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なまやさしい気持ちではなかった。

私についてくるがいい。

如何ほどの覚悟で

言い切ったのだろう。

決然と あなたは。

オルレアンの少女の言葉は

フランス軍兵士を 奮いたたせた。

白い鎧兜に身を固め

馬上の人となった その雄姿。

十字を切り 剣を突き上げ

先陣をきる その姿は まるで

ドラクロアの「民衆を率いる自由の女神」のよう。

いつ果てるともしれない 英仏間の百年戦争。

 

ノルマンディのホワイトクリフ。

うち寄せるドーバーの波

ノルマンディ公ウィリアムが

William the Conqueror

征服王になるべく ドーバーを渡った 

その海峡を  イギリス軍は侵攻してきた。

 

どんな風が吹いただろう。

シャルル七世の戴冠式のその日。

ランス大聖堂で 敬虔な感謝の祈りをささげたであろうジャンヌ。

連戦の 陽ざしにさらされた、

兜の下にのぞく頬は赤く焼け、

そばかすが浮きでていたかもしれないね。

どんなに誇らしかったことか。

 

けれども。 捕らわれたあなた。

 

甲冑をはぎとられ、

乱暴に 引き裂かれた肩先。

象牙の様になめらかな 

白百合のように輝く、

白い肩肌に赤い血が流れていく。

リネンの衣に滲んでいく。

scarlet colour!

(時は違えど)

こだまする ラ・マルセイエーズ

私の耳に リフレイン。 リフレイン。

かすかに響いてくるのです。

 

ノルマンディのホワイトクリフ。

果てなく続く 広大なフラックスの畑。

七年に一日しか咲かないという、

その可憐な青い小さな花も

歴史の怒涛を見つめてきたのですね。

 

Oh、ジャンヌ。 ジャンヌ。

あなたの祈りは 聞きとどけられ、

愛する国土は守られた・・・

けれど、

 

晴れた日には

澄んだ光の中で優しく風に揺れ、

湿った雨の日は

涙のようなきらめく雨粒をのせながら 

凛として咲くその姿は

Romanという名の哀しみを

ひっそりと伝えているようです。

 

<寄稿者:Shizuko>