・STORY・

2023-02-03 11:07:00

【ワンシーン公開!】ある日の帰り道…インドカレー屋で起きた事件とは?!

今回は、本編の秘蔵映像を公開いたします!

 

とあるオフィスの終業時間間際…

 

Y 「お腹が空いたなあ」

 終業時間間際のオフィスにてYはふと呟いた。オフィスの隅から隅まで聞こえるのではないかというような大きな声で。

 新入法務部員Yの手元には近日中に読み込まなければならない契約書の山が所狭しと積まれており、その読み込みが終わる気配は全くなかった。とはいえ、そんなことはいつものとおりでありYはまったく気にしてなかった。Yの上司もそんなYの姿に気づいていながらも人手不足を口実に見て見ぬふりを繰り返していた。

A 「よう、じゃあいつものインドカレーでも食べに行こう」

 これまた、終わる見込みのない仕事の山に埋もれた同僚の法務部員AがYに話しかけた。

B 「いいねえ」

 Yよりも先に、BがAの言葉に反応した。Bは法務島のすぐ近くにある人事島の人間である。彼女は基本的に面接を担当することが多いが採用するか否かはくじで決めていたのであった。

Y 「じゃあ、Cも誘って行こうよ、たぶんまだオフィスにいるでしょ」

 ちなみに、Cはこのメンバーと仲の良い経理担当の人物であり、基本的に着服できる会社の資金はかたっぱしから着服していた。

 

 YABCの4人は常連となっている職場近くのインドカレー屋に直行した…

 

A「あ、財布忘れた。Bさ、おごってよ」

B「嫌だよ、Cにでも借りな」 

 

空腹に耐えきれず、お気に入りのカレーを注文するYら。

この後、あんな悲劇が起きることになるとは思いもよらずに…

 

YABCを襲う悲劇とは一体何なのか。気になるストーリーの続きと全貌は、今後のインテグリティー・レターで徐々に明らかになっていきます。

 

 さて、今回は、「インテグリティー・レター」の制作スタッフの好きな法律の話を紹介します。

 テーマは「無銭飲食と刑法」。

 このテーマの面白いところは、一般的な常識や感覚ではなく、あくまで理論を大事にしているところが如実に表れており、ある種の潔さが感じられる点です。

 

 突然ですがクイズです。

 次のうち、犯罪とならないのはどのケースでしょうか?

 

A 飲食店に入り、最初からお金を払わないつもりで注文し食事を行ったケース

B 飲食後に財布を忘れたことに気づき、お金を払う気がなくなり、店員の目を盗んで店外に出ていったケース

C 飲食店に入り、注文後に財布を忘れたことに気づき、お金を払う気がなくなり「お金を下ろしてくる」といった嘘をつき、店員に店外に出ることを許諾させ、店外に出て逃げたケース

 

 感覚的にはどれも迷惑で犯罪になりそうですが、1つだけ犯罪が成立しないケースがあります(あくまで刑法の理論上はですが…)

※ちなみに、事前に食券を食券販売機で買うタイプの飲食店の場合には結論が異なりますので、今回は店員さんに注文して、飲食が終わった後に代金を支払うタイプの飲食店を想定してください。

 

 

答えは、Bです。

 

その理由を解説します。

 

◆Aのケース

 Aのケースでは、注文した時点で詐欺(未遂)罪が成立し、注文した料理の提供を受けた時点で詐欺罪が成立します。

 詐欺罪が成立するためには、大まかに分けて、①何らかの財産的価値のあるものを得るために、②相手方を騙す意思をもって、③相手方を騙す行為を行い、④相手方に勘違いをさせ、⑤その勘違いに基づいて財産的価値のあるものの提供を受けたり、財産上の利益を得ることが必要となります。

 今回だと、お金を払わないつもりなのにもかかわらず、飲食物という財産的価値のあるものを得るために、店員に対し、お金を払うつもりである風を装い注文をするという行為を行っているので注文した時点で詐欺(未遂)罪が成立します。そして、飲食物の提供を受けた時点で詐欺罪が成立します。

