Q.退職金について

Q.退職金について
 私は、23歳のときに弟と共に会社を立ち上げ、苦節45年、身を粉にして働いてきました。
 先日、息子たちに会社を継がせようと思い、退職金5000万円を受領しましたが、当社の株の3割を所有する弟から、その退職金が不当に高いから返せなどと言われています。
 どうすればよいでしょうか。
 ちなみに私は会社の発行済株式の7割を有しております。

 

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A.まず、退職金受領に際して、株主総会決議を経ていない場合は、今からでも株主総会決議をするべきです。
 ただし、株主総会決議であなたが7割の支配割合をもって、退職金支給決議を可決すれば、事はすべて無事終了するわけではありません。
 この場合、あなたは、会社法の規定する特別利害関係人に該当します。
 会社法上、あなたは、あなた自身に対する退職金支給決議に当然に参加できないというわけではないのですが、あなたが当該退職金支給決議において議決権を行使した結果、著しく不当な決議がなされた、と認定された場合、当該株主総会決議が取り消されることになります。
 この「著しく不当」かどうかというのは、会社の規模や利益状況等諸般の事情が考慮され、最後は担当裁判官の価値判断に委ねられるのですが、税理士の先生が一般に参照にされる功績倍率というのを参考にする裁判例があります。
 この功績倍率というのは、最終役位や勤続年数、役員報酬額をもとに、税法上不当に高額な退職金として否認されないかどうか判断する基準です。
 もっとも、支給された退職金が、税法上の否認対象かという問題と、会社法上の「著しく不当」に高額であったかという問題は、当然ですがイコールではないので、過去の裁判例をもとに、あなたが受領した退職金が、あなたの会社に対する貢献度からして、いかに全うかということを主張してゆく必要があります。
 弟さんは、おそらく、株主総会決議取消訴訟や同不存在確認決議訴訟を提起してくるでしょうから、今のうちに、弁護士と協働してあなたに有利な事実・証拠を収集しておく必要のある事案と思われます。