1981年 上演の軌跡
1981(昭和56年)
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3/20~22 ♦ホンダスタジオ 『黄昏のボードヴィル ~まさご版~』
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概説 (以下敬称略) 新東宝ニューフェイス第4期生として映画俳優を志していた本多一夫は、所属していた映画会社の倒産を機に実業家に転身。下北沢の飲食店経営で大きな成功をおさめていた。
1981年、本多によりグループ初の劇場として開場。 1969年(昭和44年)築、木造二階建ての鈴なり横丁"は一階が飲み屋、二階がアパート(アパート名は下北沢荘。「すずなり荘」と表記されたWebページもあるが誤りである)という造り。そこへさらに劇場が造り込まれた。建物全体が鉄骨補強され、アパートの半分はホール、残り半分は下宿部屋のまま楽屋や事務所、ロビーとして利用され、「飲み屋」+「下宿アパート」+「劇場」という異形且つ、生活者空間のなかにスズナリは誕生した。
当初は、本多が所長をつとめる俳優養成所ホンダスタジオの稽古場兼、公演発表の場として、また翌年オープンの本多劇場の稽古場としてつくられたスズナリだったが、開場してまもなく、「稽古場にしておくのはもったいない、劇場としてつかわせてほしい」という声が高まり、自然に劇場の軌道にのってゆくことになる。
3月20日~22日、開場後初の演目は本多が所長をつとめる俳優養成所ホンダスタジオ第一期生の卒業公演『黄昏のボードビル ~まさご版~』。養成所の卒業公演とはいえ、作:斉藤憐(書きおろし)、演出:岡村春彦、チーフディレクター:竹内敏晴というぜいたくな顔ぶれであった。
6月11日~14日、劇団民芸の演出家でホンダスタジオの特別講師、のちに新宿タイニイアリスの支配人となる丹羽文夫の演出によるアクターズスタジオ どらまん のアトリエ公演『ああ、救いは・・・』がつづく。
6月18日~29日、外部劇団によるはじめての本公演が転位・21によっておこなわれた。『うお傳説 ~立教大助教授教え子殺人事件~』(作・演出:山崎哲)は、ザ・スズナリの実質的なこけら落としといえる。劇評家の扇田昭彦は次のような劇評をのこしている。
『うお傳説』は翌年第26回岸田國士戯曲賞を受賞する。
7月5日~14日、ブリキの自発団、第1回公演『ユービック』(作・演出:生田萬)。劇団「天井桟敷」の街頭劇などにも参加した生田は、前身の劇団「魔呵魔呵」を発展的に解消。今作は「ブリキの自発団」の旗揚げ公演であった。終末感ただよう近未来的視点から批評的に時代を解体し、80年代の若者から大きな支持をうけることになる。アングラ演劇の女王と呼ばれた銀粉蝶出演。
7月17日~20日、劇作家であり演劇雑誌テアトロ編集部に勤務していた小松幹生を座付き作家にむかえ、演劇集団ACT『新宿発十七時十分』上演。70年代後半、女子プロレスのアイドル的存在だったビューティ・ペアのマキ上田が出演した。(演出:吉田悟)
8月23日~29日、ホンダスタジオ『説教強盗』。作:金杉忠男、美術:朝倉摂。演出陣には演出:小林勝也、演出助手:西川信廣と現在の文学座の重鎮がならぶ。
8月30日~9月8日、演劇同人フルーツジャムスペシャル『夏の夜の夢の夢~完結編~』+『友部正人スペースシャトルツアー』。ザ・スズナリオープニング記念として出演:友部正人、中川五郎、中山ラビ、三井誠、田中チムはじめ、ゲストに西岡恭造、加川良、チャールズ清水、伊藤銀次、村上律、佐野元春、谷川俊太郎、あがた森魚、坂口芳貞、田島征三、井上陽水、小室等、宇崎竜童と豪華をきわめた。
9月11日~12日、のちにシアタークラシックスを主宰する三田地里穂の作・構成・演出により、ホンダスタジオ『誰も知らない私 わたし 私』。
9月26日~10月4日、小松幹生連続作品公演第3弾と銘打ち、演劇集団ACT『八人の腕時計』(作・演出:小松幹生)。
10月11日~14日、演劇同人フルーツジャム『下北心中物語』(作・構成:安田昌史、金丸出)。
10月23日~27日、ホンダスタジオ『マリアの首 ~幻に長崎を想う曲~』(作:田中千禾夫 演出:鈴木完一郎)。田中千禾夫の名作を青年座の鈴木完一郎が演出した。
10月31日~11月9日、秘法零番館『戸惑いの午后の惨事』(作・演出:竹内銃一郎)。前身の斜光社を2年前に解散し、この年『あの大鴉、さえも』で第25回岸田戯曲賞を受賞したばかりの竹内銃一郎ひきいる秘法零番館。出演者の木場克己や辻󠄀親八はテレビ、舞台へと活躍の場を広げてゆく。
11月14日~29日、転位・21『砂の女』(作・演出:山崎哲)。山崎によれば、「連合赤軍を扱った国内初の作品だったのだが、殴り込むという予告電話を受けた」いわくつきの作品であった。出演者のなかに、現在、燐光群主宰・坂手洋二やベストセラー『人は見た目が9割』の著者・竹内一郎の名が見える。
12月2日~6日、早稲田大学第二文学部演劇科に籍を置き、早稲田の劇団「こだま」の演出家であった高谷信之が卒業後、旗揚げした劇団八騎人。『ふりむくな次郎長』(作・演出:高谷信之)
12月23日~25日、音楽ライブ『LIGHT MUSIC CONCERT』。爆風銃(爆風スランプの母体)らが出演。
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6/11~14 ♦アクターズ・スタジオ どらまん 『ああ、救いは・・・』
6/18~29 ♦転位・21 『うお傳説』
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7/5~14 ♦ブリキの自発団 『ユービック』
7/17~20 ♦演劇集団ACT 『新宿発十七時十分』
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8/23~29 ♦ホンダスタジオ 『説教強盗』
8/30~9/8 ♦演劇同人 フルーツジャムスペシャル 『夏の夜の夢の夢』 + 『友部正人スペースシャトルツアー』
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9/11~12 ♦ホンダスタジオ 『誰も知らない私 わたし 私』
9/26~10/4 ♦演劇集団ACT 『八人の腕時計』
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10/11~14 ♦演劇同人 フルーツジャム 『下北心中物語』
10/23~27 ♦ホンダスタジオ 『マリアの首 ~幻に長崎を想う曲~』
10/31~11/9 ♦秘法零番館 『戸惑いの午后の惨事』
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11/14~29 ♦転位・21 『砂の女』
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12/2~6 ♦八騎人 『ふりむくな次郎長』
12/23~25 ♦LIGHT MUSIC CONCERT
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