 ちなみにですが、③の相手方を騙す行為が開始された時点で詐欺未遂罪は成立するので、今回の場合、仮に近くのお店でも無銭飲食事案が多発していて犯人の顔写真が公開されている等の事情があって店員さんが支払う意思がないことに気づいて飲食物を提供しなかったとしても、注文行為時点で詐欺未遂罪は成立しているので、犯罪が成立することに変わりはありません。

 

※1 注文するという行為の中には「ちゃんと代金を支払います。」という意味が当然に含まれていて、注文を受けた店員さんも代金を支払ってもらえるものと勘違いして飲食物を提供してしまうおそれが非常に高い行為ですので、代金を支払う意思がないのにする注文行為それ自体が③の相手方を騙す行為に当たります。

 

◆Cのケース

 Cのケースでは、逃げるため、すなわち、本来なら払わなければならないはずのお金の支払を免れるために嘘をついた時点で詐欺(未遂)罪が成立し、店員が「わかりました。」と言って店外に出ることを許諾した時点で詐欺罪が成立します。

 今回だと、注文時点ではお金を払うつもりだったので、注文行為は③の相手方を騙す行為には当たりません。しかし、注文後に逃げるというのは、注文したことにより発生したお金を払うという義務を免れるということを意味するため、逃げることにより経済的な利益を得ることになります。そして、その逃げるという結果を得るために、店員に対し、実際には店外に出た後はお金を払いに戻ってくる気がないのにそのような意思があるような風を装い「お金を下ろしてくる」と言い、店外に逃げ出す行為には、詐欺(未遂)罪が成立します。そして、店員に「この人はお金を下ろしたら戻ってきて代金を支払ってくれるんだ。」と勘違いさせ(④)、その勘違いに基づいて店外に出ることを許可させています(⑤)ので、この時点で飲食代金を支払う義務を免れたと言えるので、詐欺罪が成立します。

 

◆Bのケース

 Bのケースも、一見するとAやCの場合と同様、詐欺罪が成立しそうです。というよりも、成立してほしいものです。

 しかし、注文するときにはお金を払うつもりがありますから騙す行為がありません。また、店外に逃げる段階でも、あくまで店員の目を盗んで逃げているだけですから騙す行為がありません。

 したがって、詐欺罪は成立しません。

 では、窃盗罪はどうでしょうか?注文した飲食物を盗んだのではと考えられそうです。

 実は窃盗罪も成立しません。

 冷静に考えると、飲食物はちゃんと代金を支払うつもりで注文して提供を受けているので飲食物を盗む行為はしていません。なお、お金を払う義務を免れる利益を盗んでいるとも考えられますが、窃盗罪は「物」を盗んだときに成立する犯罪なので、今回のように物ではなくこうした財産的な利益は窃盗罪の対象にはなりません。

 したがって、なんら犯罪は成立しないのです。



 私は、刑法の勉強を始めた大学生のころにこのような事例を授業で説明されなぜか感動したことを覚えています。たしかにBの行為は、常識的には非難されてしかるべきです。しかし、刑事罰という人に対し非常に不利益を与える行為がなされたときに、常識的に悪い行為だからなんとなく犯罪が成立するといった結論にはならない安心感が刑法理論には存在します。いい意味でも悪い意味でも融通の利かなさに感動を覚えました。

 また、一見すると納得いかないような、世間の常識とは離れた結論が法的には正しいということも、当時のひねくれていた私の心をくすぐってくれました。

 

 ちなみに、冒頭で、理論上は と断ったのは、実際に本人の主観上Bのケースだったとしてもそうだと納得させることは難しくAだったと判断されかねないからです。

 

(コラム担当:Y)

※本サイト上の記事は、公開時における情報をもとに作成しております。今後の法改正、経過措置期間の経過又は判例等により、記事の内容と現在の法律解釈又は運用との間に齟齬が生じる可能性もございます。ご注意ください。 

2022-12-21 17:00:00

【MGRコラム】法律という共通言語のある世界

インテグリティーレター(TV版)では新米法務だったYがマネージャーになるまでの軌跡。

Yは何を思ってマネジメントの道へ進んだのか?

