第6回 排尿時痛(膀胱炎)

今回は、尿路感染症であり女性に多い膀胱炎を考えてみます。患者様が言われる症状は、おしっこが近い、おしっこの終わりに痛くなる、下腹部に気持ち悪い感じが出るなどです。膀胱炎は、書いて字の如く膀胱に炎症が生じる状態で、一番多いのは、たまたま外から細菌(一番多いのは大腸菌です。)が入ってきて膀胱内に感染を起こしてしまった単純性膀胱炎です。特に女性の場合は尿道が短いため常に細菌が膀胱内に入ってきていると考えてください。排尿するという行為は、尿で細菌を外に洗い流しているということなのです。ですから水分を制限して尿の回数を減らしたり、尿を我慢したりすることは膀胱炎の原因になります。また性行為もよく膀胱炎を起こすきっかけとなります。性行為後によく膀胱炎を起こされる方は、行為後に排尿をして寝るようにしてください。また、冷えや疲れなどで免疫状態が低下してしまうと普段は排除できる細菌が感染して膀胱炎となってしまうことがあるので注意が必要です。治療は、細菌に感受性のある(効果のある)抗生物質の内服と水分をしっかり取って排尿量を増やすことです。通常 2-3 日で症状はよくなりますが、“直った”と自己判断せず指示された量の抗生剤を内服することが大切です。細菌量が減少すると一見よくなったように見えますが、放置すると細菌がまた増殖し症状が悪化することがあるからです。中途半端な治療を繰り返すと抗生剤に抵抗する細菌を生み出し治療に抵抗する感染症になってしまうことがあります。

膀胱炎を頻繁に繰り返される方の中には、原因がある方がおられます。男性の場合、前立腺肥大症、神経因性膀胱などおしっこが出にくい状態が起き、排尿してもおしっこが膀胱内に残る“残尿”がある場合、膀胱内に細菌感染を生じることがあります。流れがよどむところには細菌感染が起こりやすいのです。この場合、膀胱炎の治療と原因疾患の治療が必要になってきます。(前立腺肥大症、神経因性膀胱については日を改めて詳説したいと思います。)

細菌感染はないのに検尿を行うといつも尿が汚れている方がおられます。症状はないかあっても非常に軽いものです。原因を調べても治さねばならないようなものはなく、抗生剤も有効ではありません。この場合私どもでは漢方薬を使って症状の改善を行います。勿論症状のない場合、経過観察のみで投薬は必要ありません。

特殊な膀胱炎として間質性膀胱炎というものがあります。細菌感染ではなく、膀胱粘膜下の間質と呼ばれるところに炎症を生じた膀胱炎で排尿時痛、頻尿などが強く一種のアレルギー性疾患と考えられています。悪化すると萎縮膀胱といって膀胱自体が尿を溜める能力を失ってしまうこともあります。

治療はなかなか難しいですが、投薬治療や薬物の膀胱内注入治療などが中心で、ひどい場合には麻酔下で膀胱内を水圧で無理やり広げたり、腸を使って膀胱を拡大したりする方法がとられることもあります。