◆(雑記)太陽と月の珈琲のこと2。

3.さらば。愛しき『コク』よ。(幽玄なる味覚の珈琲の意味) 2009.4.28.


3.さらば。愛しき『コク』よ。(幽玄なる味覚の珈琲の意味とそこに至るようになった端緒) 2009.4.28.

(この文章は2009年4月28日に書かれました。)


間もなく、現在の場所で営業して2年ほどになります。

その、半年ほど前から珈琲豆の販売を始め、
その3年半ほど前から業務用の焙煎機で焙煎を始めていましたので焙煎歴は6年になります。

珈琲はさらに遡って、高校生のころの喫茶店ブームのころからストレート珈琲を飲み始めていますから、28年くらいの付き合い…、
いえ、小学生のときに家のアルコールランプのサイフォンで淹れる担当だったので、
最初の抽出の抽出作業からだと35年以上前からやっていたわけです。
面倒くささに負けてインスタント珈琲を飲んでいた時期もありましたが、
結局、今のようにきちんとした珈琲を飲むようになったのは、ずっと東京で暮らしていたからだと思います。

最初は中野でしたが、方南町から中野坂上に引越し、
さらに西荻窪と新高円寺にながく住んでいました。

西荻窪は本当に気の好い街で水が合いました。
街の雰囲気はもちろん、お店も大好きで。

居酒屋さんも焼き鳥の戎も九州ラーメンひごもんずもゆうゆう満月洞もお気にいりで…
徒歩で吉祥寺や荻窪にも行けたので、当然、くぐつ草で読書したり、
東急の裏の方にはこ洒落た飲食店がたくさんあってあちこち散策して飽きませんでした。

そこで暮らすようになったころからです。

とんかつを食べるときは目黒の本家「とんき」さんか高円寺の「とんき」さん。
ラーメンは大阪の「かむくら」さん、中野「青葉」さん、大久保の「竈」さん、

新宿の「麺や武蔵」さん。
うなぎは名古屋の「いば昇」さん、熱田神宮の「蓬莱」さん。

台湾料理は大久保か渋谷の「麗郷」さん
坦々麺は銀座「支那麺はしご」さん

うどんは心斎橋の「つるとんたん」さん。六本木にも夏木マリさんがお店お出しになりました。

好きな食べ物のお店はきりがありません。
どんなジャンルの食べ物にもこだわりのおいしいお店があって、どうせ食べるならそういうお店に行くのが当たり前でした。

まだ、カフェブームの走りで、ゴハンを食べられるカフェが無かった頃、
昨年他界された市川準監督の「つぐみ」でもロケに使われた四丁目カフェには稽古の後に
「四丁目丼」を食べに行って夜更けまで飲んでいました。

そして珈琲を飲むときは、
中野の「くらしっく」さん、吉祥寺の「もか」さん、阿佐ヶ谷の「カフェドゥワゾー」さん、
吉祥寺「くぐつ草」さん…

西荻の部屋が青梅街道に近かったので、運よくすぐ近くにコクテール堂の販売店がありました。
エイジングのコーヒーを買いにいきました。

それから銀座はプランタンの並びにあった「十一房珈琲」さん。
青山劇場の近くの「大坊珈琲」さん…

珈琲屋さんやカフェはまだまだ本当にあちこちよくいきました。

カフェが、人と人が接して、自分の生きるスタイルを見つけたり、
物事を思索したりする場所で、
単純に食事をする、おしゃべりをするだけの場所ではなく、
人生で現れるいろいろな階層の問題や芸術に関すること仕事に関することのある種の回答を求めたり、
その空気の中で癒されたりするために必要だった時代のことです。

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告白しますが、茨城にきてから何故だろうと思うことがあります。

味が強いのに、決してそこにある要素が? 
という自家焙煎のコーヒーが多いような気がするのです。
自分はお店の提供方法はフレンチプレスですし、ドリップも濃い目が好きなので、
濃く淹れても後味がいやらしく残らないものが好みで、
味の要素にエグミや強い酸・苦味が残るものは苦手です。

とにかく思いっきり濃く抽出してもエグミが出ない味を目指しています。

それはやはり焙煎に工夫と時間がかかります。

コクや旨味や酸味を残したり強く出すのは、皆がやっています。
酸味を生かす焙煎がいま流行っているのも知っています。

でも、珈琲マニアや若いロースターさんに物足りないと思われても、いいのではないかと思うようになりました。

自店のフライヤーには「幽玄なる味覚の珈琲」と謳っています。

それなのに、最近浮気して、ちょっとコクと甘味に走っていました。

軌道修正します。

幽玄なる味覚の珈琲? 罵詈雑言が聞こえてきそうですが、

それは、
とにかくすっきりしていて、
嫌な後味が皆無の、
焙煎で強力にカラメル化させていない(そんなことは調節できないと言われそうですが)、
雑味や酸味がおさえられた、
ひょっとするとガブガブ飲める、
クセのない上品な、
綺麗な味のするコーヒーです。
多分、
マニアのかたには物足りない味です。
でも、コクや甘味や旨味は、誰もが追っています。
自分のお店でなくても構わないと気づきました。

そんなコーヒーを焙煎するためには、
単純に、
火力を調節したり、火力を上げる時間帯を変えたり、排気風量をどのくらいにして、
どのタイミングでダンパーを開いて、全体で何分で何度で煎り上げるか?
ということだけではないのです。

ロースト度合い。ロースト度合いとは別に酸味の強弱。
酸味の強弱とは別に珈琲の液体の味の強弱。

これらのコントロールが出来なければ、
電子レンジで時間でチンできるようなオートマチックな焙煎になってしまいます。
複雑な味のコントロールが出来なければ、自家焙煎をやっている意味は薄らいでしまいます。

コントロールする自信と選択肢のなかから、コクを重視しない味を酸を重視しない味を、つくることにしました。

とにかくすっきりしていて、
嫌な後味が皆無の、
雑味や酸味がおさえられた、
クセのない上品な、綺麗な味のするコーヒー。

酸味マニアのかたには物足りない味です。
でも、コクや甘味や旨味は、誰もが追っています。

天邪鬼で構わないと思っています。
天邪鬼の焙煎した珈琲豆です。

「さらば、愛しきコクと甘味と旨味よ。」

飄々とした、すっきり綺麗な味のコーヒー。

季節が良くなっていって、頬を撫でる風のような、
すっきりとしたコーヒーがここにあります。