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ニュー・ヤンキース

中学生硬式野球チーム

指導方針

子どもたちを指導するにあたって

少年硬式野球チームの中には、「強くなりたい」・「勝ちたい」という思いが先行し、本来の少年野球の目的を見失っているケースが多々見受けられます。
当たり前のことですが、最も大切なこと(目的)は、少年野球を通して「健康な身体」・「健全な精神」を養うことにあります。
ただし、野球だけでなくスポーツには「勝敗」があり、「勝者」になることを目標に切磋琢磨することはとても重要なことです。
最初は目的と目標は分かっていますが、指導に熱中していくうちに一番肝心な目的を忘れ、目先の目標ばかりに気をとられ、発育過程でまだ未熟な身体の子供たちに過剰な負担をかける無茶な練習をさせたり、子供たちの人格を無視して目にあまる言動を子供たちに平気で浴びせ、あげくの果て大切な子供の身体と心を傷つけ壊してしまうという悲しい事例が多くあります。
大人の勝手な都合で子供を傷つけ壊してしまうことは罪悪です。
私たちは上記のことを肝に銘じ、指導者として以下に述べる「指導方針」に基づき子供たちを指導していきたいと考えております。


指導方針

1.学業とスポーツの両立

学業そっちのけで、言葉は悪いですが、世間でよく言われる「野球馬鹿」を育成しても将来子供たちにとって何の役に立たないばかりか、子供たちが困るだけです。
当チームは、学業とスポーツを両立させたバランスの良い中学生の育成を目指します。

2.子供たちは 「野球が大好き!」

「野球がイヤになった」と言ってチームを去っていく子供たちが多くいます。これは「野球がイヤになった」のではなく、正しく言うと「野球の練習に参加するのがイヤになった」ということだと思います。
子供たちをそういう気持ちにさせた最大の原因は「指導の仕方」に問題があったからだと思います。また子供たちに「野球が好きになるように指導する」などと言う指導方針も逆に大人の単なる自己満足に過ぎず、子供たちは大人に言われずとも、もともと「野球が大好き!」なのです。
大好きな野球を、さらに自主的な気持ちで取り組めるように指導していくことが重要なポイントだと考えています。

3.少年(中学生)硬式野球の存在意義をよく考える

これは私の個人的な見解ですが、本来は中学生(12~15才の少年)の身体に適した野球は、軟式野球だと思います。いわゆる中学校でのクラブ活動の野球です。
高校に入ってから硬式野球を始めても決して遅すぎることはありません。
中学時代の硬式野球経験者との差(硬式ボールの慣れ)も約1~2ケ月で無くなります。それよりも少年硬式野球の最も心配な点(マイナス部分)は、硬式ボールは12~15才の成長過程の子供たちの身体(肘・肩)に与える負担が大きく、故障(壊してしまう)してしまう可能性が高いという点です。
しかし、本来の理想であるべき中学校でのクラブ活動の野球の現状はあまりにもひどすぎます。
・野球経験のない先生が責任教諭(監督)をしている場合が多く、まともに技術指導ができない。
・学校側から無理やり野球部の責任教諭をやらされ、仕方なしにしている先生が多い。
・クラブの責任教諭が不在の時は練習できない。
・日曜、祝日に学校のグランドが使用できないため練習が行えない。
・挙げ句の果てには、中学校に野球部がない。
等々 問題点というより末期的な状況にあり、本気で野球をやりたいという生徒にとっては残酷過ぎる環境にあります。
これは現在の学校教育制度がもたらした悲劇であり、我々にそれを改善することなどできません。
そこで、民間の少年硬式野球チームが、本気で野球をやりたい中学生に対して「大好きな野球ができる場を提供」しているという大きな存在意義(価値)があると思います。
少年硬式野球のマイナス部分を十分に認識したうえで、指導者が正しい姿で子供たちを導いていければ素晴らしいことだと思います。