インテグリティーを守るために奮闘するYの目まぐるしい日常の一部をご紹介!

 

法務グループのマネージャーのYです。

この記事はPepabo Manager Advent Calendar 2022の21日の記事を兼ねております。

 

年の瀬でもあるので、マネージャーを志すきっかけやマネジメントについてあれこれ振り返りつつ、パートナーから多く寄せられる質問に答えていこうと思います。

 

1 マネージャーを志すきっかけ

時は大分遡り、私が法務グループのリーダーになった頃のお話です。

上長と1on1をしたときに、リーダーにならないかというお話をいただきました。

正直なところ、自分が人を引っ張っていくような性格でもなかったので、本当にできるのか…という不安はありました。しかし、どうしてリーダーになってもらいたいか、なぜYでないといけないのかという話をする上長の熱意が凄かったことや、自分にしかできない仕事というワードに惹かれてしまったのでしょう。

はい、やりますとお返事しました。

マネジメントに進むぞと決めたのは上長の熱い説得がきっかけでした。

 

2 手段を問わず「なんとか」する

マネージャーになってから変わったことはたくさんあるのですが、その1つに「諦めが悪くなった」という点があります。

マネージャーは組織の目標達成がミッションです。目標達成のための手段は決められていないのであれこれ工夫する必要があり、ピープルマネジメントはその手段の1つです。

目標達成のためになんとかするのが仕事なので、諦めたら試合終了だ…とより強く思うようになりました。

「やるしかないから私はきっとできる」という発言をした時はポジティブ過ぎる!と笑いを誘ったこともありました(笑)

監督がネガティブになってしまったら、勝てる試合も勝てなくなるので、諦めるのは最後にしよう!と考えながら仕事をしています。

もちろん、人間なので心が折れそうになる日もあるのですが、お気に入りの入浴剤を入れた湯船に浸かり、レガリアのベッドで朝までぐっすり眠れば元気になります。

これをすればご機嫌になるというポイントを把握しているのは大事ですね。

 

3 どうやってタスク管理しているんですか?

1on1の時にパートナーからよく聞かれる質問です。私はいわゆるプレイングマネージャーのため、自分自身もプレイヤーとしても仕事をします。

これはマネージャーあるあるだと思うのですが、私はMTGでカレンダーがみっちりになりがちです。

そんな中で各タスクをチェックしたりしているので、どうしてるんですか?という質問を受けることが多いです。

正直に言うと、タスク管理は私もまだまだ課題ではあるのですが、工夫していることを1つ紹介します。

「朝起きた時や出勤する時に1日の段取りややるべきことを振り返る」ということをしています。

頭の中で今日1日がどんな1日になるかを考えながら、この時間にこのタスクをして、とか計画を立てています。

計画通りにいかないこともありますが、MTGとMTGの間の時間を最大活用できるようにする工夫の一つです。

 

4 法務のマネージャーでよかったこと

「法律という共通言語があること」です。

これは法務のよかったことでもあるのですが、法律という規範に立ち返ることができる点です。

日本が法治国家である以上、法務の分野において完全に答えがない問題というのはないと思ってます。例えば、Web3の領域など法律が追いついていない分野はありますが、そうだとしても既存の法律の解釈で対応することができます。

数多の法律があるので、見知らぬ分野は身構えますが、それはその知識がないから身構えるだけであって、調べたり勉強すればその不安を解消できるというのは大きいなぁと感じます。

また、マネジメントにおいて同期を図るときも、チームのメンバーはリーガルマインドを持っているため、同期が取りやすいです。共通言語があるというのは強みだなとひしひし感じます。

 

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2022-11-26 09:37:00

【挑戦!】世界は「もっとおもしろくできる」

青い法被に蝶ネクタイと紙芝居。

2022年に法務部門が世に放ったプレゼンは、世界観も、ビジュアルも、テーマも、なにもかもが斬新でクール?!

