き物がいるとすれば、それはどんな肉のかたまりなのか”をテーマに、相撲部屋を舞台にしてさぐったのが今作。「戦場のメリークリスマス」のデビッド・ボウイ役を登場させた破天荒な実験作で、ヨーロッパ的個が日本人の体にどう消化、吸収されるかを問うた。

 

■十月劇場『虫歯おばさん ~よりそって僕と君~』

1975早稲田大学の学生を中心に『魔弾の射手』で旗揚げされた十月劇場。”ミュージカルから剣劇まで”を謳い文句に活動。虫歯を文明社会の置き土産のメタファーとし、言葉と戦わせた。

 

 ■第三舞台『宇宙で眠るための方法について』

1981年、早大演劇研究会を母体に、作・演出の鴻上尚史、岩谷真哉、大高洋夫、名越寿昭らによって旗揚げされた第三舞台。’83年早大大隈講堂裏特設テント『デジャ・ヴュ』ではすでに2600人動員し、マスコミの注目を集めていた。今作は、「現代管理社会からふるい落とされた人々がどん底に落ちた理由を語るにつれ恐るべき事実が現れる、「現代版どん底」。

劇団名について鴻上は「第一の舞台が、役者とスタッフでつくりあげた舞台。第二の舞台はお客さん。この第一と第二が融合して現れる幻の舞台を目指そうというのが公式発表ですね。でも本当の動機というのは、アメリカに実験を得意とするセカンドステージという劇団があるそうなんです。それならサードステージが日本にあってもいいだろうと」と語っている。(「婦人と暮らし」1984年3月号)

中心的俳優だった岩谷真哉は今公演の3ヶ月後、バイク事故により帰らぬ人となった。後年、鴻上は戯曲「ファントム・ペイン」のあとがきの中で、そのことに触れている。

 

■ブリキの自発団『ナンシー・トマトの三つの聖痕』

『電気果実物語』に続く【ナンシー・トマト】シリーズ第二弾。旗揚げ作品『キュービック』同様、フィリップ・K・ディックに強くインスパイアされて書かれた今作は、異星から届いた植物をめぐるSF物語。異星人クラブの夜を彩るコカイン中毒の歌姫。そして彼女の前に現れた正体不明の聖地巡礼の女。不吉な運命の紅い星・マース(火星)に繰り広げられる反・エントロピー劇。

”【過去】はいつも新しく、【未来】は悲惨なまでに懐かしい”、銀粉蝶のこの台詞はブリキの自発団を象徴するフレーズとなる。出演は他に鷺宮テル子、山下千景、他。中でも片桐はいりは登場するだけで客席がどよめいた。井村昂はのちに少年王者舘の俳優となり現在(2021年)でも客演や舞踊劇の演出家、脚本家、舞台監督と多岐に渡り活躍中である。

 

■第三エロチカ『ニッポン・ウォーズ』

1980年、明大政経学部2年の川村毅が自ら主演、作、演出し『世紀末ラブ ~ぼくとわたしのトルコ学講座~』で旗揚げされた第三エロチカは、深浦加奈子、郷田和彦、佐々木英樹、宮島健、有薗芳記など、存在感の強い俳優を擁していた。当時24歳の川村は今作について「記憶すらカセット化されるアンドロイドの中に、近代的な人間観ではとらえきれない、新しいタイプの人間を表現できないか、と考えた」と語っている。(’84年4/6朝日新聞夕刊)

競演した五作品の中でも特に評価が高く、「ドラマづくりの定型はもちろんのこと、人間のすべての言動・表現をひそかに規制する大いなる定型がここで意識化され、その枠組みをどう超えるかが問われようとしているのである」と評された。(美術手帖1984年5月号)。

『ニッポン・ウォーズ』は第29回岸田戯曲賞の候補作となる。劇団名は「セックス産業と間違えられるが、都市のわい雑なイメージを劇団名から連想してもらえば」と川村は語っている。しかし、劇団事務所には「愛人バンクか」とたびたび電話がかかっていた。 

 

  1984年2月リーフレット

 

img506.jpg img505.jpg

 

3月15日~25日、鳥獣戯画『好色五人女』『好色一代男』

井原西鶴原本の二本立て。前者は、お夏、おさん、お万、おせん、お七という五人の女の恋のオムニバスを、石丸有里子が一人で演じた。後者は、主宰の知念が世之介役で昭和57年度シアターグリーン・ウィンターフェスティバル個人賞を受賞している。

 

 

3月28日~4月1日、空中劇団いよいよ『冬の蠅またはゴジラ』

ゴジラという突然で、理不尽な存在が姿を変えて、ある”おじさん”の日曜日に侵食を始める話。キャストの佐藤浩一はその後、劇団解散を機に、’86年善人会議に入団。そのいきさつについて横内謙介Diaryによれば、「空中劇団いよいよが解散して、路頭に迷ってた佐藤浩一クン(現・茅野イサム)が、スズナリのバラしに勝手に参加して、打ち上げに潜り込み、善人会議に入れて下されと言って来た頃である。」とある。佐藤は茅野イサムの名で善人会議の中心的な俳優として活躍したが、2002年より演出家に転身。現在(2021年)でも様々な舞台の演出を手がけている。

