「景色はどこも灰色で、人まで灰色に見えた」 夫は兵役に取られ、家は跡形もなく焼かれ、仕事も取り上げられて、病み上がりの幼い娘を抱えている自分。これからどうやって生きていけばいいのか。「何もかもなくしてなくしてしまったのだ」と思うと、体全体を空虚さが包んだ。 | |
「光一郎さんという人は 幸せな人でした」
二人はときにぶつかり合ったが、価値観が一緒だった。お金や権力に縛られることを嫌い、心が豊かになることを何よりも愛した。生きるうえでの芸術の重要性を理解し、心の渇きを潤してくれるのは芸術しかないことを身を持って知っていた。