社内の仲間を大いに熱狂させ、企業法務史に革新をもたらした!?

 

今回は「インテグリティ・レター」の制作スタッフが

社内のプレゼン大会に参加した体験談をお届けします。

 

思い切ってやりたいことをやってみた話 ~世界はもっとおもしろくできる~

1 プレゼン大会「P-1グランプリ」

 

 「P-1グランプリ」とは、新しいアイディアをアウトプットするプレゼン大会でGMOペパボ株式会社の社内イベントの1つです。テーマは毎年異なりますが、テーマに沿った良い企画をプレゼンできれば、実際に予算がついて企画の内容が実現する可能性もあります。ちなみに、今年のテーマは「20周年イベント」でした。

  昨年入社した私にとっては初めてのP-1グランプリでしたが、昨年グランプリをとったメンバーが法務内にいたこともあり、このチャンスを私が逃すはずがありません。後は内容さえ決まれば完璧だったのですが、その内容がなかなか決まりませんでした(汗)

そうしたところ、法務マネージャーが「一緒に出ようよ」と声をかけてくださいました。応募締め切り日の当日の夜に、必死にマネージャーと一緒に企画書を作成してギリギリで提出したのは良い思い出です(笑)


2 プレゼンも「もっとおもしろくできる」

ペパボの企業理念は、「もっとおもしろくできる」です。

P-1グランプリでのプレゼンの方法は自由ですので、私は大好きな漫才でプレゼンをすることにしました。そして、漫才をすること以上にもっと「もっとおもしろくする」にはどうしたらよいかを考えました。ここでは、そうしたプレゼンの作成過程を「もっとおもしろくできる」の実践の一例として、言語化してみたいと思います。

 

(1)形式面

 まずは、基本・オーソドックスな型を考えて、そこから、何を変えたらもっとおもしろくなるかを考えました。プレゼンと言えば、作成したスライドを画面共有しながら行うのがオーソドックスな方法だと思ったので、その逆をいって「スライドを作らない!」「画面共有をしない!」ことにしました!そこから、画用紙に絵を手書きしてめくっていく紙芝居方式(フリップ方式)にたどり着きました。そして、2人で出るからには掛け合いが良いなと思い、その極地に当たるのが漫才だったのです(笑)

(2)内容面

 私は、漫才を作るのは初めてだったので、見よう見まねでやってみるしかありません。まずは、YouTubeで漫才の動画を観まくりました。面白い場面を見つけては、面白かった要素を抽出していきました。

 最高だったのは、ナイツの「寿限無」というネタでした。長めのネタなのですが、前半の壮大な振りと後半の衝撃的な伏線回収には、しびれました!他にも面白いネタはたくさんあったのですが、面白いと思った場面で共通していたのは、「振りと伏線回収の流れ」という構造でした。そして、この構造は、自分の漫才中に絶対に取り入れたいと思いました。

  また、聴いてくれている方にとって分かりやすいボケを心がけました。

 例えば、我々を映してくれるカメラとは違う方向を私が見て立っていて、漫才の開始と同時に見るカメラを間違えていたことに気づいて慌てて向きを正すというボケを冒頭に入れてみたのですが、中途半端に向きが違うだけだと、本当に向きを間違えたと思ってしまう人も出てしまう可能性があると思い、ちょっとオーバーに、カメラに背を向けて正反対の向きからスタートすることにしたりしました(笑)


 そうして、紆余曲折を経て、なんとか完成したのが、「ペパボ・クリエイターズネットワーク合同成人式」というネタです。

  漫才の冒頭で、「そこは、ブロックチェーンでしょうがーーー!」という、いかにも使い道のなさそうなツッコミをすることが私の夢だと、大きく振っておいて(相方のマネージャーにも「それどこで使うんですか」と言っていただくことで、使い道のなさを強調しておき)、感謝を人から人へ伝えていくという文脈の中で「感謝をブロックに詰めて鎖でつないでいくイメージですね!」に対して敢えて「感謝の連鎖ですね」と別方向に(普通に)応じつつの、「そこは、ブロックチェーンでしょうがーーー!」で伏線を回収するという流れにしてみました。

