第2回 頻尿の原因

今回は、頻尿をきたす病気を少しずつ解説していきたいと思います。

以前私の外来に、尿の回数が多いです、と受診された方がおられました。いろいろ検査をしても特に異常を認めなかったため、排尿チャートをつけていただきました。これは、一日の飲水量と排尿量を記録してもらうものですが、驚くほど水分を摂取されておられ、そのせいで排尿量も多いという結果でした。よくお話をお聞きすると内科の先生から血液がさらさらになるようにといって水分摂取を指導されておられたのです。お医者さんの指導を守られる良い患者様でしたが、結果的に多飲多尿が原因の頻尿で水分摂取を少し控えていただくことで頻尿は改善しました。同じ多飲多尿による頻尿でも糖尿病が隠れている場合がありますので一律な扱いはできません。この場合にはしっかりと糖尿病をコントロールする必要があります。

最近特にクローズアップされてきた病気としては、過活動膀胱というものがあります。定義は、1日の排尿回数が8回以上でそのうち週に1回以上は切迫感を伴うというものです。もちろん、このような症状を持つ方すべてに治療が必要なわけではありませんが、日常生活が妨げられるような頻尿には投薬などの治療が必要になります。脳梗塞をわずらった患者様で退院後から急に一日10回以上の頻尿になり排尿に間に合わなくなって下着を汚してしまうと訴えられる方がおられました。また、女性で水仕事をしたり水の音を聞いただけでおしっこを催しそれが気になって家から出られなくなった患者様もおられました。この方々は、抗コリン剤と呼ばれるお薬で症状が改善され普通の日常生活を送ることができるようになりました。

60歳以上の男性の方の頻尿 (特に夜間の頻尿) は、前立腺肥大を疑います。前立腺は膀胱のすぐ下にある若い頃はくるみ大の臓器で本来は精液を作る仕事をしています。前立腺は加齢により徐々に大きくなって、大きくなる人は夏みかんくらいの大きさになることもあります。ちょうど真ん中を尿道が貫いているため前立腺が大きくなることで尿道が圧迫され尿の勢いが落ちたり排尿しようと思ってもすぐにおしっこが出なくなったりします。また、下から膀胱を押し上げるため膀胱が刺激され頻尿や残尿感という症状が出てきます。これらの症状にはアルファブロッカーと呼ばれるお薬が非常に良く効きます。
また、糖尿病をお持ちの方、骨盤(子宮や直腸)の手術をされた方は特に膀胱の周りの神経がダメージを受けており、そのために正常に膀胱を収縮できない場合があります。その結果、膀胱内に尿が残ってしまい(残尿といいます)、常に尿意を感じ頻尿になってしまう場合があります。この場合、残尿を減らすことが最優先で薬の内服や自己導尿といってご自分で細い管を使って尿を採って頂くという方法をとります。

尿管結石が膀胱に落ちる寸前、つまり膀胱の壁にかかったとき、やはり頻尿の症状が出ることがあります。但しこの場合、その前から腹痛、腰痛や血尿を伴っていることが多く容易に診断ができ痛み止めなどで対処できます。

膀胱炎でもやはり頻尿を強く訴えられることがあります。この場合、排尿時痛や残尿感も伴いますし、検尿検査で膿尿も認められます。 通常は血尿が症状のことが多いのですが、まれに膀胱癌で頻尿の症状が最初に出る場合があります。しかしおしっこをよく調べるとわずかに血液が混じっていたり、悪性細胞が尿中に検出されたりします。
前立腺癌でも頻尿を症状とし受診される方がおられます。直腸診やPSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる血液検査で発見されます。

以上良性疾患から悪性疾患まで頻尿を起こす病気は様々でおかしいなと思ったら、ためらわず泌尿器科で一度調べてもらうことが一番の近道です。