4.ケガと故障を防ぐ

野球にはケガと故障はつきものだといってしまえばそれまでですが、大好きな野球を永く続けていくには、ケガと故障を防ぐ努力は必要です。
それには、まずケガと故障をする原因を知り、そして防ぐ方法を理解しなければなりません。
※ ケガ
ケガをする原因として大きく分類して次の5つのケースがあります。
① 準備運動(体操・ストレッチ・ランニング)の不足で十分に身体がほぐれていない状態で、いきなり激しい運動をした時。
② 普段運動をしていないのに、急にきつい運動をした時。
③ 集中力を欠き注意力が散漫な状態の時。
④ 本人のレベルを超えることを無理にさせた時。
⑤ 不可抗力である程度防ぎようのないケース
(例えば、デッドボールやイレギュラーバウンドがあたりケガをするケース)
①~④のケースは、注意をしていれば防ぐことができますが、問題は⑤のケースです。
・デッドボールのよけ方 ・デッドボールのあたり方 ・イレギュラーバウンドの捕り方
など技術的な練習により、小さなケガですんだり、ケガを回避したりすることは可能です。
これらのことは何度も何度もしつこいぐらい繰り返し教えていきます。
また、常にグランドをベストの状態に保ち、グランド整備も繰り返し行うことにより、危険性を低くすることに努めます。
※ 故障
少年野球における深刻な故障の大部分は「ひじ痛」と「肩痛」です。「野球肘」とか「野球肩」といわれているものです。
原因は骨や筋肉が成長過程(未熟な状態)であるところに、過剰な負担をかけるからで、過度の投げ過ぎや、悪いフォームで投げることにより肘・肩の関節部分の軟骨がずれたり、すり減ったりして神経を刺激して痛みがおこります。
関節部分の軟骨を覆っている筋肉を強化すれば、その筋肉が関節をガッチリ保護して軟骨のずれや消耗を防ぎます。
それと投げ過ぎを絶対にさせず、悪いフォームを矯正し、投球後のランニング・体操・ストレッチ(クールダウン)を十分に行えば野球生命にかかわるような致命的な肘・肩の故障をすることは絶対にありません。また、投手の肘や肩に大きな負担がかかる変化球(スライダー・シュート・チェンジアップ・フォークボール等)は投げささずに、直球とカーブの2球種しか投げさせません。
少年野球のレベルでは打撃技術も未熟で、変化球を多く投げれば抑える確率は高くなり、すなわち勝つ確率が高くなるということですが、投手の肘・肩にかかる負担は増して故障してしまいます。
勝つことも野球にとって大切なことですが、勝つことにこだわり過ぎれば、子供たちの身体を損ねてしまいます。少年野球においてそこまでの代償を払ってまで勝つ必要性はないと思います。
野球の専門技術を習得させること以上に、ケガと故障の予防に指導のポイントを置きたいと思っています。

5.野球の危険性を十分に教える

野球は国民的スポーツとして多くの人々が注目しています。テレビや新聞でも大きく取り扱われて、華やかな部分だけがクローズアップされています。また、子供たちの多くは甲子園球児やプロ野球のスター選手を夢見て野球に取り組んでいます。
夢を持って野球に取り組むことは大変素晴らしいことだと思いますが、野球の華やかさの裏側に潜んでいる「危険性」を実際どれだけの子供たちが分かっているでしょうか。
石のように硬い硬球ボールを時速100Km以上で投げたり、打球ともなれば痛烈なライナーのスピードはその倍にも及びます。また、バッターは金属バットをブンブン振り回し、ランナーは靴底に金属の刃がついたスパイクで猛然と滑りこんできます。
スポーツの中でも野球は危険性の高い競技です。野球の楽しさや素晴らしさと一緒に「こわさ」もきっちりと理解させていきたいと思います。
硬球ボールを使った野球は、大阪弁で言うと「ほんまもんの野球」です。「ええ加減な気持ちでやったらあかん。真剣にせなあかん。」と何度も言い聞かせ、頭の中にたたき込んでいきます。

6.平日の練習

普段はチーム全体でのグランドを使った練習は土・日の週2回と祝日だけですが、中5日の平日をなにもせずに過ごせば、せっかく鍛えた身体がすぐに元に戻ってしまいます。また元に戻った状態で少々きつい運動をするとケガや故障の原因になり、悪循環を繰り返してしまいます。かといって、平日毎日グランドで練習することは現状では非常に困難です。
子供たちが自転車で通える近場に専用球場があって、平日の夕方に必ず来られる監督やコーチがいれば話は簡単なのですが、民間の都会にあるチームとしては最大の課題だと思います。
そこを補う方法は、子供たち選手の自主的なトレーニングしかありません。野球が楽しくなり、上手になることに喜びを感じるようになれば、おのずと自らが進んで素振りやランニングをするようになります。そうすれば、せっかく鍛えた身体が平日の間に元に戻ってしまうこともなくなり、悪循環から抜け出せます。
子供たち個々に「平日トレーニング・メニュー」を作り、課題を与えていきます。また学校の休み期間中は、平日でもより多く練習ができるよう計画していきます。
とにかく、子供たちにとって、やる気のでるような雰囲気のチームにしていきたいと思っています。

7.理論をやさしくかみくだいて教える

「声を出せ」・「ボールを上からたたけ」・「体の正面でボールを捕れ」とかよく言いますが、なぜそうしなければいけないのか(理論)を、基本的なプレーから指導していきます。
意味も分からずただ言われたままにやっていても身につきません。
野球の理論をしっかりと身につけていけば、高校に進んでからとても役立ちますし、将来現役を引退した後も、指導者という違う形で大好きな野球に携わることもできます。