 また、ネタの題名を「ペパボ・クリエイターズネットワーク合同成人式」にしたのは、今年のP-1のテーマが創立20周年イベントの企画のプレゼンで、20歳と言えば「成人式」だと思ったからです。しかし、実は、2021年4月1日の民法改正で、成人年齢は18歳へと引き下げになっています。そのため、「20周年イベントと言えば、成人式ですね!」と振り、これに「民法の成人年齢18歳ですけどね!」と「法務っぽい突っ込み」をしてからの、「小さいことはワカチコでお願いします!」と「(法務なのに)法務っぽくないボケ」をするという流れもあったのですが、制限時間との関係で泣く泣くカットしました(笑)

 マネージャーは、漫才の締めとなる「もうええわ」の言い方を、YouTubeで和牛のもうええわ集を繰り返し観ながら探求していました(笑)

 

3 P-1グランプリに出場してみて感じたこと、学んだこと

   ①伝えたいことを伝えることの難しさ(シンプルって意外と難しいということ)。

 「これも言いたい、あれもいれたい」となったときに、台本にどれを入れてどれを削除するかの、選択の難しさ。この経験は仕事の優先度(何をやらないか)の判定にも活かせるのではないかと感じました。(この文章も、選択しきれず長くなってしまっていて、まだまだ修行が足りないことは自覚しています(汗))

  ②まず行動してみることの大切さ。

 最初、どういう構成にしようかとかうんうんうなりながら色々考えていたのですが、遅々として台本作りが進みませんでした。そこで思い切って台本を書いてみると、法務を管掌する取締役や法務のメンバーに複数回にわたり見ていただいて意見をもらう中でどんどん内容がブラッシュアップされていきました。

 完璧を最初から求めるのではなくまずDoしてみる!ダメダメでもまず批判・議論の対象(プロトタイプ)を作ってしまった方がその後が早いことを体感しました!後日談ですが、「PDCA じゃなくって DDCPA の方がいいんじゃないかと思っている。PPPP しているときは要注意。」という副社長のツイートを読んで激しく同意しました!


 ③インプットする時にアウトプットを意識することの大切さ。

 アウトプットすることを意識して(自分ならどうするかを考えながら)漫才を観ると、インプットの質が変わり、今までは聞き流していたボケも、深く考えられていることに気づけました。よりアウトプットを意識して本や法律のガイドラインを読もうと思いました!

4 最後に

 みなさんも、P-1やM-1に出場したり、どんどんアウトプットをして行きしましょう!そして日々の生活の中で「もっとおもしろくできる」を体現・実践していきましょう!!

(コラム担当:S.K)

 

 

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2022-11-09 21:37:00

【体感!】電子署名制度を導入せよ!

 インテグリティ・レターの制作部門(法務)が「インテグリティ・レター」ファンにお届けするコラム。  

さて、今回は、制作部門スタッフが業界に先駆けていち早く導入した電子署名制度についてご紹介します。

 5千年以上前に起源をもつとされる印鑑の世界に、時を超えてインテグリティの世界が動き出す!

 

【法務担当者のコラム④】電子署名制度を社内に導入した話

◆プロローグ ~きっかけは、リモートワーク~  

当社では、リモートワークを開始し、社内のネットワークインフラは整っていたものの、捺印業務はいわゆる「紙の捺印」が多くありました。取引先との契約書、経理関係書類及び労務関係書類など、対外的に書類への捺印は、出社が必須となっていたのです。リモートワークの開始当初は、まずは、紙の捺印を実施する回数を減らしつつ、電子署名制度を併用していくことにしました。

 その際に使用した電子署名ツールは、GMOグロ-バルサインホールディングス株式会社が提供する「GMOサイン」です。

 最近では、不動産業法の改正に伴い、これまで宅建士による重要説明事項を対面で実施することが求められていましたが、重要事項説明書のデータ提供も可能となるなど、電子署名の活用が期待されるシーンは増えていってますよね!

