Q2.増資と代表取締役の地位

Q2.増資と代表取締役の地位
 私は、代表取締役であり、かつ当社の発行済株式総数の7割の700株を有しているので、今まで何不自由なく会社を経営していたのですが、このたび突然、経理を担当していた弟(当社株300株を所有)から、取締役の解任を突き付けられました。
 よく調べると、弟と結託した当社の顧問税理士が、当社の発行済株式総数を2倍の2000株にしていたようです。
 実際には株主総会で新株発行を決議したことはありませんが、新株を発行したとされる直後に1000万円の入金があり、その10日後に998万円が事業資金として出金されていました。
 私はどうやって弟と戦えばよいのでしょうか。

 

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A2.まず、前提知識として会社法では、定款で株式譲渡について制限を課している小規模閉鎖会社(我が国の中小企業のほとんどはこれに該当します。)においては、新株発行に際しても、株主総会の特別決議を要するとされています。
 そこで、株主総会の特別決議を経ないでなされた新株発行が有効かどうかが問題となるのですが、この点について平成6年7月14日の最高裁判例は、たとえ小規模閉鎖会社であっても、個別的事情を考慮せずに、株主総会決議という内部処理を経ていない新株発行を有効としました。
 しかし、この判例は会社法制定以前のものであることから、現時点でも最高裁が同じ判断を示すかは微妙です。
 また、この事案では、払込金1000万円のほとんどが10日後に事業資金として引き出されていることから、そもそも見せ金ではないか、払込の実態がないのではないか、という別の疑問点も浮上してきます。
 見せ金かどうかは、会社資金としての運用実績や、運用期間等を総合的に考慮されることになります。
 したがって、裁判となった場合、そもそも新株発行の実態としての払込がないから、新株発行自体が不存在である、という新株発行不存在確認の訴えと、仮に新株発行手続自体が有効であったとしても(見せ金と認定されなかったとしても)、小規模閉鎖会社において株主総会の特別決議を経ていない新株発行の効力は無効であると予備的に主張することになると思われます。