8.野球が子供を育てる

子供のしつけは家庭や学校だけでは難しいと思います。子供たちにとっては、野球というミニ社会での経験が人間形成の上においてとても重要だと考えています。
野球技術の向上だけが少年野球の目的ではありません。多くの仲間たちと共通の目標や、それぞれ個々の目標に向かって努力することにより、協調性や忍耐力が身についていきます。
挨拶・返事・礼儀といった基本的なことから、チームや自分の道具を大切にすること、グランド整備・道具運びなども子供たちに教え、最終的には野球をさせてもらっている親への感謝の気持ちを養わせることにあります。野球という社会が子供たちに正しいしつけをし、大事な成長期の子供たちを正しく育てることにつながると思っています。
多くのチームが、親が当番制でグランド整備や掃除、道具運びをさせられ、そのうえ指導者に対してのお茶や食事の世話までさせられているのが現状です。
はっきり言って、これは真の野球ではありません。また奉仕活動でもなく、指導者の優越感や自己満足の世界を満喫しているだけで、そのような姿勢でまともな子供たちへのしつけができるはずがありません。子供たちにできないこと(送迎車の運転や野球費用の支払い等)は親のバックアップが必要ですが、それ以外は子供たち自身にさせなければ野球をする意味がありません。少年野球には親の必要最小限の協力は不可欠ですが、過度の世話はしつけにとって逆効果になります。
少年野球の世界では主役は子供たちです。子供たちが「野球選手としての自覚と誇り」が持てるよう、指導していきたいと思っています。

9.スポーツにおける公平性とは

子供たち一人一人それぞれ異なった身体力や性格の強さや弱さを持っています。全ての子供たちに一律に同じ内容の練習メニューを課すことは、逆に身体力や精神力の弱い子供をつぶしてしまうことになります。
個々の能力や性格をかんがみ、それぞれの精神力の許容範囲や身体能力を超えるような無茶な指導はいたしません。
かといって身体力や精神力の一番弱い子供を基準とした指導もいたしません。選手それぞれの能力に適した指導をしていきたいと思っています。
そこで「うちの子はよく叱られているのに、○○君はあまり叱られない」とか「うちの子より○○君の方に目をかけてよく練習させている」などと思わないようにして下さい。
スポーツの世界においては、全ての選手を全ての面において均等に扱うことは公平なことではなく、逆に不公平なことだと思っています。優劣が生じることは仕方ありません。
えこひいきではなく、子供たちの個人差を考慮したうえでの指導を行っていきますので、どうかご承知おき下さい。
ただし、人格やプライドは全ての子供たちそれぞれ同じ価値であり、個人差などありません。人格面においては全ての子供たちに対して尊重し、公平に接していくことをお約束いたします。

10.ほめてあげよう!

「欠点・短所だけを指摘して、注意ばかりしていれば大人でもイヤになってくるものです。特に子供たちにとってはそれが精神的重圧(プレッシャー)となり、楽しさも薄れてきます。
欠点・短所を的確に注意することも必要ですが、プラス子供たちの良いところを見つけてほめてあげることも大切だと思います。
機嫌取りでほめるとのぼせあがってしまうので逆効果ですが、良かった点はちょっとしたことでもどんどんほめていきたいと思います。
そうすればそれが子供たちの自信となり、次には積極的な気持ち(自主性)へと結びついてくるからです。
例えば、内野手がゴロをダッシュよく前に出たが、ボールをはじいてエラーしてしまった場合。勇気をもって前にダッシュしたことをほめる。そしてボールをはじいた理由を教える。
エラーしたことだけを叱ると、次は良かった前へのダッシュもしなくなり、いくら練習しても少しも上手にならず、下手になる危険性さえあるからです。
結果だけを見て叱ることは禁物です。また正しいゴロの捕り方を教えたとしても、すぐにゴロの捕り方がうまくなるわけがありません。野球はそんな単純なスポーツではありません。繰り返し何度も何度も練習してやっと身につくものですから、忍耐強く、辛抱強く指導していきたいと思っています。
保護者の方も一緒に、どんどん子供たちをほめて上げましょう。

11.子供たちの人格を尊重した指導を心がける

当たり前のことですが、子供たちも大人と同じ人格を持っています。
子供たちの人格を傷つけるような言動や行為は絶対にいたしません。意味もなくアホ・ボケと怒鳴ったり、また体罰を与えることなど最低の指導者のすることだと思っております。
元気を出せ! 気を抜くな! 頑張れ! 等の叱咤激励はどんどんしますが、子供たちの人格を尊重した指導を心がけます。
少年野球はあくまでも子供たちの教育の一環として取り組んでいかなければならないと思います。
私たちは教育者ではありませんが、子供たちを指導している時は教育性をもって子供たちと接していきたいと考えております。

以上

監督 加古 誠