 電子署名制度の導入を検討されている方、導入方法に興味がある方のために、今回は記事を書きました!

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◆ステップ1 ~社内規程整備~
 まず、社内規程の整備をしました。
 当社では、いわゆる契約印や会社印などの印鑑の種類に応じて、押印する対象文書の種類や各印影を押印する権限者を社内規程にて定めていました。ですが、電子書類対応をすること、電子署名対応をすることについてそれぞれ定めていなかったので、社内規程を見直し、改定するというアクションを行いました。

◆ステップ2 ~チーム・組織作り~
 次に、当社では、捺印業務を整えるため、捺印業務を担当する所管部署の総務と、捺印へ回ってきた契約書類等が最終版として正しいものになっているのかを確認している法務とで、一緒に捺印チームを作成し、捺印が実施された後で、ふり返りMTGを行なったりと捺印業務をよりよくするための組織作りをしました。

◆ステップ3 ~電子署名ツール選定~
 更に、利用する電子署名ツールの理解を行いました。ペパボにて利用している「GMOサイン」にはどのような機能があり、どのような運用を行うことができそうなのかを把握したり、パートナーには申請手続きとしてどこまでのことを行ってもらうか、これまでの捺印手続きとどう変化するのか、電子署名ツールの利用を社内共通の常識とさせるのに、一連の「新」捺印手続きの中に理解してもらえないことはないか、といったことの検討を行いました。これも上記の捺印チームにて調査を行い、実装するための準備など試行錯誤を行って運用を進めました。         
 実はもともと、GMOサインにおける電子署名の捺印(電子証明書による認証を得た電子捺印)の設定は既に対応済みだったのですが、いわゆる電子メール認証型の電子捺印を実際に運用として広く利用していくために、ツール理解を深めようとしました。すると、GMOサインを導入する上で不明なことや「このような機能はないのかな?」といった質問がでてきたので、GMOサインの運営チームに連絡をして、質疑の時間を設けてもらいました。質問当時は実装されていなかった機能も次々実装され、日々機能拡充が進んでいっており、快適に使えています。

◆ステップ4 ~社内への運用方法アナウンス~
 ツールを導入する際の先方への受け入れ態勢の準備も行いました。
 いきなり署名依頼メールが先方に飛んでも「これは何?」となります。また、契約書の署名同様に、多くの取引先では代表者の方が契約書の署名欄に記載されていると思います。そして、基本的に電子署名ツールは、
電子メール認証なので、署名依頼メールを受信した方が署名するということで本人性を確保しているツールが大半となっています。当社の手続きとしても、基本的には契約書の署名欄同様、代表者の方のメールアドレスを教えていただき、送らせていただいて対応をお願いしていました。なので、そのご依頼のための資料など、事業部担当者からスムーズに説明していただけるように準備もしました。

 具体的なお話として、当社では、2020年1月26日から在宅勤務体制に移行しました。そして、同年4月7日には、主要都市における緊急事態宣言が発令され、世間でも出社を制限するよう試みられることになったと思います。そして、当社の定時株主総会は3月です。実は、電子署名ツールの本格運用を試みたのは、ちょうどその時期です。決して、片手間で試みたわけではありませんが、それでも同年6月には、電子署名ツールを利用した数値結果が得られるよう申請件数の管理も実用化できました。

電子捺印比較キャプチャ.PNG

 当初は紙捺印が約95%、電子署名が約5%でしたが、同年9月には割合の逆転が生じ、紙捺印が約40%、電子署名が約60%に至りました。社内にて捺印手続きの電子化が浸透した結果です。この逆転現象は、現在まで維持され、申請件数も増加した上で、割合も紙捺印が約15%、電子署名が約85%となっています。 
 このように、お忙しい皆さんでも、少しだけやってみるか、と重い腰を上げるだけで実はスッと導入できてしまうのが、電子署名ツールだったりするわけです。是非、皆さんも思い立ったが吉日、この記事をきっかけにして電子署名化を進めてみませんか。