 

1984年3月リーフレット

 

img533.jpg img532.jpg

 

4月3日~8日、善人会議『たとえばオアシスに降る雪のように』

「世の中は今、病んでいる。この世の中を力強く生き抜くのには、ややヒステリー気味の性格者ほうが、むしろ適しているのだ。と、精神科医までが云っている。今や狂気は生きる術なのである。」

「僕たちはここ何度か『優しさ』をテーマに芝居を創ってきたが、僕達が生きる力として探ってきた『優しさ』とは実は優しさという病、または狂気に他ならないのかもしれない。」(当日パンフレットより)

 

4月13日~15日、劇団渦『東京原人』

 

4月20日~22日、コント赤信号なかよしの会『マゼラン・ブルー』

コント赤信号のメンバー、渡辺正行、石井章雄(ラサール石井)、小宮孝泰が、コント赤信号なかよしの会を結成。作を第三舞台の鴻上尚史、演出を第三エロチカの川村毅が担当。キャストに室井滋、日高のり子、巻上公一が加わるなど注目の舞台であった。(劇団七曜日から若き日の近藤芳正も出演)。プロデューサーは第三舞台の振付を担当した土井美和子。打ち上げは下北沢のジャンプ亭でおこなわれ、その席で数人の酔漢にからまれるトラブル発生。その場はいったんおさまったが、外へ出てみると先の酔漢たちが待ち伏せしており、たちまち乱闘騒ぎになるという珍事発生。

 

1984年4月リーフレット

 

img555.jpg img554.jpg

 

4月27日~5月13日、第七病棟『ふたりの女』

石橋蓮司、緑魔子を中心とする劇団第七病棟に唐十郎が書き下ろし、1979年に初演された『ふたりの女』。初演時に高い評価を受け、演劇ファンのあいだで語りつがれてきた名作の5年ぶりの再演である。源氏物語「葵」の巻を素材にし、光源氏と彼をめぐる二人の女を主人公にしているが、舞台は伊豆の精神病院。石橋が医師・光一を演じ、緑が精神病患者・六条と医師の婚約者・アオイの二人を演じた。

 

5月16日~20日、人間アンテナ『ラストシーン』

 

5月25日~6月13日、転位・21『ゼロの神話』

前年1月に起きた千葉大女医殺人事件をモチーフに山崎哲が舞台化。犯罪フィールドノート・シリーズ第8作。「逮捕された直後の夫の写真をみると、無表情、無感動の様子が印象に残りました。すぐ、これを芝居にしようと思いました」「容疑者の夫は高校生の時にも、学校爆破を予告電話するなど、自分を演出するくせがあった。今度の殺人事件は、現実感が薄い新婚夫婦の死に向かうゲーム、ふたりの遊戯ではなかったか、と仮設を立てました」(’84年5/21朝日新聞)

 

1984年5月リーフレット

 

img577.jpg img576.jpg

 

6月15日~19日、鬼宴『鬼宴版 豊後訛り節』

脚本:藤田傳、演出:関矢幸雄のコンビで1975年にスタートした鬼宴。今作は劇団1980(イチキュウハチマル)の主宰者、藤田が脚本・演出を務めた。

1974年に大分県で起きた一家三人保険金殺人事件をモチーフにしており、藤田は数年にわたる取材ののち、劇団櫂に『異説・豊後訛り節』を書き下ろし、今作はそれをもとに鬼宴にむけて書き下ろされた

 

6月22日~24日、座座座『僕の食べた夢Ⅱ』

旗揚げ二年目の座座座。好評だった『僕の食べた夢』の再演を、青年座の越光照文が演出。

 

6月27日~7月1日、アジア劇場『風の匂い・5 ~海底のシンデレラ・ボウイ~』

 

風の匂いシリーズ第5弾。大韓航空撃墜の夜、オホーツクに消えた一隻の漁船。情報戦争の渦中、異次元に迷い込んだ乗組員たち。アジア劇場版浦島太郎、渾身の野心作。

 

1984年6月リーフレット

 

img579.jpg img578.jpg

 

 

1984年7月~12月コチラ 

 



 1984年(昭和59年)という時代

 

【国内主要ニュース 】

 

三浦和義「ロス疑惑」騒動始まる。

中曽根首相が首相として戦後初の靖国神社参拝

福岡県の三井三池鉱業所有明鉱で坑内火災が発生。死者83人、重軽傷者16人

登山家・植村直巳が世界で初めて北米のマッキンリー冬季単独登頂に成功し国民栄誉賞を受賞、その後、消息を絶つ

サッカー・釜本邦茂選手が引退を表明

尾道市の青山病院で火災、死者6人

「かい人21面相」がグリコへの脅迫を始める(グリコ森永事件)

M6.8の長野県西部地震が発生、死者29人

山陽線西明石駅構内で運転手の酒酔いにより寝台車が脱線

一万円札・福沢諭吉、五千円札・新渡戸稲造、千円札・夏目漱石を肖像とした新札が発行される

 

