Q3.相続と会社支配権

Q3.相続と会社支配権
 私は長男で会社の専務をしており、父が代表取締役でした。
 このたび父が急死し、父の有していた当社の株式700株を私と母と、唯一の兄弟である弟で分け合うことになりました。
 ちなみに発行済株式総数は1000株です。
 ところが、株の相続割合をめぐり母と私の妻が喧嘩をし出し、母は父の有していた株700株を、全て弟に譲るなどと言い出してきました。
 そのようなことはできるのでしょうか。
 また私の所有している株式は300株なのですが、仮に弟が会社の代表者になると言い出してきた場合、私の地位はどうなるのでしょうか?

 

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A3.まず、最初の質問ですが、会社の株も立派な遺産ですので、遺産分割協議の対象となります(なお、最高裁平成26年2月25日の判例は金銭債権のように当然分割の対象となることを否定しました)。
 遺産分割協議が整わない場合、まず遺産分割の調停を申し立て、それでも解決しなければ、審判や共有物分割訴訟が提起されることになります。
 よってあなたは少なくともお母様の言いなりになって、遺産分割協議書にサインをする必要は全くありません。
 次に2番目の質問ですが、法定相続分に従うと、あなたの株式の相続分は700株×2分の1(配偶者半分・子供半分)×2分の1(子供が2人なので)ですから175株となり、これとあなたのもともと有していた株式300株を併せても過半数に至らないことになります。
 そうすると、最悪遺産分割協議がもつれて、あなたが法定相続分しか株式を取得できず、かつ、お母様と弟様が、あなたに敵対した場合は、弟陣営に会社経営の主導権を握られてしまう可能性があります。
 そうならないためにあなたとしては、遺産分割手続で、これまでの会社に対するあなた自身の実績を強調して寄与分を主張するか、共有物分割訴訟で、対価を用意して株式の多くをあなたに帰属することを求める等の手立てを用いて、過半数の持分を死守すべきです。
 なお、相続人に対する株式の売渡請求については項を改めます。