第15回 血液検査について3(高脂血症)

今回も血液検査結果の項目の説明をしたいと思います。

TG : 中性脂肪といいます。 3 つの脂肪酸がグリセロールにくっついたもので、人間が生活するためのエネルギー源として働いています。脂肪を含んだ食事をすると小腸で消化吸収されます。ばらばらの TG がそこでアポ蛋白と呼ばれるたんぱく質と結合してカイロミクロンと呼ばれる大きな塊となって血液中に流れていきます。ですから食後は必ず TG は上昇します。血液中を流れるカイロミクロンは、これも血液中に存在するリポ蛋白リパーゼと呼ばれる酵素によって分解され小さくなり皮下脂肪や肝臓に取り込まれ貯蔵されます。

中性脂肪が高値となるとき、考えられる疾患は最初の段階のアポ蛋白の異常がある場合  ( 遺伝病の一種でかなり稀です。 )  や、アポ蛋白リパーゼの異常でカイロミクロンが小さくなれず肝臓に取り込まれないために起こる ( これも稀です。 )  ことがあります。
しかし、通常の場合アルコールの取りすぎ、摂取カロリーオーバー、炭水化物あるいは脂肪分の取りすぎ、糖尿病のある方の場合血糖コントロール不良が考えられます。まずは、カロリー制限、飲酒制限、脂肪食制限で速やかに低下することが多いです。

T-Chol : 総コレステロールといいます。コレステロールには、血管にたまったコレステロールを肝臓まで運んでくれる善玉コレステロール (HDL) と動脈硬化の原因になる悪玉コレステロール( LDL )があります。食事由来のコレステロールはわずか 20 %で、ほとんどのコレステロールは肝臓で合成されています。コレステロールを多く含む卵やイカを控えてください、というのは食べすぎに気をつけてください、という意味で最近 1 日 1 個の卵を食べてもコレステロールは上昇しないというデータが出るくらいです。悪者のように言われるコレステロールですが、体の中では重要な役割を担っています。ホルモンを合成する成分になったり、細胞の骨格を形成する役割を担ったり胆汁酸として食物の消化に役立ったり、確かに高すぎるコレステロールは動脈硬化の原因になり心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことは知られていますが、少なすぎることも問題で癌の発生が高くなるという報告もあります。

コレステロール値が高くなる原因は、基本的に食事性のコレステロール摂取過剰か肝臓での合成の亢進です。腸におけるコレステロールの吸収を防ぐため繊維質の野菜を多く摂取するとよく、オリーブ油などに多く含まれるオレイン酸、青魚に含まれる EPA などが善玉コレステロールを増やすといわれています。また、過食は、コレステロールの原料を増やしますのでよくありません。息を弾ませる程度の歩行でも善玉コレステロールは増えますので、ウォーキングはお勧めです。 

糖尿病、高血圧と並んで高脂血症は、メタボリックシンドロームを引き起こす原因となります。動脈硬化が起こってから悔やむより早めに生活習慣の改善で正常化したいものです。