第20回 尿失禁について
先日、クリニックがある堺市の医師会により“頻尿と尿失禁”をテーマにした市民公開講座が開催され、私はコメンテーターという役割で
参加させていただきました。
実際に、頻尿や尿失禁で悩んでおられる方や家族の介護をされている方が参加され、2人の先生による講演のあと質問コーナーでは、
様々な質問と回答が行われ、実際に困っておられる方はこんなにもおられるのだと改めて実感させられました。
さて女性の尿失禁はどのようなものなのでしょう。男性には男性の、女性には女性の体の違いからくる尿失禁の原因があります。
尿失禁には大きく分けて切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁があり、
1)切迫性尿失禁は、突然襲われる強い尿意が原因でトイレに行こうとしても間に合わなかったり、
あっと思ったときにはもう尿が漏れてしまう失禁で、この原因は様々ですが男性でも女性でも起こりえます。
それに対し、
2)腹圧性尿失禁は、女性特有の尿失禁で出産を経験した約半数の方が経験したことのあり、大笑いしたときや咳をしたとき、
あるいは坂道を下るときなどお腹に強い力が加わったとき尿が思わず漏れてしまうものです。
女性の尿は膀胱にたまるとき、外尿道括約筋とそれにつながる骨盤を支える骨盤底筋群で止められています。
出産のため骨盤底筋群が傷ついたり、緩んだりすることがあり、更に加齢により筋肉が弱くなったりすると尿道に支えがなくなって
腹圧がかかると動きやすくなり尿が漏れるといわれています。
<骨盤底筋が働いていないとき>
<骨盤底筋が働いたとき>
これに対する治療としては、理学療法である骨盤体操、薬物療法、そして手術です。
骨盤体操は、肛門の括約筋や膣を閉める運動を繰り返ししてもらいます。5秒から10秒ゆっくりと括約筋を締める運動を20回、
またすばやく締めたり緩めたりする運動を20回、これを1セットとして1日4セットいろいろな姿勢
(寝てしたり、立ってしたり、座ってしたり、四つんばでしたり)でしていただくと必ず1~2ヶ月でかなりの方が改善してきます。
これでまだ不十分な方は、括約筋を閉める薬や膀胱の壁を緩めて尿がたまりやすくする薬を内服していただきます。
これらのことを行っても十分な効果が出ない方には手術をお勧めします。
手術は、2泊3日の入院でしている施設が多いようですが、尿道に特殊なテープを掛けるもので、局所麻酔または腰椎麻酔で約1時間程度の手術です。
有効率は5年間で85%以上と安全で有効率の高い手術です。
尿失禁については、歳を取るとみんなそうなるからとか、お下のことは恥ずかしくて誰にも言えないと泌尿器科を受診することを
ためらっている方がたくさんおられます。(統計上も10人に1~2人くらいの方しか受診されていないそうです。)
我々泌尿器科医は、尿の悩みについては色々な治療方法を提示できると考えています。
悩まれている方は、少しでも早く受診されることをお勧めします。