◆電子署名ツール導入のメリットとデメリット 
 最後に、簡単ではありますが、電子署名ツール導入のメリットをご紹介してまとめに入ろうと思います。まず、①契約書に必要となる印紙が不要になるだけではなく、管理もデータで行えるようになるので、検索も容易になります。また、②契約書の捺印までのスピードが総じて速くなるのは間違いありませんし、③書類が紛失するリスクもありません。
 

 

 電子署名ツールは、現在では数多くあるため、自社にて取り扱っていないツールによる署名依頼が飛んでくると管理をどうしたらいいか...とか他社ツールの場合、署名対応書類の内容をどうすればチェックできるかがわからないなどの自社資料サービス外の署名ツール理解が必要になる、といったデメリットも存在はしますが、紙だけで対応するより断然楽であることは既に社会的にも認知されているのではないでしょうか。

 この記事が、皆さんの電子署名ツール利用の一助となれば幸いです。
 なお、電子署名法における論点もあるので法務らしい記事も後半編として記載しようと思います! 

(コラム担当:K)

 

※本サイト上の記事は、公開時における情報をもとに作成しております。今後の法改正、経過措置期間の経過又は判例等により、記事の内容と現在の法律解釈又は運用との間に齟齬が生じる可能性もございます。ご注意ください。 

2022-10-21 05:45:00

【潜入レポ】「インテグリティ・レター」の制作スタッフの日常を紹介します!!

 インテグリティ・レターの制作業務に追われるスタッフたちは、実は、NFT(Non-Fungible Token)の活用によるクリエイターの支援、Web3 に関連する法的課題、ルールの検討等を進めるというミッションも同時に遂行しています!

 今回は、Web3 に関するトレンドのキャッチアップのため、イベントに参加した S による潜入レポートをお送りします。

 

【法務担当者のコラム③】「WEB3 Conference Tokyo 2」に行ってきた!!!

◆そもそも「Web3」とは? 

 最近、Web3(ウェブスリー)という言葉を耳にする機会が増えました。調べてみると、Web3という言葉には統一的な定義はないようです。

 ただ、発信者が限定されていてインターネットに対して読み手として関わることが主だったWeb1。その後 SNSを通して誰もが発信者としてインターネットと関わるようになると共に、SNSプラットフォーム企業が中央集権的に力を持ったWeb2。そしてこれらに対して、今まさに生まれ始めているブロックチェーン技術を中心とした既存の中央集権構造に変更を加えて分散化を推し進めようとする新たな技術革新の流れ、これをWeb3時代の到来と表現することが多いようです。

「WEB3 Conference Tokyo2」の会場の雰囲気と感じたこと

 セッションでは、専門用語が飛び交い、レベルがとても高かったのですが、Web3の雰囲気を肌で感じることができ、ワクワクしました!                                   

 まだまだWeb3について学び始めたばかりなので、セッションで自分の知っている内容に言及があると、嬉しかったです。

Web3conferenceiOS の画像.jpg

 ただ、ブロックチェーンの開発をしている人は手を挙げてくださいとスピーカーが呼びかけると、

 10名ほどの人が一斉に手を挙げるので「すごいところに来てしまったな」と感じました!笑

 若手の方もたくさんいらっしゃいました。

 Web3に関する初めてのオフラインイベントだったのですが、会場にいる人たちの熱気を感じることができ、行って良かったと思いました!!!