 

【 海外主要ニュース 】

  

インドのインディラ・ガンディー首相が護衛者に暗殺される

イギリスから中国への香港返還に関する文書が調印

インド・ボパールの工場で有毒ガス漏出。死者約3,000人。その他の被害者約20万人。

レーガン米大統領,一般教書演説で「強いアメリカ」を強調。

第14回冬季オリンピック開催(ユーゴスラビア・サラエボ)

ソ連,アンドロポフ書記長死去。後任チェルネンコ。

植村直巳,世界初のマッキンリー冬季単独登頂成功。下山途中で消息を絶つ。

国連調査団,イラクが対イラン戦で毒ガスを使用したとの報告書を公表。

アフリカで飢餓深刻化。世界各国で救援活動起こる。

レーガン米大統領訪中(米は中国の4つの近代化支持,中国は米の軍事力増強支持で合意)。

第23回オリンピック開催(ロサンゼルス)。ソ連圈15国がボイコット。中国初参加。カール=ルイス(米)が陸上4冠。

 

 

【 流行歌 】

 

わらべ「もしも明日が…。」

チェッカーズ「涙のリクエスト」

中森明菜「飾りじゃないのよ涙は」

松田聖子 「Rock’n Rouge」

吉川晃司「モニカ」

薬師丸ひろ子「メイン・テーマ」「Woman “Wの悲劇”より」

サザンオールスターズ「ミス・ブランニュー・デイ」

中原めいこ「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」

石川優子とチャゲ「ふたりの愛ランド」

小泉今日子「ヤマトナデシコ七変化」

小林麻美「雨音はショパンの調べ」

郷ひろみ「2億4千万の瞳」

安全地帯「ワインレッドの心」

 

 

【 日本映画 】

 

里見八犬伝』

『メイン・テーマ』

『愛情物語』

『空海』

『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』

『喜劇・家族同盟』

『ときめき海岸物語』

『五福星』

『上海バンスキング』

『夏服のイヴ』

『天国の駅 HEAVEN STATION』

『瀬戸内少年野球団』

 

 

【 外国映画 】

 

 

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』

『キャノンボール2』

『プロジェクトA』

『フットルース』

『ステイン・アライブ』

『ネバーセイ・ネバーアゲイン』

『ジョーズ3』

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』

『ポリスアカデミー』

『ザ・デイ・アフター』

 

 

【 ベストセラー 】

 

浅田彰『構造と力』

小学館『日本大百科全書』25巻

平凡社『平凡社大頁科事典』16巻

ホイチョイ・プロダクションズ『見栄講座』

板東英二『プロ野球知らなきゃ損する』

渡辺淳一『愛のごとく』

赤川次郎『三家猫ホームズのびっくり箱』

宮尾登美子『天璋院篤姫』

中島みゆき『伝われ 愛』

渡辺和博・タラコプロダクション『金魂巻』

 

2

 

2/3~2/5

演劇集団

アジア劇場

 『風の匂い・4

~海底のシンデレラ・ボウイ~』 

  

img507.jpg

 

  

 

ザ・スズナリ

五劇団連続競演

第三弾!

新世界聖愚伝

 

2/8~2/12

ネヴァーランド・

ミュージカル・コミュニティ

 『ハッケヨイ'84』 

 

 

img511.jpg

 

 

2/15~2/19

十月劇場

 『虫歯おばさん』

~よりそって僕と君~

 

 

img515.jpg

 

 

2/21~2/26

第三舞台

 『宇宙で眠るための方法について』 

 

img520.5.png

 

2/29~3/4

ブリキの自発団

 『ナンシー・トマトの三つの聖痕』 

 

img525.jpg

 

3/7~3/11

第三エロチカ

『ニッポン・ウォーズ』

 

 

img536.jpg

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

  

 

 

3

 

 

 

 

 3/15~3/25

鳥獣戯画

『好色五人女』

『好色一代男』

 

img544.jpg

 

 

 3/28~4/1

空中劇団いよいよ

『冬の蠅またはゴジラ』

 

 img547.jpg

 

4

 

4/3~8

善人会議

『たとえばオアシスに降る雪のように』

 

 img556.jpg

 

 

 4/13~15

劇団渦

『東京原人』

 

img558.jpg

 

 

4/20~22

コント赤信号

なかよしの会

 

『マゼラン・ブルー』

 

img562.jpg

 

 

4/27~5/13

第七病棟

 

『ふたりの女』

 

 img568.jpg

 

5

 

5/16~5/20

人間アンテナ

『ラストシーン

 

img570.jpg

 

 

5/25~6/13

転位・21

『ゼロの神話 

 

img580.jpg

 

6

 

6/15~19

鬼宴

『鬼宴版 豊後訛り節』

 

 img583.jpg

 

 

6/22~24

座座座

『僕のたべた夢Ⅱ』  

 

 img589.jpg

 

 

6/27~7/1

アジア劇場

『風の匂い・5』

 

img591.jpg

 

 

◀ 1983年7~12月へ    1984年7~12月へ