第13回 血液検査結果について(肝機能)

今回は、私どものクリニックに通われる患者さんからのリクエストで血液検査結果について少し説明したいと思います。皆さんは、いろんな医療機関で血液検査を受けられた後、検査結果の説明を受けられていると思います。その場では、説明されてわかった気になっても時間がたてば、検査結果に書いてあるアルファベットの意味やその値が意味することがわからなくなったという方は多いと思います。今回は、肝機能について述べたいと思います。 

AST ( GOT ) :アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼといいます。これは、人が生命活動する上で必要な酵素と呼ばれるたんぱく質のひとつなのですが、肝臓、腎臓、筋肉、心筋の細胞内にたくさん含まれていて、これらの細胞がつぶれる状態、たとえば肝炎、肝臓癌、心筋梗塞などで数値が上がります。勿論、筋肉にも多く含まれるため激しい運動や多発性筋炎と呼ばれるような筋肉の病気でも上昇します。
ALT ( GPT ) :アラニンアミノトランスフェラーゼといいます。 AST と同じで生命活動には必要な酵素と呼ばれるたんぱく質の一種です。 AST に比べ、肝臓に特異的に存在するため値の上昇は肝臓の障害を強く示唆します。
LDH :乳酸脱水素酵素といいます。これも酵素の一種で、体内のあらゆる組織の細胞内に存在し、その細胞がつぶれることで血液中の値が上昇します。 LDH が高いからといって診断的意義は高くありませんが、急性、慢性を問わず肝炎のときは高くなりますし、心筋梗塞や悪性腫瘍の際も上昇します。肝疾患で見る場合、必ず AST,ALT とセットにしてみる必要があります。
ALP :アルカリフォスファターゼといいます。これも酵素の一種で、肝臓疾患で上昇しますが、特に胆汁の流れが悪くなると上昇する性格があります。骨にもよく含まれており、骨折、関節炎など骨疾患で上昇します。成長期のお子さんではかなり高くなり、腰痛持ちのお年寄りも少し高い値を示すことが多いです。
γ GTP :ガンマグルタルトランスペプチターゼといいます。これも酵素の一種ですが、胆汁の流れが悪くなると上昇するほか、アルコールの多飲、脂肪肝等でも上昇します。私どものクリニックでもアルコールよく飲むのでγ GTP が心配でといわれる方はよくおられます。
総ビリルビン  (T-Bil) :ビリルビンには肝臓である変化を受けて排泄される直接型ビリルビンと変化を受けずに排泄される間接型ビリルビンがあります。通常測定するのは、直接方と間接型を足したもので一般的には黄疸があるなしと表現されると思います。胆汁の流れが滞ると体内にビリルビンが蓄積し体が黄色くなりますが、その際には黄疸がでたと言われるのはご存知の通りです。空腹時には多少高く出る場合があります。 

このほか肝機能を調べて評価する項目はたくさんありますが、一般的にスクリーニングするのはこのくらいだと思います。私どもは、ひとつの数字の高い、低いをみるのではなく、いろいろな病気を想定しながら、項目の組み合わせで異常の理由を考え、わかりやすく皆さんに説明していこうと考えています。