◆カンファレンスの内容「How to make Web3 community」

 「How to make Web3 community」では、Web3に関するコミュニティをどのように作って、どのように発展させていくかというお話がありました。3人いたスピーカーの中に、NFTアーティストで、その方の発行するNFTを持っていると入れるコミュニティを運営している方がいらっしゃいました。どのようにコミュニティを活性化させたかという質問に対して、その方が、NFT画像の二次創作を解放したことだとおっしゃっていて、なるほど!と感じました。

 後述する渡辺創太さんもおっしゃっていることですが、日本は、新しいものに対して、最初から厳しめに規制してしまう傾向があり、それが発展の妨げになってしまうことがあるように感じています。欧米のように、ある程度市場に任せて自由に競争させ、問題が生じた時に必要な規制を構築していくという方が、イノベーションや社会の発展という意味で、有益なんじゃないかなと感じているので、まさに、コミュニティで同じことが起きていてとても興味深かったです。

◆カンファレンスの内容「How to choose Blockchain」

 「How to choose Blockchain」は、自分が何らかの開発をしようとするときにどのブロックチェーンを使うかをどのような基準で選ぶかについてのセッションでした。そこで言及されていたブロックチェーンは、イーサリアム以外しらなかったので新しいことをたくさん学べました。消化しきれていないこともたくさんあったので、伸びしろしかないと感じました!

 また、本当は「日本のWeb3の未来」というセッションも聴きたかったのですが時間があわず当日は断念しました。しかし、なんと、後日当日の様子を記録した動画が公開されたので、オンラインという形で聴くことができました。

 「日本のWeb3の未来」を聴きたかった理由は、スピーカーが渡辺創太さんという青年だったからです。

 たまたま読んだ「仮想通貨とWeb3.0革命」(千野剛司著、日本経済新聞出版、2022年)という本の中で、渡辺創太さんという若者のインタビュー記事が掲載されていました。この本自体とても分かりやすくかつ難しい内容に踏み込んでいてすごい本だと感じていたのですが、今回のカンファレンスの出演者の中に、渡辺創太さんの名前を見つけたときには、もっとこの本の内容をちゃんと理解したいと思いました。

 勝手に、本でたまたま渡辺創太さんを知った数日後にカンファレンスの出演者の中に渡辺創太さんを見つけて興奮すると同時に、カラーバス効果を感じました!脳は、無意識のうちに見たいものを見ているんですね!笑

新しいことを学ぶ際の学び方

 カンファレンスで新しい知識を入れたことで、新しいことを学ぶ際のスタンスについて考えました。私は、複数種類の媒体に触れるようにするのが良いかなと感じています。

 本、インタビュー記事、動画、講演会、実際に会って話してみる等々、いろんな形で同じテーマに触れると、対象は同じでも違った角度から見ることができて、あそこで言っていたこと・書いてあったことってこういうことだったんだ!と感じる瞬間があり、それによって、理解がどんどん深まると思うからです。2冊目の本を読んだ後に1冊目の本を読み返すと、こんなことが書いてあったのか!と1回目に読んだ時になぜ気づかなかったのか驚くことが多いのも、同じ理由なんじゃないかと感じています。

 点と点が繋がって大きな点や線や面になっていくのを体感すると、さらに理解を深めようという欲求が強まる気もしています。

◆今回カンファレンスに行って思い出したこと

 私は、司法試験の勉強をしているときに、(安念潤司教授の「判例は神、学説はゴミ」という考えをベースに)実務家になるための試験なんだから学説に詳しくなっても意味ないじゃん!と考えていたと思っていたのですが、意外と、理論面の理解を深めるために、研究者の書いた論文を読んでいたことを思い出しました(新堂幸司先生の「訴訟承継論よ、さようなら」を読んだときには感動しました。論文の内容は忘れましたが!笑)。意外と理論も好きなのかも?ものの理解のためには理論面も重要だと感じていたのかも?と今更ながら自分を再発見している今日この頃です。

 そこで、これはもう完全に趣味の領域ですが、たまにはあの頃みたいなこともしてみようかなということで、2022年12月31日までに、サトシ・ナカモトの論文を読んでみたいと思います。笑

◆まとめ

 カンファレンスにオフラインで実際に行ってみて、色々なことを思い出したり考えたりすることができました!とても良い機会になりました!

 これからも未知の領域に関する活動をどんどん増やし、イベント等にももっともっと参加していきたいと思います!!!

(コラム担当:S)

 

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