今号の巻頭言

辺野古―史上初の「代執行」で埋め立て強行 
島 しづ子(しま しづこ うふざと教会牧師・抗議船船長)

 

 

 誰でも大浦湾を見たら、その美しさに感嘆すると思う。機会があればグラスボートに乗るといい。アオサンゴの森が見え、カラフルな魚たちにも会える。海亀もいる。生き物の宝庫を壊すのは天に唾する行為だ。
 2023年12月28日斉藤鉄夫国土交通相は、地方自治法に基づく「代執行」で、玉城デニー沖縄県知事に代わって沖縄防衛局の設計変更申請を承認した。国が自治体の法廷受託事務を代執行するのは史上初である。承認を得た防衛省は2024年1月12日に大浦湾側の工事に着手する、と最初新聞は報じた。
 辺野古新基地建設抗議海上チームは、新年4日から監視を再開した。新聞が報じた着手日より早い1月10日、沖縄防衛局は大浦湾への護岸造成工事のための海上ヤード(資材置き場)設置工事を開始した。その場所は水深数m~10mくらいかと思われた。投入される石材からは砂煙があがり、辛い景色であった。その辺りも軟弱地盤と呼ばれる堆積層があり、トウカムリという大人の頭大くらいにもなる貝が生息しているそうだ。大浦湾の奥まった瀬嵩前浜には950種類もの大小さまざまな貝が流れ着く。水深70m以上という軟弱地盤由来の貝も流れ着く。軟弱地盤というのは人間の都合であって、そこに住む生物たちにとっては命のゆりかごなのだ。
 私が参加した日、辺野古漁港を出発し大浦湾に出ると激しい波で大浦湾を横切ることは難しかった。1月の海は荒れることが多いが、大浦湾は海底の起伏が激しく波も一様ではない。工事は難航を極め、完成は不可能だろう。公益に反する環境破壊だけが進む。一年の何日かは台風や海況によって工事が中断されよう。沖縄県民の70%以上が反対しても止まらない工事を一時であれ、唯一止めるのが台風である。だから人的被害が無い限り、台風は歓迎だ。玉城知事は12月27日、「多くの県民の民意に反する」として福岡高裁那覇支部の判決について最高裁に上告した。2024年3月1日、最高裁は沖縄県の上告を退けた。法の番人はどこに?



 

(たぁくらたぁvol.62)